賃貸管理業界再編の時流
まず業界の話の中でやはり大きいのが人口世帯数貸家ということで、大きく言うと人口はもう止まりました。一番下にありますが、世帯数はほぼ頭打ちです。2023年、来年度にはもう減少に転じ、貸家も伸び数が非常に減ってきているというような状態があります。需要がだんだん頭打ちになってきているという状態です。
宅地建物取引業者さんということで、皆さんも色々感じてらっしゃるところはあると思いますが、下にありますが大臣免許は増加していますが知事免許は減少となっております。いわゆる、県をまたいで他店舗展開するような大型の管理戸数も多い会社さんは今回のテーマでもありますM&Aをしながら拡大をしようという傾向がありますが、個人経営で知事免許内で収まっている会社さんは減ってきているというような状態で、このコロナ禍で廃業も実は大きく増えています。こういった事情ということです。
管理戸数が例えばまだあまり多くなく社員数も多くない会社さんではなかなか業務を回せていないというような事情の中で、辞められるというケースも出ているかなと思います。
こちらが、管理戸数トップ30ということで、お馴染みのハウスメーカーさん、アパートメーカーさん等々出ております。私は毎年全国賃貸住宅新聞さんで見ていますが、見ていただくとこの2019、2020、2021とありますが、一番下に伸び数104%、105%、101%ということで実はこのコロナ禍の中で特に2020年から2021年は過去最低の伸び率となっております。101%、つまりほぼ伸びていないという状態でした。建築もあまり進んでいない、収益物件の新しい売買とかもなかなか進んでいないという状態があります。また、地域で管理をお願いする委託率が非常に上昇して競争激化している状態です。
コロナ禍はなかなかオーナーさんの訪問もできないということで、ステイしていたということもあると思いますが、なかなか今は伸びていません。ただ、これはコロナだけではなくて、市場が頭打ちになってきているのではないかということも考えられます。先程の貸家数が大きく増えているわけではありませんということです。
こちらは船井総研でも賃貸を扱っている研究会の業種の勉強会がありまして、その会員さんの粗利、利益の推移ということで出ております。私も長年見ておりますけども、このような年はなかなか無いと思います。一昨年にコロナが始まり、2020年、2021年のこの2年は同じような傾向がありますが、この賃貸管理の粗利が減るという事は、なかなか無かったのです。
約7割昨対増収、約3割昨対減少ということで、減のほうが37社、粗利増が72社と出ています。右側に増加企業72のうちと書いていますが、増えている会社、比較的粗利も戸数も多い会社は比率が高いです。下のオレンジ色の枠にありますが、比較的粗利額や管理戸数が少ない会社のほうが減少が増えています。これは2021年の秋口から冬にかけて取らせていただいたアンケートの結果です。やはり、影響が非常に出ているなという状態です。
そのような中で、実際にもう少し賃貸管理業、管理戸数、粗利、こういったものの中で分類をしてみます。見ていただくと一番左側、これは勉強会も3グループに分かれているということもありますが、粗利が3億で3千戸以上、1億から3億で千戸から3千戸、1億未満という会社さんで、店舗数はやはり結構比例しています。1千戸で1店舗などという話がよくありますが、最近は少し効率化を図って、店舗数が減っている形もあります。
ここからわかることを見ていただくと、まず圧倒的に目につくのは生産性です。1人当たりの売上総利益、粗利を社員数で割ったときに、やはり先程粗利の増減の傾向でもありましたが、ある程度の地域で一番店を頑張っている、規模もそれなりにある会社さんのほうが生産性が高いです。逆に1千戸未満の会社さんでは非常に低くなっています。800万代というと、もう少しで赤字ギリギリというような推移になるかなと思います。
全体平均でも1千万前後ということで決してこの業界は高いほうではないのですが、落ちにくいというのは言われていました。あと、見ていただくとパートさんの比率も、やはり規模が小さい会社さんほど、パートさんじゃないとなかなか雇いにくいということもありますが、パート比率43%ということで、半分近くパートさんがいるという傾向があります。下に書きましたが、やはり生産性には違いがあるなかで、最低限1億という線が大きいところだと思います。1千万を超えるか超えないか、あとパート比率がだんだん下がって、社員さんが大きくなると社員さんの比率がより上がって、理念や使命、ビジョンなどを落としやすくなっている傾向があります。
そして、生産性も規模が大きくなると効率経営ができるようになってきますので、生産性が上がるかなというような非常にわかりやすいと言うと語弊がありますが、傾向が出ています。
あとは、コロナによって今もウクライナ、ロシアの傾向なども踏まえて原価が上がっているというような傾向がありますが、ウッドショックもあって、非常に建築費が上がっています。あるいは、新築の施工も遅れているというような状態で、この辺りもプラスで入ってきています。
中には設備関係の商品の納期遅れといったこともコロナに入ってからも非常に出ていると思います。リフォーム、リノベーションもなかなか推進しにくい状態です。今日は決して、悪い意味で脅したいとかいうことではなくて、やはり本当に一昨年、去年とだいぶ業界の流れも変わってきたなと非常に強く感じる中で、実態を少し理解していただこうということで入れております。
あとは、デジタルシフトの動きということで、ついつい先週、押印がなくデジタル電子契約を進めていかれているというような状態があります。あるいはオンラインでの接客、契約といった動きも急加速しています。お店に行って、わざわざお部屋探しをするのではなくて、オンライン上、契約もそうですが、そのようなことが現実になってきているなと思います。
業界の大手FCさん、大手企業さんなどもこの繁忙期で一気にオンラインへの接客契約が増えたと言われている会社さんもありました。来店のうちの割合が非常に高くなっているというような事情もあるかと思います。
それと、業界の動向の中で忘れてはいけないのが、いわゆるストックです。築年数がどんどん古くなっていく中で、やはりこの賃貸管理業、賃貸管理会社さんにとってはこの古い物件をどう修繕をしながら価値を上げて、長く持たせていくか、家賃収入を上げていくか、この辺の腕の見せどころという感じです。真価と言いますか、この辺りが言われていることではあります。業界でもわかってはいるものの、なかなか進んでない会社さんも多いのではないかなと思います。この辺りも非常にシビアに見られるときだなと思います。
それから、空き家問題もあります。所有者の不明の土地、建物への民事基本法制の見直しということで、昨年度にありました。より所有者不明の土地に関する制度を厳しくしながら、下にありますが登記相続手続の簡略が義務化、相続に関する相談も増えているというような事情があります。
左下に「つぐなび」とありますが、これは士業の先生方、税理士さん、司法書士さん、弁護士さんなど船井総研にもお客様が多いですが、そういった方々で作っている相続相談サイトで、もう今年間5千件の相談も来ているということで、いよいよこういった相続に関する動き、空き家に対する動き、こういったことも業界では非常に重要なポイントになってきているなと思います。
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