◆開催日時:2020年10月31日(金)
◆講師:船井総合研究所 片山 孝章
◆演題:「事例で分かる!融資を倍速で受ける銀行との付き合い方」
【はじめに】新型コロナウイルスこれまでの時系列
まず前提知識として、今回の「金融機関の意図が分かる!融資見直しセミナー」においては新型コロナウイルスの市況と、それに伴う金融事情の変遷について先に知識を保管しておくべきと考えましたので、この表を使いながらコロナウイルスと変わってきた金融事情について解説をしたいと思います。
大きく分けて、コロナウイルスの市況は四つのフェーズに分かれて推移してきたと私は思っています。
まず、2020年2月頃から本格化したコロナウイルスの市況に対して金融業界は迅速に制度融資で企業の資金対応を行いましたが、窓口に融資の申込みが殺到したというフェーズ1の時期がありました。
先ほど伝えした通り金融業界はこれまでにない速度で未曾有の事態であるコロナウイルス市況に対応してきました。
具体的には、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫といった政府系金融機関で無利子無担保の制度融資が新設されました。
しかしながらコロナウイルスというのはこれまでの震災やそれ以外の災害とは異なり、恐怖の大きさが測り知れなかったため、迅速な制度融資も窓口がパンクするほどの人気となってしまったのです。
そのため、今まで日本政策金融公庫や商工中金とこれまで取引がなかった企業ほど不利な状況に陥ってしまい、資金供給ができる窓口はあるが、そう簡単に資金供給ができる状況ではなかったのです。
そしてその後も市況がなかなか回復することはなく、むしろ罹患者はどんどん増えていくばかりで、2020年4月には非常事態宣言が発令され、全国的に外出自粛というかたちで最悪の状況、フェーズ2に陥る展開になりました。
このときには全国の中小企業であからさまに業績のマイナスが発生し、旅館業やアミューズメントパークといった業界では今までにない債務超過を経験することになりましたし、コロナ融資を借りたところで一瞬にして干上がるクラスのマイナスが発生した企業もありました。
このように不況が起きたことによって業績が落ちていく会社が多いなかでは、金融機関の融資は引き締めの方向への動きになるのが常識と言われていまして、フェーズ2段階は、金融不況、いわゆる貸し渋りや貸し剥がしが発生すると予測をされた時期でもありましたし、コロナウイルスが金融業界に大ダメージを与えることは容易に想像できました。
ところが2020年5月に入って市況はフェーズ3へと一変することになります。
というのは、ここに金融業界蛇口故障期と私が名前を付けていますが、政府系金融機関だけではなく、2020年5月からは民間の地方銀行、都市銀行、あるいは信用金庫や信用組合でも政府系金融機関並みの優遇された条件での制度融資が3,000万、後に4,000万まで受けられるようになったからです。
政府系同様に無利子・無担保の融資の取扱いを開始した地方銀行は、優良な企業から日々取引をしている小さな中小企業まで、コロナ融資の売り込み姿勢を強めました。
今までであれば審査をしっかりしたうえで融資を許可する流れが普通であるなか、融資の蛇口が完全に軟化してしまう状況となったのです。先ほど景気が悪くなると融資が出にくいとお伝えしましたが、逆に制度融資が広まったことによって、景気が上向く気配がないのに融資の蛇口が軟化して潤沢に出る状態になった、ということですね。
そして、その後一度コロナウイルス市況は回復の兆しを見せたものの、第二波が発生したことによって再び小康状態が続くフェーズ4の状況に陥りました。
コロナ融資も一巡して企業は完全に資金潤沢状態にありますが、市況が完全に元に戻ることはなく、小康期が継続していると言えます。
たとえば、融資は十分借りることはできた、あるいは現場の資金繰りには困っていないので、さて来年この融資をどのように返済しておこうかということを考えるほど市況はのんびりしているわけです。
つまり、一時期は危機的状況も想定されたようななかでしたが、融資が潤沢に出たことによって企業はお金の観点では比較的余裕があって、猶予された時間の中で2021年はどのように事業を展開していくかを考えるフェーズにあるかと思います。
しかしながら今回のセミナーにおいては、果たして企業は、本当に時間が許されており、ゆっくりと融資を見直す時間があるかどうかという部分を解明したいと考えています。猶予があると考えているのは企業に限った話であり、融資の出し手である金融機関側は、実は企業のように融資をのんびりと考えて今まで通りに許容するのか。
今回は、実際に金融機関の現場に入り込み、金融機関の職員向けにコンサルティングをしている講師から、現場の事実をお伝えしていくことで、考えたいと思います。
【はじめに】新型コロナウイルスこれまの時系列~これまでのコロナウイス市況時系列まとめ~
いま前提知識として、これまでのコロナウイルスに関する時時流についてお話しましたが、改めてまとめますと、現在の市況は小康状態に入っているものの依然として改善していない状況にあり、他方で企業は融資で潤沢にお金がある状態になっているということです。
企業の資金繰りが楽なのは健全であると考えることもできますが、一方で、これはコロナ融資、金融機関あっての市況だということを忘れてはいけないということですね。
そこで改めてセミナーでお伝えする内容は、われわれ借り手のほうがお金を潤沢に保有している状態で、相対する出し手の金融機関はどのように変わっていくのかについて・・・
※ セミナーの講演録と当日使用したテキストをダウンロードいただけます。