人口減少と少子高齢化が加速する日本において、全国の自治体は今かつてないほどの生存競争にさらされています。そんな中で定住移住の促進、関係人口の創出を目的としたシティプロモーションが各自治体で独自固有の魅力を活用しながら取り組まれています。
しかし、取り組みの中でこのような悩みを抱えている自治体職員の方は少なくありません。
●「移住促進のために動画を作ったが再生回数が伸びない
●ロゴマークやブランドメッセージを策定したが市民の反応が薄い
●他自治体の成功事例を真似してみたが効果が出ない
事実多くの自治体では単発のイベントやツールの作成が目的化してしまい、本来の目的である定住や関係人口の創出につながっていないケースが散見されます。
本コラムでは、こうした課題を解決し、持続可能な選ばれるまちになるために不可欠な戦略的なシティプロモーションの考え方と実効性のある計画策定の具体的な進め方について、解説します。
【国の潮流から読み解く、シティプロモーションの必然性】
■「お願いする移住」から「楽しいから選ばれる」へ
今、地方創生の新たなフェーズとして「地方創生2.0」への転換を掲げています。
これまでの地方創生が「東京一極集中の是正」という都市対地方の構図であったのに対し、これからは各地域が独自の魅力を発揮し、若者や女性にとって「楽しい地方」をつくることが求められています。
特に若年女性の地方からの流出理由として、「やりたい仕事、やりがいのある仕事がない」ことが挙げられています。単に雇用を確保するだけでなく地域で主体的に活動できる環境、そしてやりがいをつくれるかが重要なポイントになっています。
■シティプロモーションの進化と3つの視点
そもそも、シティプロモーションという言葉は1990年代後半から使われ始めましたが、当時は都市の知名度向上やイベント誘致といった宣伝(シティセールス)の色合いが強いものでした。
現在では、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を獲得するためのより包括的なマーケティング活動へと進化しています。
また、シティプロモーションはその狙いによって以下の3つに分類されます。
多くの自治体が陥りがちな失敗は、アウタープロモーション(認知・誘客)のみに注力してしまうことです。
いくら外から人を呼び込んでも、住民の満足度が低ければまるで穴の空いたバケツに水を注ぐように人は流出し続けてしまうことが懸念されます。 また、施策を実行する職員自身の熱量が低ければその魅力は外部へ十分に伝わらず、穴をふさぐことはできません。
これらの3つの視点を意識し、シティプロモーションの狙いとターゲットを定めていくことが重要になります。
【選ばれるための重要概念:シビックプライドとマーケティング視点】
■選ばれる自治体の鍵はシビックプライド
「地方創生2.0」の文脈においては、「「若者・女性にも選ばれる地方(=楽しい地方)」を創出することが明記されています。この楽しい地方をつくるうえで重要な考え方が「シビックプライド」です。
シビックプライドは株式会社 読売広告社が打ち出したメッセージで、現在は全国の自治体のシティプロモーション計画や条例にも使用されています。シビックプライドは単なる郷土愛や愛着ではなく自分たちが関わって、この地域を良くしているという当事者意識に基づく自負心のことを指します。
楽しい地方とは行政が一方的にサービスを提供するだけでなく、住民が自分らしく、イキイキと活動できるまちだと定義できます。住民がシビックプライドを持ち、自発的に地域の魅力を推奨する状態こそが、外部に対する最も信頼性の高いプロモーションとなります。
シティプロモーションの計画策定においては、このシビックプライドをはじめとする住民意向をKPI(重要業績評価指標)に設定し、まちの認知拡大以上の成果を図ることが重要です。
■行政に求められるマーケティング思考への転換
行政施策は、すでにある地域資源(自然や特産品など)をそのままプロモーションする「プロダクトアウト型」の取り組みが多い時代でした。しかし、競争が激化し、多くの自治体が似たような特産品や自然環境を持つ中では、それだけで選ばれるまちとなることは困難な状況になっています。
民間企業と同様に、シティプロモーションにおいてもターゲットを明確にし、そのターゲットが求めている価値を提供する「マーケットイン型」への転換、あるいは他との差別化を図るマーケティング戦略が求められます。
シティプロモーションの計画策定プロセスでは、3C分析(自社・競合・顧客)などのフレームワークを用いることが効果的です。特に、近隣の自治体や類似の自治体と比較した際の独自の強み(ポジショニング)を明確にする必要があります。
■なぜ戦略を計画に落とし込む必要があるのか
ここまで述べた通り、シティプロモーションの本質は自治体による地域の売り込み、すなわちマーケティング活動にあります。 民間企業においても、ターゲットやコンセプトといった戦略なしに販促活動を行うことはないのと同様に、シティプロモーションにおいても戦略の欠如は致命的です。戦略のないプロモーションはターゲットに響かないばかりか、貴重な税金とリソースの浪費に終わってしまいます。
行政の現場では担当者の異動や年度ごとの予算編成により、施策の一貫性が保てなくなるリスクが常につきまといます。
だからこそ、マーケティング視点に基づく戦略を、計画という形に落とし込み、組織全体の共通認識とすることが肝要なのです。
次章からはこの戦略をどのように描き、実効性のある計画へと落とし込んでいくのか、具体的なステップを解説します。
【選ばれるためのシティプロモーション計画策定】
シティプロモーションにおいては万能の正解はありません。そのため、自治体の規模やリソースによって、取るべき戦略(勝ち筋)は異なります。ここでは、最新の全国実態調査をもとに、人口規模別の方向性と実効性のある計画策定のステップを解説します。
(※参照:シティプロモーション自治体等連絡協議会 令和5年度シティプロモーション全国調査)
■人口規模別における取るべき戦略の方向性
- 小規模自治体(人口1万人未満〜5万人) ニッチ戦略と一点突破
この規模の自治体は基本的に予算や人的リソースが限られているため、計画策定やデジタルツールの活用が進んでいない傾向にあります。しかし、裏を返せば独自の強みに資源を集中させることで、差別化を図りやすい領域でもあります。
全方位的なプロモーションはなく、特定分野(例:妊娠期から青年期までの一気通貫子育て・学習支援、ベンチャー企業に絞った産業振興など)に絞り込んだニッチ戦略を計画策定の核に据えることが効果的です。
- 中規模自治体(人口5万人〜10万人程度) 戦略的分水嶺とデジタル活用
この規模になると広報動画の作成やSNS運用など、デジタルを活用したシティプロモーションが活発化します。また、シティプロモーション計画を策定している自治体の割合も増えます。
そのため、職員へのインターナルプロモーションを強化し組織全体でシティプロモーションを推進する体制を構築できるかが勝負の分かれ目となります。
- 大規模自治体(人口10万人~20万人程度) 全方位展開の中での「尖り」の創出
この規模の自治体では動画、SNS、ロゴ作成などほぼ全ての施策において実施率が高く全方位型のプロモーションが展開されています。 しかし、多くの自治体が同じような施策を行うため、単に実施するだけでは埋没してしまう状況にあります。
計画策定においては、網羅的な施策展開だけでなく、他にはないブランドメッセージや特定のターゲットに深く刺さる尖ったテーマを設定し、独自のポジショニングを確立することが不可欠です。
- 中核都市以上(人口20万人以上) ブランディングの深化
20万人を超える規模では、自治体そのものの知名度が既に高いため必死に認知を獲得するフェーズではありません。調査結果から移住イベントへの出展などの施策は減少傾向にあります。 代わりにフィルムコミッションを通じたイメージ戦略や企業連携などが活発になります。
今後の計画策定においては、既存の都市ブランドに安住せず多様性やウェルビーイングなどの都市の格(ブランド)を高めることが重要です。また、職員や住民を巻き込んだインナープロモーションを強化し、都市の推奨度を高めることが持続的な発展の鍵となります。
■実効性のある計画策定の3ステップ
では、具体的にどのように計画策定を進めればよいのでしょうか。
作って終わりではない実効性のある策定ステップは以下の通りです。
Step1:現状分析とポジショニング
まずは、客観的なデータに基づき自地域を取り巻く環境や既存計画(総合計画や広報計画など)の実施状況を把握します。 ここでは担当者の感覚ではなく、数値データやアンケート結果などのファクトに基づいてシティプロモーションにおける課題を抽出することが重要です。現状の立ち位置を正確に知ることで、的外れなプロモーションを防ぐ第一歩となります。
Step2:戦略立案とKPI設定(骨子の作成)
10年〜20年後の「目指す将来像(長期ビジョン)」に沿って、そこから逆算して、誰に(ターゲット)、何を(コンセプト)、どのように(手段)伝えるかという戦略を立案します。 この段階では具体的な数値目標(KPI)を設定します。数値目標が設定されていないと効果検証ができず、やりっぱなしの原因になります。
Step3:アクションプランへの落とし込みと体制構築
計画を絵に描いた餅にしないために、数値目標を達成するための具体的な行動計画(アクションプラン)を策定します。誰が、いつまでに、何をするかを明確にします。 また、アクションプランを策定するだけでなく、庁内連携を促進するための仕組みも重要になります。
必要に応じて会議体を設置するなど、庁内全体で日頃からシティプロモーション推進の機運を作り出すことが、計画推進の要です。
■船井総合研究所のシティプロモーション計画策定・実行支援
ここまで、戦略的なシティプロモーションの必要性と進め方について解説してきましたが、これらを自前のリソースだけで完結させるのは容易ではありません。 船井総合研究所ではシティプロモーション自治体等連絡協議会の事務局として蓄積された全国の事例やデータ、そしてコンサルティングのノウハウを活かし、自治体様のシティプロモーションをトータルで支援しております。
●何から手をつければいいかわからない
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とお考えの自治体様は、ぜひ一度ご相談ください。
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お読みいただきありがとうございました。

