AIを活用した生産性向上とは?
それでは、AIを活用した生産性向上についてご説明します。

冒頭の第一講座で四象限の図が出ていたかと思いますが、その中の上部分、例えば社会保険労務士の業務における給与計算など、特に業務で使う内容をテーマにお伝えします。

これらの業務は、売上に直結する一方で、資格者や経験者でなければ対応できない業務です。また、情報収集や毎年の法改正、国からの資料の変更などにより、書類の読み込みにも時間がかかります。
そのため、生産性が低下してしまう場合があります。
さらに、顧問先へのサービス提供のために、顧問契約に含まれていないサービスであっても、質問があれば回答を出すために、特に従業員の方などは、顧問先のためにできる限りの対応をしようと努力します。しかし、一方で、このような対応に多くの時間を割くことで、他の業務に注力できないという課題も存在します。
このような課題に対して、AIを適切に活用することで、まず品質を安定させることができます。誰が対応しても一定水準の品質を保ちながら、効率性を高めることができるのです。

AIを活用することで、AIがすべてを置き換えるのではなく、AIを活用して時間を創出します。
その時間を活用して、より付加価値の高い業務や、価格の高いサービス領域を広げていくことで、最終的に生産性を向上させることができます。さらに、競合との差別化にもつながります。
とはいえ、「どのような業務で活用すればいいのか」「どのように活用すればいいのか」という疑問があるかと思いますので、この後、各業種や業界別に具体的な活用事例をご紹介します。
士業事務所における生産性向上事例
では早速、士業事務所におけるAIを活用した生産性向上事例として、多くの先生方がよくお使いになられる議事録作成、また、もうすでにAIをご活用されていると耳にする関数・マクロ作成で、AIを活用する方法をお伝えします。

議事録作成は、特にBtoC、企業以外の顧客の場合に作成することが多く、申請書類の作成や、障害年金、相続に関する面談などでお使いかと思います。
議事録作成における一般的な課題として、作成者によって記録の正確性に差が生じることが挙げられます。特に入社1ヶ月目などの新入社員の場合、重要なポイントを適切に判断できず、必須の情報が欠落してしまうことがあります。
会議終了後、時間が経過すると記憶が薄れ、1時間の会議内容の大半を失念してしまう傾向にあります。そのため、当日中に議事録作成が必要となり、会議後の残業時間を1〜2時間費やして議事録を完成させることが現状です。
書類作成業務と並行してAIを活用することにより、正確性と一貫性を備えた議事録の作成が可能となります。さらに、会議直後に議事録や申請書類のフォーマットに即した文書を作成できるため、成果物の品質向上につながります。この取り組みにより、作業時間の短縮が実現され、1日あたりの面談件数の増加と不要な残業時間の削減という2つの効果が期待できます。
実際にAIが作成する議事録のイメージがこちらです。

例えば、クライアント様からの報告内容や今後の進め方、発生したタスクなどを、担当者や期限と共に一覧化することができます。
画面上の動作イメージを動画形式でご説明いたします(動画やプロンプトはセミナー当日限定)。
表示されている内容は、打ち合わせ内容を単純に文章化して送付するだけで、この処理速度で議事録を要約し、重要点を適切に文書化することが可能となっています。
そのため、顧客との打ち合わせ内容をボイスレコーダーで録音し、音声データを文字起こしすることで、即時に議事録の作成が完了します。
最近では、AI機能が搭載されたボイスレコーダーが市場に流通しています。これらの機器を効果的に活用することで、1日あたりの面談件数の増加が実現可能となります。
また、申請書類や議事録の作成に要していた時間を他の業務に振り分けることが可能となります。

画面上には、リンゴなどの品目とその数量が記載されています。こちらは、Excelの画面をスクリーンショットで取り込んだだけで、各列の内容について詳細な説明をせずに、空欄のD列に数量に応じた適切な単価を出力する関数の作成をAIに依頼しました。
AIは、IF関数やVLOOKUP関数を用いた解決策を、各セルへの具体的な入力例と共に提示してくれました。これらは自動で生成される形になっています。
実際の操作手順としては、まずD2に指定の関数を入力し、それをD3からD8までコピーするという簡単な手順で完了します。関数を作成するだけでなく、実際にどのように入力すればよいか、例えばG列に何が入っているかといった点も明確に示されているため、関数の作成と入力の両面でサポートが得られます。このように、AIを活用することで、関数やマクロの作成が容易になり、業務効率を向上させることができます。
Excelやスプレッドシートなどで顧客情報や給与計算を管理している先生方にとって、非常に有効なツールですので、ぜひお使いいただければと思います。
法律事務所における生産性向上事例
それでは、業界別の活用事例をご紹介させていただきます。
最初に、法律事務所における生産性向上の事例として、就業規則のチェック、養育費の計算、残業代のチェックという3点についてお伝えさせていただきます。

就業規則のチェックについて、就業規則は複数ページにわたる文書であり、毎年の法改正に伴い、どの条文のどの部分が改正され適切なのか、また今年の法改正に対応しているかを確認するのに、かなりの時間を要しているのが現状です。
法改正に対応した箇所を特定し、何ページのどの条文を、どのように変更する必要があるかを示すことができます。さらに、PDFファイルを入力するだけで完結することが可能です。
具体的な活用例として、厚生労働省が公開しているモデル就業規則を入力し、「今年の法改正に対応していますか?」という質問を行いました。

ChatGPTからは「何ページのどこの項目に修正が必要か」という具体的な指摘が得られました。これは、参照している公的機関の資料が、例えば平成14年に施行された法律に準拠していない場合、PDFを入力するだけで「この箇所はこのように修正すべき」という回答が得られるということです。
実際の操作としては、最初に厚生労働省のモデル就業規則のPDFを添付し、「今年の法改正に適合していない箇所について、ページと項目数を抽出してください」という簡潔な質問を投げかけました。法改正への対応が必要な箇所について、ページ数や具体的な項目を簡潔に示すことができます。また、特定の就業規則や特定の項目に絞った質問も可能です。
さらに、参照元が公的機関の資料であるため、一定の信頼性を確保した回答を得ることができます。
補足として、お客様から就業規則を受け取る際、PDF形式ではない事例や、一部手書きの箇所が存在する場合があります。長年運用されている就業規則についても、写真を1枚撮影してアップロードすると、AIが自動的に文字を認識し、改善点を提案する機能を実装しています。
他の先生方からは、文字の認識精度が低く、OCRが正常に機能しない場合や、デジタル形式への変換が困難なために、就業規則を最初から手作業で入力し直す必要が生じることがあるといった声も聞きました。
しかしながら、画像をアップロードするだけで文字データとして出力できるため、そのデータを活用して分析や項目の整理が可能となります。
▼続きは下記からダウンロードいただけます。