先日、大手ハウスメーカーが値上げを発表しました。コロナ禍での米国住宅需要の活況による、日本向け木材の価格高騰が原因です。
一方でニトリは、家具にとどまらず、家電や飲食などの新業態開発でも、徹底した低価格戦略を武器に躍進を続けています。また、コロナ禍のおうち時間増加で100円ショップ業界も新業態展開が進み新たな転機を迎えています。
しかし、これらの低価格路線は2000年ごろの「デフレ・スパイラル」と言われた頃の、大量仕入れによる「薄利多売」路線とは違います。ニトリも100円ショップ業界大手のセリアも営業利益率10%を超える高収益企業なのです。
この要因のひとつに、小売業者とメーカーがチームを組んで商品開発をする、プライベートブランド(PB)戦略があると言えます。PB戦略は、高利益で低価格商品を販売できるという小売業者側のメリットだけではなく、メーカー側も、返品リスクがない上に消費者ニーズを詳細に把握できるため新商品開発が進みます。当然、低価格で高品質な商品を購入できる消費者にもメリットがある、いわば、三方よしの仕組みということです。
実は「ウッドショック」に見舞われている日本は、国土の3分の2が森林に覆われた世界有数の森林大国です。それにもかかわらず海外木材市場に大きく左右される矛盾の原因は、高度経済成長期の安価な輸入木材への切り替えが一因です。本来ならここで国産材へと一気に切り替えたいところですが、いつまた市場価格の下落で輸入木材に戻るかもわからないため巨額の投資ができないというのが林業者の実情です。
しかし、すでに動きはあります。有力住宅会社が協力して生産業界団体を設立し、製材工場などと直接取引することで安定供給を計画するという取り組みです。SDGsの「持続可能な開発目標」とは何も環境に限ったことではありません。サプライチェーンを見直し、製造業も小売業も高収益体制を「持続可能」にする取り組みに挑戦するべきではないでしょうか。また私たち船井総研も、そのようなご支援先企業の皆さんの挑戦をサポートすべき時にきているとも考えています。
世界有数の森林大国が見舞われている「ウッドショック」という矛盾
2021年07月05日