人的資本経営ロードマップ:組織力強化と企業価値向上

人的資本経営が求められる時代
近年、企業を取り巻く環境は大きく変化しており、特に中小企業においては、人的資本経営の重要性が増しています。従来の人的資源を「コスト」として捉える考え方から、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出す経営への転換が求められています。これは、財務諸表の数字だけでなく、非財務指標である人的資本の活用が、企業の持続的な成長に不可欠であるという認識が広まっているためです。人的資本経営は、社内だけでなく社外からも注目度が高まり、中小・中堅企業においても今後の経営で必須と言えるでしょう。
人的資本経営とは
人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。これは、人材への投資を通じて企業の成長と個人の成長を両立させ、企業組織と個人のWin-Winの関係を築くことを目指します。従来の「人材資源経営」とは異なり、人的資本経営は、人材を単なるコストではなく、投資の対象と捉えます。成長は、人材投資によって促進されると考えられ、具体的には、(採用数 - 離職数)× 平均年収という計算式で表すこともできます。人的資本経営は、企業の持続的な成長に不可欠であり、特に中小企業においては、その重要性がますます高まっています。中小企業が人的資本経営を導入することで、人材の能力を最大限に引き出し、組織全体の生産性を向上させることが期待できます。また、サステナグロース人的資本経営企業は、投資が多くリターンも大きいとされ、旧時代人材資源経営企業は、投資もリターンも少ないと対比されています。
中小企業版人的資本経営
中小企業における人的資本経営では、以下の項目を重点的に考えるべきです。
●採用: 適切な人材を確保するための採用戦略が必要です。新卒採用人数、中途採用人数(正社員・パート)などの採用に関するKPIを設定し、年間採用投資額に対する効果を測定します。
○エントリー数、応募数、ユニーク接触数、選考移行率、内定承諾率などをモニタリングすることで、採用プロセスを改善できます。
●育成: 採用した人材を企業の戦力として育成するための研修制度やキャリアパスを整備する必要があります。3,5年目生産性、管理職昇進期間、年間教育研修投資額などをKPIとして設定し、育成の効果を測定します。
○研修/ロープレ実施数、イネーブルメントスコアなどをモニタリングすることで、育成プログラムの効果を評価できます。
●定着: 従業員が長く働き続けられるような環境を整備する必要があります。平均勤続年数、平均年収/昇給率、平均残業時間/年間休日、年間福利厚生投資額などをKPIとして設定し、従業員の満足度を向上させることが重要です。
○早期離職率、有給消化率、女性比率/管理職比率などをモニタリングすることで、従業員の定着状況を把握できます。
これらのKPIを定期的にモニタリングすることで、人的資本経営の効果を測定し、必要に応じて改善を行うことができます。また、組織SANBOスコアなどを活用し、目に見えない組織力を数値化することも有効です。従業員価値貢献(eLTV)人的資本経営の重要な目標となります。
人的資本経営の進め方
人的資本経営を効果的に進めるためには、以下のステップを踏むことが重要です。
1.現状分析: 企業の現状を詳細に分析し、人的資本に関する課題を明確にします。
○事業戦略の読み込み、すり合わせ、PMVV(Purpose, Mission, Vision, Value)ヒアリング、人的資本KPIの収集、組織SANBOの実施と分析を行います。
○貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、経営計画書(3~5年間)、現行のMVVに関する社内解説用資料、既存制度(人事評価制度、評価/賃金/処遇制度、研修プログラム、組織図)などの資料を共有し、確認します。
2.目標設定: 分析結果に基づき、人的資本経営における目標を設定します。
○10年後の組織ビジョンを明確にし、具体的な数値目標を設定することが重要です。
○人員計画、人財投資額を設定し、人員計画達成へ向けたKPIを設定します。
○研修項目や人事制度の方針の仮案を作成します。
3.施策実行: 目標達成のために、具体的な施策を実行します。
○採用、育成、定着、組織活性の各分野において、効果的な施策を計画し、実行することが重要です。
○採用(新卒、中途、キャリア、その他手法)、育成(研修内容の列挙、具体的目次)、定着(人事制度に紐づく各制度の方向性)、組織活性(SANBOスコア改善の手法)などについて具体的な施策を決定します。
4.効果測定と改善: 定期的に施策の効果を測定し、必要に応じて改善を行います。
○KPIのモニタリングや組織サーベイの結果を分析し、施策の改善に繋げます。
○月次での報告内容を経営陣や推進メンバーで共有し、修正点を列挙します。
人的資本経営ロードマップ
人的資本経営の推進には、ロードマップの策定が不可欠です。このロードマップは、企業の現状分析から始まり、目標設定、具体的な施策の実行、効果測定と改善までの一連の流れを示します。ロードマップは通常、3ヶ月間のプロジェクト実行期間と、1年以上の継続的なサポート期間で構成されます。
ロードマップの作成には、以下の要素が含まれます。
Phase 01: 事業計画及び組織体制の確認
MVVの解釈のすり合わせ、事業計画の確認、組織体制、人事制度のヒアリング、社内アンケート調査を行います。貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)の共有、経営計画書(3~5年間)の共有、人的資本KPIの入力、現行のMVV関する社内解説用資料の共有、既存制度の共有、組織図の共有などの資料を準備します。
Phase 02: MVV実現へ向けた目標指標と実行施策の設定
Phase01ですり合わせたMVVを実現するための、目標数値とその実行施策を具体化します。ロードマップ全体像の提案、3か年ごとの人材戦略テーマの明確化、組織SANBOの分析と目標設定、人員計画と人財投資額の設定、人員計画達成へ向けたKPIの設定、研修項目の仮案作成、人事制度の方針仮案を作成します 。
Phase 03: 人的資本経営ロードマップの報告
採用、育成、評価、組織それぞれでの目標・施策をまとめ、ロードマップという形で納品します。ロードマップ全体像に紐づく形での直近3年間の具体的施策とスケジュール、実行者の作成、各テーマ詳細施策の設定、人的資本経営推進の仮体制を決定します。
船井総研がお手伝いできること
船井総研は、人的資本経営に精通したコンサルタントが、貴社の状況を詳細に分析し、最適なロードマップを策定いたします。
船井総研では、以下のサポートを提供しています。
・人的資本経営ロードマップの策定支援: 企業の現状分析から目標設定、具体的な施策の実行までをサポートします。
・各テーマにおける月次支援: 採用、育成、定着、組織活性化などの各テーマについて、月次で具体的な支援を提供します。
・人的資本経営分科会への参加: 人材戦略に注力する会員様が定期的に集まり、最新事例や情報交換を行う場を提供します。
・モデル企業視察: 業界・ビジネスモデルのモデルとなる企業を直接訪問する機会を提供します。
・経営戦略セミナー: 時流と未来予測から、向こう3~5年を見越して「今すぐ取り組むべきこと」をお伝えする場として開催します。
・採用の安定に向けたサポート: 新卒採用や中途採用における継続的な採用成果を支援します。
・戦力化の安定に向けたサポート: 入社後研修、幹部前研修、幹部研修などを通じて、採用した人材の戦力化を支援します。
・組織活性に向けたサポート: PMVVに基づく企業らしさの発現を支援し、従業員が所属することに誇りを感じる組織づくりをサポートします。
・還元の安定に向けたサポート: 業績に連動した評価項目、公正な評価に基づく還元を実現する賃金制度の整備を支援します。
貴社の人的資本経営の推進に向けて、ぜひ一度、船井総研にご相談ください。無料の経営相談も受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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