【インタビュアー】株式会社船井総合研究所 船井 あゆみ (以下:船井)
【インタビュイー】株式会社船井総合研究所 事業イノベーション支援部 渡辺 大起(以下:渡辺)
アフターコロナの新規事業
本記事は新規事業がテーマです。
コロナなどの外部環境により、既存事業1本だけでは今後が不安と考え、新規事業に取り組む企業が増えています。
本記事は
・新規事業に関する最新動向
・新規ビジネスモデルの成功事例と取り組む際のポイント
などをご紹介します。
新規事業の現状
1.新規事業の動向
船井
新規事業に関する経営者の興味度合いに変化はありますか。
渡辺
コロナ禍において企業周りの外部環境や市場動向はめまぐるしく変化しています。
アフターコロナに向けて、新規事業の参入は加速しています。
中小企業庁がコロナ禍で事業再構築補助金の交付を始めました。
交付以降、申請件数は4倍以上に増えています。
事業再構築補助金を活用した新規事業の参入も非常に需要が増えています。
船井総研も中堅・中小企業の経営者から本業の好不調に限らず、ご相談いただいています。
2.新規事業のニーズ
渡辺
新規事業のニーズは例えば
・本業の縮小をカバーできる事業の確立
・様々な収益源の確保
・事業承継を見据えた新しいビジネスへの取り組み
・メイン事業との相乗効果
・幹部育成のための事業参入
・採用の活性化
があります。
船井
メイン事業との相乗効果を求める人が多いのでしょうか。
渡辺
はい。
まずメイン事業や既存事業で売上を取ります。
その上で、
・事業を活かしながら何ができるか
・既存事業のお客様にもサービスを提供できないか
と考える人は多いです。
3.企業での新規事業の立ち位置
船井
船井総研でも新規事業関連のセミナーの注目度は高まっています。
新規事業の立ち上げは企業でどういう立ち位置になりますか。
渡辺
本業の好不調に限らず、新規事業のご相談をいただきます。
本業が好調なお客様は
「今のうちに何か新しい収益源を確保したい」と考えています。
一方で、本業が不調なお客様は
「第1の柱から事業、企業としての第2の柱を作っていきたい」
と考えています。
新規事業を第2の柱に
船井総研では新規事業を「第2の柱は第二本業」と考えています。
既存事業が第1の柱、新規事業が第2の柱です。
つまり第2本業として
・今後の企業経営を司る要素にしたい
・新規事業を今後の第2の柱にしたい
という捉え方が新規事業の立ち位置です。
将来予測が非常に難しくなっています。
新規事業を短期間で第2の本業にしたいと考えています。
下図は、右から時間軸、会社を創業してから現在、未来を示しています。
人生と同様、事業・企業にもライフサイクルがあります。
既存事業を立ち上げ、今までは上り調子でも、今後は先細りする心配もあります。
また、既存事業のみで今後の成長が難しい場合、さらに今後、企業成長するために第2の柱、新規事業を立ち上げていくお客様も多いです。
船井
2022年の船井総研・時流予測セミナーでも「第2本業化」や「多角化経営」というキーワードが出ました。
その潮流が来ているわけですね。
渡辺
間違いなく来ています。
かつ、多くのお客様が、実際に何をすれば良いかわかっていません。
ただ、新しいことを何かすべきという危機感や意識を持っています。
そのようなご相談もいただきます。
新規事業の4つの展開
渡辺
新規事業の開発について、4点のニーズをご紹介します。
・多角化成長し続けるためのられる見通し
・新しい収益の柱の確立
・多角化
・地域貢献
大きく分けるとこの4つのニーズから新規事業に取り組む会社が多いです。
多角化とコングロマリット
渡辺
「多角化」の派生としてコングロマリットがあります。
新規事業にも様々な事業があります。
その中事業選択の中で、「地域コングロマリット企業」の選択肢に持っていただきたいです。
「地域コングロマリット企業」とは「地域内の需要を点ではなく、面で獲得している多角化企業」です。
各地域で、市民、個人へサービスを提供するBtoC企業から、企業や製造業にサービス提供するBtoB企業もあります。
これらを複合的に考え、一般市民のお客様、企業にサービスや商材を提供します。
複合的に地域全体を活性化し、地域一番を目指すことが地域コングロマリット企業です。
地域コングロマリット企業を目指すメリットは、地域での知名度やシェア率の向上です。
地域での知名度が上がると、人材の採用効率も上がり、新しい採用ができ、求職者も非常に多くなります。
地域の有力企業になる、が最も簡単な捉え方です。
コングロマリット化の5つの類型
渡辺
地域コングロマリット化、新規事業の取り組み方、事業選択について5つの類型を紹介します。
・ニーズの拡張型
・サプライチェーン統合型
・付随拡張型
・販路開拓型
・集成型
この5つの捉え方を新規事業の取り組み方のかたちとして捉えて覚えていただきたいです。
①ニーズの拡張型
既存事業の資源や技術ノウハウを応用して同一動詞で異なるニーズの客層を獲得するパターンです。
例えば住宅業界で既存事業を展開されている会社が、分譲事業やリフォーム事業で、
・家を建てる
・家を買う
という動詞の中で事業を複数展開することです。
②サプライチェーン統合型
事業には前後の業種、上流、下流があります。
既存事業の前後の業種、上流、下流へ、顧客の裾野を広げていく多角化パターンです。
例えば既存事業が卸売業の会社が、上流のメーカー機能を持つような新規事業を持ちます。
一方で、より下流の小売業を展開する取り組みも当てはまります。
➂付随拡張型
主たる商品、サービスに付随するような商品、サービスを付加して、お客様1人あたりの単価をアップするパターンです。
中古車ディーラーの場合、車検や保険、整備、板金事業を付加してお客様1人に対して提供していくサービスを増やしていきます。
④販路開拓型
製造工程や技術が似た製品を作り、異なる業種や顧客への裾野を広げていくパターンです。
切削の工具メーカーの場合、従来は自動車、航空部品を製造しているところから、アウトドアのような時流に合わせた製品を同じ技術で開発していく事業のパターンもございます。
⑤集成型
・外食
・レジャー
・フィットネス
と、一見事業として異なりますが、地域で資源を一括に集約して複合的なサービスを提供します。
以上の5つの類型が、コングロマリット企業、新規事業の取り組みパターンです。
5つの類型の具体例
船井
5類型の具体的な事例を教えてください。
渡辺
4事例をご紹介します。
事例①自動車業界のコングロマリット化
地方都市で売上約100億円規模の自動車販売会社の事例です。
自動車販売事業で順調に成長していましたが、新規の出店の余地がなくなってきていました。
地域のシェアが非常に高いため、新たな出店余地がなくなってきていました。
そこで、新規事業の取り組みとしてコングロマリット化戦略にシフトしました。
食品事業や、宿泊事業、健康事業に参入しました。
そして、企業のブランドイメージが一新されました。
船井
全く違う業種への参入ですね。
渡辺
全く異なる事業への参入で、新たな収益の柱を立てました。
事業の業界が広がったことで優秀な人材の確保、採用にもつながることもあります。
その中でも地域の自動車販売会社ではなくて、地域に複数事業を展開して一定の知名度を持つ会社に成長した事例です。
事例②食品業界のコングロマリット化
元々売上約30億円で、インスタント麺や、実際の店舗で販売する麺を製造していたBtoBの会社の事例です。
新規事業は同じ食品ではあるものの、業種やイメージが異なる事業のスイーツ事業に参入しました。
この会社は地域コングロマリット構想を掲げています。
そのため、地域の食材を活かしたスイーツ店舗を出店しました。
その後、
・多店舗化
・地元の飲食、宿泊業へのスイーツの卸
・地域の有力な飲食店や宿泊施設に出すスイーツの卸
・駅、空港等のお土産店へのスイーツの卸
まで事業を発展させました。
第2本業として、元々の製麺事業だけではなく同等のスイーツ事業を立てた事例です。
事例➂温浴業界のコングロマリット化
元々の売上約10億円の温浴業界の会社の事例です。
さらなるブランドイメージの向上を目指しコングロマリット化しました。
温浴業だけでは先行きが難しいため、収益基盤の拡大として食品製造業に参入しました。
実際にクラフトビールやスイーツ、いちご農園、餃子専門店など食品の中でも外食に近い、小規模からでもできる食品、外食産業というものを複数地域内で展開された事例です。
各店舗、小規模でありながら収益は上げつつ、自社が経営する温浴施設でもそういった商品を活用、展開されています。
既存事業と新規事業を絡めて事業を展開されているような会社です。
事例④製造業界のコングロマリット化
製造業界の事例です。
金属加工会社で、地域の町工場です。
売上約20億円でした。
製造業の特異性でもありますが、下請け構造が課題でした。
なかなか利益率も低く、かつ製造業は不人気業種のため、人材採用が難しいことが課題でした。
課題解決のために、採用ブランディングと高収益事業を軸に新規事業に取り組みました。
検討の結果、近年非常にニーズが高く、需要が増加のアウトドア製品の製造を始めました。
また、製品の小売り事業まで展開し、現在は営業利益約1億円を創出する事業にまで成長しました。
この会社は課題先行型です。
課題を解決する選択肢の手段として新規事業をしました。
4つの事例をご紹介しました。
会社の業界や課題観に合わせて、10社あれば10個の選択肢があります。
会社の現状に合わせて新規事業に取り組んでいます。
船井
事例企業は何年でコングロマリット化を実現したのでしょうか。
渡辺
第2本業というと、1年〜2年できちんと収益化できるような事業に取り組む会社も非常に多くいます。
一方で、事業承継だと、10年、20年先の自社の在りたい姿を見据えたときに新規事業でこういうことに取り組んでいきたいと考えられる会社もいます。
会社それぞれですが、主に短期間で収益化を新規事業の目的にされる会社が多いです。
第2本業化のための企業規模
船井
第2本業化を検討するにあたり、どのくらいの企業規模なら新規事業を考えるべきでしょうか?
ミニマム(最下限)はありますか?
渡辺
ミニマムは会社それぞれです。
しかし、先程ご説明した会社は、売上約10億円を超えてから取り組んでいます。
まずは既存事業をきちんと収益化・拡大することが重要です。
そのため1つの目安は「既存事業で10億円を達成した会社」です。
しかし10億円以下でも、複数収益源を持ちたい会社もいます。
その場合は既存事業の規模に合わせて新規事業を選びます。
・スモールスタートができる事業
・既存事業の規模に合わせた新規事業の規模
にすると良いです。
実際そのような新規事業を選んでいる会社も多いです。
スモールスタートできる新規事業
船井
スモールスタートだと、初期投資も少なく始めやすいですよね。
渡辺
その通りです。
例えばクラフトビールやスイーツなどがあります。
業界業種に合わせて船井総研からもご紹介できます。
個別にご興味やご質問があればぜひご相談ください。
既存事業に加えて第2本業化することで、企業の成長が見込めます。
他にも、最新の業績アップ事例を踏まえて、事業に役立つ情報を発信していく予定です。
楽しみにしていてください。