評価制度とは?
基準に則って評価し、評価される仕組みのこと
評価制度とは異なりますが、学生であれば教師にテスト結果や授業態度、提出物の基準に則って通知表というかたちで成績が付けられます。
仕組みとしては同じです。
評価制度の種類
評価制度の理解のために3種類の評価制度をお伝えします。
この3種類から一つを選ぶという方法も取れますし、複数の種類を混ぜ合わせることも可能です。
目標管理評価:
1人1人が目標を設定して、その達成度に応じて評価される仕組み。
目標設定は本人や上司、もしくはその両方で決定される。
期待成果/期待行動評価:
仕事のできる人の行動特性などを基に、評価項目や評価基準を設定して評価する方法。
360度評価:
多方向から評価される仕組み
「目標管理評価」「コンピテンシー評価」
評価制度をつくる目的
目的は企業によって異なります。
重要なことは、何を目的に評価制度を作るのかという軸をぶらさず、仕組みを作ることです。
目的は一つだけという決まりはなく、複数あっても問題ありません。
代表的な目的として三つご紹介します。
①給与・賞与・昇格などに反映
経営者が社員1人1人の成果や日々のプロセスを把握できるのであれば、経営者の 判断のみで給与・賞与・昇格を決めることは可能です。
しかし、社員からはその報酬などの理由が分からないという状況になってしまいます。
では、どのように決めるべきか。
「評価結果を判断する仕組みを取る」ことで理由が明確になります。
ですが、これだけを目的として評価制度を導入することはあまりお勧めしません。
給与・賞与・昇格などに反映することを目的する場合、必然的に期待する成果に対する結果へ比重が偏ってしまいます。
将来的に継続した企業と社員の成長を考えるとベストな選択ではないと言えます。
プラスで他の目的にも目を向けてみるようにしてください。
②人材育成
評価制度によって評価を実施し、未達成のポイントを改善してもらうことで人材育成に繋がります。
どのような成長を企業が社員に求めているのかを示すこともできます。
評価制度を導入、運用するためには、評価する側もされる側も、それぞれ能力が必要になりますので、その点でも育成に繋げていくことが可能です。
必要な能力の一例
評価する側:適正な評価能力日々部下を観察する能力、目標設定能力、評価結果と改善点をフィードバックする能力
評価される側:評価基準の理解能力、目標設定能力、PDCA管理能力
③社員のモチベーションを上げる
目標を明確にし、その達成を目指して努力したプロセスや成果が評価されることで社員のモチベーションを上げることができます。
目標に向けてモチベーションを上げることも可能ですが、合わせて、「給与・賞与・昇格などに反映」も組み込むことで効果が上がります。
評価制度のメリット・デメリット
評価制度の種類によってメリット・デメリットは変わるのですが、どのような評価制度でも共通していくものをお伝えしてきます。
メリット
・評価するために必然的に対象者の日々の行動を把握するようになる
※ 印象的な成果や行動は記憶に残りやすいが、そのような瞬間的な出来事だけではなくその成果に至るプロセスや行動が重要
偶然に評価されることを防ぐ
デメリット
・評価制度を導入する前は、何で評価されるのか分からない、何をがんばればいいのか分からないといった不満がでる
・評価制度を導入したあとは、人に対して好き嫌いが激しい上司に評価されるのは嫌だなといった不満がでる
※ 評価の運用の仕方や評価をする側の能力差に対して不満がでて、「こんなことなら評価制度を始めなければ良かった」と後悔をすることもあるかもしれません。
※ 事前に運用体制を整えたり、運用できるレベルの仕組み作ったり、評価者の育成をしたりする必要があります。
目標管理評価
メリット
・自分自身が納得した目標をもとに評価されるため、達成に向けて前向きに取り組んでいくことができる
・評価するために目標設定が必要なので、目標設定能力の向上にも繋がる
・評価の度に組織や仕事が流動的な会社には適している
デメリット
・設定した目標が評価基準となるため、全社員の目標のレベルで整合性を取ることが非常に困難
・目標設定する社員にその能力があれば問題ないのですが、整合性を取ることは目標をただ設定するよりも難易度が格段に上がってしまう
期待成果・期待行動評価
メリット
・漠然としていた会社として社員に期待する成果や行動を整理することが できる
・評価基準を評価者や管理職と一緒に作成していくことによって経営者の意思浸透に繋げることも可能
・評価基準を明確にした上で評価を実施しますので、結果のブレが発生しない
デメリット
・評価基準で定められた範囲でしか評価ができない
・業務の変化やKPIの変化によっては設定した評価基準が実情と合わないため見直しの必要性が発生
360度評価制度
メリット
・上司では把握しきれない部分を補うことができる
・多くの社員が評価をされる側だけでなく、評価をする側にも担うことができる
・企業が期待することを理解するには評価側になるということが一番
上司だけから評価されるより他の社員からも評価されることで本人の評価に対する納得度が上がる
デメリット
・上司だけでなく評価する側になる社員は全員が適正に評価をする能力が求められる
例えば、時には厳しい指導をする社員とミスをしてもかばってくれる社員では、どちらが良い評価を得やすいでしょうか
・評価者としての能力が乏しく、自分に都合の良い社員が良く見えてしまうとき、そのような状態では間違った評価をつけてしまう可能性
・一歩間違うと人気投票のようなものになってしまう
評価制度作成のプロセス
評価制度の作り方のステップを5つご紹介していきます。
どのプロセスでも共通して重要なポイントは、目的を忘れずに無理をしないということです。
Step1:前準備
いきなり評価を作るのではなく、前準備をすることが重要です。
①だれが作るか
・実情に合った評価制度を作る必要がある
・おすすめの方法
=種類や大枠まで経営幹部で決め、評価基準の詳細部分は管理職に力を借りる
②いつまでに作るか
・評価制度は「重要度は高いが、緊急度は低い」に分類されがち
・作り始めたが後回しになり中途半端、という事態を防ぐため運用時期を決める
③誰に適用する仕組みなのか
・正社員の営業職からスタート、などの場合は他の雇用形態や職種ではいつからスタートさせるのかも合わせて検討する
初めての評価制度なのでまずは正社員の営業職からスタートしてみようといった判断も選択肢の一つです。
ただし、そのような場合、雇用形態や職種によってはいつからスタートさせるのかを合わせて検討しておきましょう。
Step2:種類を決める
1.目標管理評価
2.期待成果・期待行動評価
3.360度評価
といった3種類があり、これから一つを選ぶという方法もありますが、複数のものを組み合わせるということも可能です。
しかし、複数の種類を合わせてしまうとその分、社員理解と運用の難易度が上がります。
初めて評価制度を作るのであれば期待成果・期待行動評価を選択することをおすすめします。
Step3:評価内容を決める(大枠)
実績・定量などの成果
・評価のためだけに集計する実績を増やすことをせず、普段から追っている実績で評価
実務・定性の項目数とは別で検討する
実務(スキル)
定性(スタンス)
・日々の行動やプロセスを観察する必要があり、評価項目数が多ければ多いほど正確に観察しておかなければならないことが増える
・無理のない範囲で項目数を設定
目標管理評価:10項目前後
期待成果・期行評価:20~30項目
Step4:評価内容を決める(詳細)
大枠が決まったらあとは詳細を決めていきます。
評価をするということは点数やランクをつけなければなりません。
1.評価基準を決める
1点、2点という点数にするのか、Aやといった英語にするのか、意図や背景、経営者の好みによって自由に設定しても問題なし
2.評価基準の段階数を設定
段階が多ければ多いほど、当然設定する評価基準も増える
おすすめは5段階での評価
Step5:運用準備
運用準備でやる一つ目は、評価サイクル・スケジュールを決めることで、二つ目は、評価者と被評価者の組み合わせを決めること、三つ目が評価結果の報酬への反映方法を決定することです。
① 評価サイクル・スケジュール
・年間で評価を何回実施するのか、その回数に応じて評価をするタイミングなどの細かいスケジュールを決める
年間の回数はできれば何回も実施できたほうが、現実的に難しい回数を設定しても実行できない
・おすすめは、年4回、難しい場合は年2回の評価回数で検討
・タイミングは、業界や会社で忙しい時期に評価時期が重なることはできるだけ避ける
・細かいスケジールというのは何月の何週で自己評価するといったかたちで設定
② 評価者と被評価者の組み合わせは
・誰が誰を評価するのかを決めます。基本的には日々の仕事を評価できる人は評価者となるように組み合わせを設定
③ 評価結果の報酬への反映方法
評価を上げるために一人一人が努力をして成果を残し、成長してもその結果が何にも反映されないと評価制度の効果を最大化させられません。
・基本的には評価制度の報酬への反映はセット
結果は月給と賞与どちらにも反映させられることがベスト
評価制度の失敗事例
1.複雑な仕組みで社員が理解できない
いろいろな仕組みを組み込んだ制度にしたくなることが多いですが、実は評価制度を作る際は、自社に合わせてマッチする仕組みを取捨選択していくことが非常に重要です。
あれもこれも含めてしまうと複雑になってしまいますので、結局運用する社員が仕組みを理解できず、評価制度の効果が発揮されにくいです。
2.評価制度の難易度が高すぎる
理想を追い求めすぎて、評価基準の難易度を高く設定しすぎる点に注意が必要です。
基準が難しすぎると、結局達成できないと社員が諦めてしまいます。
評価制度を作る時点での会社、社員のレベルに合わせて設定をしましょう。
会社と社員の成長に合わせて評価の難易度を上げていっても問題はありません。
3.運用が続かない
運用が続かない状態に陥ることは多いです。
評価制度自体は社員の育成やモチベーションアップを目的としているため、そもそもすぐ効果が出るものではありませんし、根気強く継続していく必要があります。
評価を運用する当事者である評価者にその事実を理解してもらう、その上で協力してもらうことが不可欠です。
評価者の協力があることで、運用で発生した問題を解決できるケースがほとんどだと思います。
評価制度を上手に導入する方法
①ブラッシュアップしていく前提でつくる
初めての導入
・種類:「期待成果・期待行動評価」
・まずは評価される、評価するということに慣れる
・評価結果は報酬に反映される仕組みにする
導入から2年後
・評価項目を増やす、難易度の上方修正を実施
・評価者を増やすのにも適したタイミング
2年後には追加でこの部分を、さらに2年後にはというように徐々に仕組みをブラッシュアップしてください。
②作る時点から評価者を巻き込む
・評価を運用する人=評価者
・作る時点から、評価者を巻き込むことにより運営前から仕組みや意図、背景、経営者の想いを理解してもらう
・報酬への反映は経営者や経営陣で決める
③導入時の説明を繰り返す
評価制度をスタートする前に必ず社員に制度を説明してください。
評価制度を作る過程に携わっている社員や経営者自身は作る過程で制度に対しての理解度が非常に深くなるのですが、それ以外の社員は初めて知ったり、聞くことになります。
当然、1回で理解をすることは難しいので、回数を重ねることが重要です。
①評価者向けに説明
②評価者含め全社員に説明
③役職別や職種別に説明(できれば1回当たり10人未満)
④評価後、評価者からのフィードバックで制度について説明
ここまでで色々な情報をお伝えしましたが、すべてが自社にマッチするというわけではありません。
企業の特徴や状況によって必要なことは変わります。
是非評価制度の導入をご検討の方や自社には何がマッチするのか、何を取り入れたらいいのかを検討ください。