事業を継承する際、あなたは「すべてを守らなければいけない」と思っていませんか?
多くの二代目経営者が、創業者が築いた歴史や信頼をすべて引き継ごうと葛藤し、その結果、新しい一歩を踏み出せないでいます。しかし、持続的に成長する企業になるためには、時代に合わせて変化し、進化していくことが不可欠です。兵庫ヤクルト販売の3代目社長、阿部恭大氏も同じように悩みながらも、変革への一歩を踏み出し、組織を大きく成長させています。
■継承者が直面する2つの問い
2023年に32歳という若さで兵庫ヤクルト販売の3代目社長に就任した阿部恭大氏は、就任当初、2つの大きな問いに直面しました。
・ヤクルト創業者の「代田イズム(予防医学の思想)」をどう現代に活かすのか?
・今の働き方や商品のお届け方法が、5年後、10年後も通用するのか?
彼は「大きく変える必要はないが、同じままでも続かない」という葛藤を抱えながら、変革の道を歩み始めました。多くの二代目経営者が直面するこの課題に対し、阿部社長は大胆なアプローチを選びました。それは、既存の強みを「再定義」ではなく、「再発見」することでした。
■新しい価値は“再発見”から生まれる
阿部社長は、ヤクルトレディの仕事は単に商品を届けるだけでなく、「地域の健康インフラ」としての役割を担っていることに気づきました。日々の見守りや声かけ、小さな変化への気づきは、すでに地域社会にとって欠かせない価値となっていたのです。
この再発見を起点に、ヤクルトレディが築いてきた信頼関係を活かし、新しい事業展開を始めました。例えば、コミュニティナースとの連携による見守り支援や、小中学校での健康教育、自治体との協定による健康イベントの実施などです。これは、既存資源に内在する価値を明確化し、事業として具現化するというアプローチです。
■変革の第一歩は“社長自らが動くこと”
阿部社長が変革を進める上で最も重要視したのは、「実践」でした。彼は自ら新しい事業や取り組みに挑戦し、その姿を社員に見せることで、変化の必要性を体感させました。
また、オフィス移転に際しても、内装デザインや経営理念を浸透させる空間づくりを陣頭指揮しました。会社のあり方を空間で表現することで、社員に「なぜ変わるのか」を問いかけ、変化への意識を高めていったのです。社長が先頭に立って動くことで、現場の社員も徐々に変化を受け入れ、自律的に行動するようになりました。
■強い組織の基盤は「社長直轄の戦略人事」
阿部社長の取り組みは、事業の成長だけでなく、組織力の強化にもつながっています。彼は「社長直轄で進める戦略人事」というアプローチを重視しました。これにより、経営方針と人材戦略が直接的に結びつき、経営者の想いや理念が組織全体に深く浸透しました。
「人材に本気で向き合う覚悟」を持った社長がリーダーシップを発揮することで、組織は劇的に変化します。
・幹部が自律的に動き、社長は戦略に専念できる。
・離職率が低下し、強固な組織基盤が確立する。
・人材育成のスピードが劇的に向上する。
・組織全体が自律的に成長する。
・優秀な人材が他社に奪われなくなる。
事業承継とは、単なる事業の引き継ぎではなく、価値を未来に合った形に変換し、“意味”としてつなぐことです。そのためには、社長自らが先頭に立って人材戦略を推進し、組織全体を動かす覚悟が不可欠です。
これからのさらなる成長に向け戦略人事の構築をぜひ検討してみてください。
それが、未来の経営者を育てる“最短ルート”です。