「社長が現場から離れられない」「新しいことに挑戦したいが、組織の器が追いつかない」「右腕と言える存在が見つからない・育たない」――これらは、船井総合研究所が多くの経営者様からお伺いする、共通の課題です。特に、スキルはあっても会社に馴染めずに辞めてしまう人材や、現場仕事はできても経営視点を持たない人材の存在は、組織拡大の大きな障壁となりがちです。
現在、日本の採用市場はかつてないほど厳しさを増しています。
・人手不足の深刻化
業種を問わず、中核人材の採用に74.5%の企業が苦戦している
・好待遇の常態化
中途採用者に対し、前職よりも「増加」した賃金を提示する企業が5.4ポイントも「減少」を上回っており、優秀な人材を獲得するには相場以上の条件提示が不可欠
・転職検討者の増加
労働人口の約6~7人に1人、実に1035万人が転職を検討している潜在層であり、企業はあらゆるチャネルにアンテナを張る必要がある
このような状況下で、これらの課題を解決し、会社を成長させる鍵となるのが、「幹部人材採用の成功」です。
船井総研が提唱する「幹部人材採用」成功の3ステップ
未来を担うリーダーを発掘し、企業を成長させるためには、戦略的なアプローチが不可欠です。幹部人材採用を成功に導くための3つのステップ
1.欲しい人材・条件を「定義」する
売上目標達成、生産性向上、新規事業立ち上げなど、経営課題と連動させ、採用目的を具体的に設定します。
足元で任せたい業務と将来任せたい業務を分け、Will・Can・Mustの視点で役割を明確にします。
社内で成果を出している幹部・中堅社員のスキルセットだけでなく、共通の価値観やマインドを分析し、「〇〇さんのようなタイプ」と具体的にイメージできるまで落とし込みます。
採用背景、ミッション、期待する役割、必須スキル、年齢イメージ、求めるマインド、キャリアパスなどをまとめた社内用の求人票を作成し、関係者間で合意形成を図ります。
データベースを活用した競合・求職者調査に基づき、市場相場以上の年収設定が重要です。
2.「攻め」の採用が不可欠
会社ブランディング、採用ブランディングを通じて、自社の強みや企業価値を「採用コンセプト」として求職者に発信します。
ハローワーク、求人サイト、人材紹介、ダイレクトリクルーティング(スカウト型採用)、リファラルなど、採用に適した層やコストを考慮し、幹部候補が利用しているチャネルを戦略的に活用します。特に、人材紹介会社は自社のパートナーと捉え、複数社と契約し、目標KPIやオペレーションを設定してマネジメントを徹底することが重要です。
応募者対応、来社対応、面接内容、条件提示、オファー面談といった選考プロセス全体で、求職者の志望度を高めます。カジュアル面談から最終面接、オファー面談まで、効果的な選考フローを設計し、候補者のWillやCanを引き出すような面接コンテンツを用意します。
活躍人材の定義に基づき、面接質問内容や評価内容を設計します。特に、社長や直属の上長がカジュアル面談や選考を実施し、経験・知識・スキルだけでなく、ポテンシャルやコンピテンシー、ソースオブエナジーといった「変わらない情報」を深く掘り下げて見極めることが重要です。
3.入社後の「オンボーディング」
入社した幹部人材が早期に活躍するためには、入社後のサポートが不可欠です。
現場同行や1on1を通じて社内の実情を知ってもらい、裁量の範囲をすり合わせます。
キャリアビジョンシートを作成し、まずは成果を出しやすい業務から任せることで、早期の貢献を促します。
関係者との初期1on1の設定や、会社・部署の方針、文化、ルールなどを伝えることで、スムーズな定着を支援します。
実際に、これらの戦略を実行することで、多くの企業が幹部人材の採用に成功しています。
事例① IT企業(社員約20名)のエンジニア職(次期幹部候補)採用
人材紹介会社への戦略的アプローチにより、自社の考えに共感し、入社1年半でマネージャーに抜擢され、組織を牽引するリーダーを迎え入れました。
事例② 葬儀業(社員約200名)の人事部長候補採用
人材紹介会社を活用し、大手飲料メーカーでHRBP経験を持つ人材を採用。入社6ヶ月で採用部門を統括し、部門体制を強化しました。
事例③ ビルメンテナンス業(社員約200名)の設備部長採用
ビズリーチを用いたスカウト型採用で、市場価値を考慮した条件提示を行い、部長として入社後約1年で執行役員に昇格。リファラル採用も強化されるなど、組織に大きな変革をもたらしました。
幹部採用は簡単に進められるわけではありませんが、やるべきことを徹底して進めることで実際に成果を上げることができるのです。
執筆者: ヒューマンキャピタル支援部 マネージング・ディレクター 滝本 千晶 たきもと ちあき |