M&Aの2つの種類がある
M&Aを実践するために準備しておくことということで、まずM&Aは二つの種類があります。
一つ目は事業承継型M&Aでございます。基本的にM&Aは売主様からスタートすることが多いのでこちらのように書かせていただいておりますが、事業承継型M&Aは後継者の方が不在な場合のM&Aになってきます。後継者がいないため誰かいい方がいてご縁があれば譲り受けてほしいというM&Aでございます。
二つ目が成長戦略型M&Aでございます。事業承継型M&Aも基本的な成長をするために行うことなのですが、成長戦略を描く中、自社単体で事業を進めていくよりも他社と資本提携をすることでより自社の成長スピードを加速していくことを目的としたM&Aで、戦略的にこの企業と一緒になりたいという思いでやっていくのが成長戦略型M&Aになります。
物流業界M&Aのメリット
この二つが大きく挙げられるのですが、譲受側、譲渡側のM&Aのメリットを見ていきたいと思います。
まずは譲渡企業のオーナー様のメリットを見ていきますが、一つ目は先ほど言ったように後継者がいない場合の事業承継型M&Aの場合は後継者問題を解決して会社を残すことができるメリットがございます。
二つ目は2024年問題の解決策の一つとして生産性向上策の意味でも有効になってきます。先ほどのカーシェアの資料にも出ておりましたが、所有台数が多くなればなるほど販管費が下がってきて営業利益率を上げることができる観点から言いますと、一つの生産性向上策として固定費減も含めて効果があるのではないかと思っています。あとは物流ネットワークの形成も生産性の向上に繋がってくると考えています。
三つ目は従業員さんの雇用が維持できる点でございます。従業員さんの雇用を維持するためにも企業を継続は当たり前ございますので、もし後継者がいなくて辞めたということになりますとそこにいた従業員をはじめ、荷主様などのステークホルダーの皆さんが不幸になってしまいますのでステークホルダーを維持していく、ハッピーにしていくためにM&Aを選ばれる方もいらっしゃいます。
四つ目は会社を継続、成長させるチャンスが広がる可能性が高いということでM&Aを譲渡することによって継続、成長のチャンスが広がっていくと思います。
五つ目で赤字にしているのがオーナー様のメリットでございますが、売却益や譲渡益を確保できることも一つのメリットでございます。親族内の事業承継の場合は親族の方に贈与や相続をすることで株を譲っていくことになりますので、オーナー様に直接的にお金が入ってくることはございません。もっと言うと譲り受ける側の承継する家族の方が贈与税や相続税などの税金を払ってしっかりと株を譲り受けていくことになります。一方で第三者にM&Aという形で売却するといったところは皆様も分かっていると思う話ですが、売却益や譲渡益というものを手に入れることができます。これは個人がオーナーで株を譲渡する場合は、その利益に対して20.35%程度が税金としてかかってくるのですが、ここは所得税や法人税といったものよりもはるかに安い税率になっておりますので売却をしたほうがいいということでその選択肢を選ばれる会社様もあります。
六つ目は個人保証などの保証が外れるといったところで、当然こういった色々な投資が必要な商売でございますので借入を起こして自分の個人保証を入れているといった経営者様が多いのではないかと思うのですが、M&Aで譲渡するとおのずとこの個人保証というものは外れてきますので、自分の肩の荷が下りたと言われるオーナー企業様、オーナー様、経営者様も多くいらっしゃるというのが実情でございます。これが譲渡企業様、オーナー様のメリットといったところでございます。
続きまして、譲り受ける側のメリットも少しおさらいしていきたいと思います。作業部門の背景にあることでお伝えしましたが、まず一つ目は事業の拡大ということで新たな荷主の確保ができたこと、あとは庸車から実車に転換することで利益率を上げることができたこともM&Aでシナジーを産むメリットの一つとして見られる企業様もあります。
二つ目は営業エリアの拡大でございます。こちらは今まで行けなかったところやネットワークが作れることによって生産性が上がっていくといったところも含めて営業エリアの拡大と書かせていただきますが、こういった拡大ができるということです。
三つ目は人材不足の解消ということで、人が採用できないよといったところを採用できるようになって、先ほど実例もありましたが派遣会社様をM&Aをすることによって倉庫の中で働いてもらう外国人の労働者を確保することができたという事例もありましたが、そういった人材不足の解消も一つ挙げられます。
四つ目は生産性の拡大でございますが、先ほども少し言いましたがDXやネットワークなどはできるというところでの生産数の拡大もありますし、あとは自社にない技術やノウハウを習得していくという五つ目のメリットもあるのではないかといったところでございます。
M&Aをするということは他社と一緒になるという事ですので自社と違うノウハウを持っている、自社と違う強みを持っているというのも一つの魅力となります。こういった技術やノウハウの獲得というのもM&Aのメリットの一つになってきます。
譲り受け企業様側の色々な企業文化もありますので同じ事業をやっているところが欲しいというところもあれば、エリアを拡大していきたいというところもあったり、新たな技術やノウハウを習得していきたいというところもあったり、色々な買い手様によって考えが違うといった中でさまざまなメリットがあるところでございます。
M&A実施時点で論点となりやすいポイント
次に見ていきたいのは物流業界でのM&Aの実施時点で論点になりやすいポイントを五つピックアップさせていただきました。
一つ目が未払残業代のリスクで、これが常に付きまとうのがこの業界なのかと我々も体感しております。実は残業代を払っているというお話でも適切な休憩時間が取られていない、待ち時間をカウントしていないといった簿外債務が潜んでいる可能性があることで未払残業代のリスクがあるところが一番の論点になります。
二つ目は賃金規定のチェックと書かせていただいていますが、実は賃金をきちんと払っているというお話でも計算してみると最低賃金を下回っていないかということもなくはないです。賃金規定上は正しくても計算してみると最低賃金を下回っているところもありますし、色々な事が起こったりしますのでそういうところもチェックしておきましょうということでございます。
そして三つ目は点呼実施の実態で、実施しているかどうかのチェックもしっかりするべきだというところでございます。M&Aの現場でも表面上ではしているという話をしていても実際は現場に行っているのにしていない、もしくは人がいないといったことになります。点呼を実施するためにさらにコストをかけないといけないという話が出てくるケースもありますので、この点呼実施の実態というのはしっかりと見ていかないといけないということで一つの論点となりやすい部分です。
四つ目は償却性ドライバーの有無ですが、こちらも償却性ドライバーはしっかりと正社員として雇用しているドライバーなのかを見ていかないと、実は適正な労働で給料を払っていないのではないかという話にもなってきます。社会保険はどうなのかといった話にもなってきますので、ここも一つの論点になってきます。この一点目から四点目は基本的に人や労働環境の問題が論点になりやすいというのが物流業界のM&Aの特徴でございます。
譲受側はこの辺りをチェックしないといけないですし、譲渡側もある程度綺麗にしていかないと実際のBSはすごく綺麗で凄く利益が出ているように見えるがこの企業に価値はないと言われてしまうケースもありますので、一番目から四番目という人の部分で改善できるところはしっかりと最初から改善していくことが大事になってくると思います。それでも2024年問題に対して自社で改善できないところがあるならば自分たちよりもさらに生産性の高い企業と一緒になることでより自社の生産性を上げていくためにM&Aを決断されるも一つの手段です。
五つ目はトラックの買い替え時期ですが、買い替え時期は企業様によって全然違います。5年で買い替える会社様もあれば、私たちのご支援させていただいている会社様は11年か12年で買い換えるので今は使えるところまでしっかり使う会社様もあります。そういったところがうちと一緒になったら5年になりますという話になって、うちと一緒だったら11年使うのだからさらに利益率は上がるといったことが論点になってきます。このようになってしまうので、五番目はどうしようもないですが、一番目から四番目ではしっかりと整備できるところは整備していこうというところを見ていただければと思いますし、譲受側になる場合はしっかりとデューデリジェンスをしていく中で何か問題がないかはチェックをして、値段を下げる下げないという話ではなくしっかりと理解したうえでM&Aを実行していくことだけは気をつけていただきたいです。
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