多機能型 自立訓練/就労移行で拓く 障がい福祉事業の未来

日本社会は、2008年の総人口をピークに、労働力人口も2019年から減少の一途をたどっています。
これは、今後避けて通れない社会問題です。
しかし、日本の人口減少とは対照的に、障がい者の総数は年々増え続けており、日本の総人口に占める障がい者の割合は9.3%を超え、その数は1,164.6万人に達しています。
この数字からも、現代の日本において障がい福祉サービスがいかに必要不可欠な事業であるかがわかります。
拡大する市場規模と求められる差別化
障がい福祉の市場規模は大きく拡大しており、過去15年間で約3倍にもなっています。具体的には、平成19年度の予算規模が5,380億円だったのに対し、令和4年度には1兆8,478億円にまで増加しました。
このことからも、障がい福祉サービス市場全体がまだまだ成長段階にあると言えるでしょう。
しかし、市場全体が拡大する一方で、一部のサービスでは徐々に飽和状態に陥りつつあるという側面もあります。
このような状況では、他の事業所との差別化や、社会のニーズに応じた新たな事業展開が求められます。
障がい者雇用の推進と社会参加の重要性
国は障がい者の社会参加を促進するため、障がい者雇用を強く後押ししています。
2024年4月からは法定雇用率が2.5%に引き上げられ、常用労働者43.5人以上の法人にはその達成が義務付けられました。
法定雇用率が未達成の場合、不足1人あたり月額5万円の負担金が発生するだけでなく、行政指導や勧告、企業名の公表といった対応が取られる可能性もあります。
これは企業にとって無視できない負担であり、障がい者を「労働者」として捉え、雇用への期待が高まっている現状を示しています。
こうした社会・経済情勢を踏まえると、障がい者を障がいの枠組みに留めるのではなく、一般就労を実現し、社会で自立した生活を送り、収入を得る力を獲得できるよう支援することの重要性が、これまでになく高まっていると言えるでしょう。
船井総研が示す「自立訓練(生活訓練)」と「就労移行支援」の可能性
弊社が分析した情報によると、このような時代の流れの中で、特に「自立訓練(生活訓練)」と「就労移行支援」という二つのサービスが大きな可能性を秘めています。
その参入・運営におけるポイントを解説し、なぜ今、これらの事業が重要なのか、その内容とメリットを詳しくご紹介します。
65歳未満の障がい者増加と就労支援のニーズ
現在の障がい者総数1,164.6万人のうち、65歳未満の割合が53.0%(約614.8万人)を占めていることに着目しています。
この「65歳未満人口」は、就労可能性が高い層として特に注目されています。
中でも、精神障がい者の65歳未満人口の増加が顕著であるというデータも示されており、こうした就労可能な障がい者が増加している背景もあり、一般就労を支援するサービスへの期待が高まっているのです。
しかし、全ての障がい者がすぐに一般企業で働くことができるわけではありません。
一般就労を希望していても、能力的に就労につながりにくいと感じている方も多くいらっしゃいます。
そこで重要になるのが、就労に必要な能力をトレーニングできる機能を持つサービス、すなわち自立訓練(生活訓練)と就労移行支援です。
各サービスの概要
自立訓練(生活訓練)
● 対象者
生活能力の維持・向上などのため、一定期間の訓練が必要な障がい者。
● サービス内容
自立した日常生活を送るために必要な訓練や、生活に関する相談、助言、その他の必要な支援を実施します。就労に関わる訓練も併せて実施される場合があります。
● 利用期間
原則として最長2年間。
● 現状
成年以上の障がい者の訓練を行う上で重要な位置づけですが、現時点ではまだ認知度が低い状況です。
就労移行支援
● 対象者
一般就労を希望し、訓練、実習、職場探しを通じて、就労が見込まれる障がい者。
● サービス内容
事業所内での作業などを通じた就労に必要な訓練、個々の適性に合った職場探し、そして就労後の職場定着のための支援までを幅広く実施します。
● 利用期間
原則として最長2年間。この期間内に一般就労を目指します。
組み合わせによる一般就労へのパス
自立訓練(生活訓練)と就労移行支援は、それぞれ異なる対象者と目的を持ちながらも、両サービスを組み合わせることで、最長4年間をかけて一般就労を目指すことが可能になります。
これは、すぐに就労が難しい方が段階を踏んで一般就労を目指す上で、非常に有効なパスとなります。
自立訓練(生活訓練)はライフサイクル理論において「導入期」、就労移行支援は「成長期~成熟期」に差し掛かる段階にあると分析しています。
ただし、就労移行支援も他の就労系サービスよりはまだ手前の段階にあるとも指摘されています。
導入期にある自立訓練(生活訓練)事業では「新規集客」が、成長期~成熟期にある就労移行支援では「専門化・ワンストップサービスの展開」が、それぞれ重要な経営課題となります。
新規参入の大きなメリット
この自立訓練(生活訓練)および就労移行支援事業に参入するメリットは多岐にわたります。
● 既存事業との連携
貴法人が既に放課後等デイサービス、就労継続支援A/B型、グループホーム、生活介護といった障がい福祉既存事業を運営されている場合、既存事業から自立訓練や就労移行支援へ利用者様をつなげることで、安定した利用者確保を図ることが可能です。
● ワンストップサービスの実現
事業間の連携を強化し、障がいのある方のライフステージに応じた一貫したサービス提供体制、すなわち一般就労までのワンストップサービスを実現できます。
例えば、学齢期の子どもを支援する放課後等デイサービスから、青年期の自立訓練(生活訓練)や就労準備型放課後等デイサービス(中高生向け)、そして就労移行支援へとスムーズに移行できる体制を構築することは、利用者様とそのご家族にとって大きな安心材料となるでしょう。
● 早期参入の優位性
これらの事業は、まだ認知度が低く、参入している法人が比較的少ない「今」が狙い目です。早期に参入し、地域におけるシェアを獲得することが非常に重要であり、そのためには支援学校、近隣の放課後等デイサービス、就労継続支援事業者など、他の関係機関からの利用者確保に向けた働きかけを早い段階から行うことがポイントとなります。
飽和状況に近づきつつあるサービスがある中で、これらの事業への参入は、貴法人の障がい福祉事業の差別化戦略として非常に有効な選択肢となり得ます。
事業を成功させるためのポイント
事業を成功させるためのポイントはいくつか挙げられます。
1. 支援内容の充実と就労先の確保
利用者様の訓練成果を発表する場や実習先、そして最も重要な就労先の確保が重要です。
過去実績のあるプログラムの導入や、就労先の確保に関するノウハウを活用することが成功への近道となります。
2. 集客ターゲットの明確化と高収益性
集客ターゲットを明確化することで、高収益性を実現できる可能性が高まります。
モデルケースとして月額売上330万円、粗利率30%前後を実現している事例もございます。
明確なターゲット設定と質の高い支援提供、そして効果的な集客活動は、持続可能な事業運営のために不可欠な障がい福祉事業の差別化戦略の一部となります。
社会的意義と事業の優位性
これらの事業はSDGsの目標、具体的には「貧困をなくそう」「すべての人に健康と福祉を」「働きがいも経済成長も」「人や国の不平等をなくそう」といった目標達成にも貢献できる、社会的意義の高い事業です。労働力人口の減少という社会問題、そして新型コロナウイルスの影響による雇用情勢の変化(解雇者数△5.5%、新規求人数△17.8%、就職件数△11.8%、就職率△6.6%といった具体的な数字も示されています)がある中で、障がい者が社会の一員として働きがいを持ち、経済的に自立できる環境を整備することは、社会全体の課題解決につながります。
自立訓練(生活訓練)および就労移行支援事業は、顧客/市場、業界/競合といった外部環境と、貴法人自身の立ち位置を考慮した場合、社会的意義が高く、かつ優位性の高い立ち位置にある事業であると結論付けています。
このような事業に取り組むことは、単に利益を追求するだけでなく、法人のブランディング向上にもつながり、今後の経営において非常に重要であると考えられます。
現状に留まることなく、常に社会のニーズと先を見据えた行動が不可欠であると、弊社は強調したいと考えております。
船井総研への経営相談について
自立訓練(生活訓練)および就労移行支援事業が持つ大きな可能性と、その市場性、成功のための要点を網羅的にご紹介いたしました。
しかし、実際にこれらの事業を立ち上げ、成功に導くためには、市場のさらなる深掘り分析、具体的な事業計画の策定、効果的な集客戦略、質の高い支援体制の構築、そして適切な法人の障がい福祉事業の差別化戦略が必要です。
船井総研は、障がい福祉分野における豊富なコンサルティング実績とノウハウを有しており、最新の市場分析に基づいて、貴法人に最適な事業戦略の立案から実行までをサポートいたします。
貴法人の既存事業とのシナジーを最大限に引き出し、地域における優位性を確立するための具体的な手法、安定した利用者確保と高収益性を両立させるためのターゲット設定と集客戦略、そして質の高い支援を提供し、利用者様の一般就労を確実にサポートするための体制づくりなど、個別の課題に応じた実践的なコンサルティングを提供いたします。
飽和しつつある市場環境の中で、自立訓練(生活訓練)や就労移行支援といった成長分野への参入は、貴法人の持続的な成長と社会貢献を両立させるための重要な一歩となり得ます。
この機会に、ぜひ船井総研の経営相談をご利用いただき、貴法人にとって最善の障がい福祉事業 差別化戦略を共に描いていきましょう。
ご関心をお持ちいただけましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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