2022年の時流
はじめにこの講座の中でお伝えしたいことは三点でして、一つ目が2022年の時流で、今年は何が起こっているのかというお話です。二つ目がその時流を踏まえたうえで取るべき5つの財務対策についてお話をします。そして三つ目が財務対策の実行力を上げる方法です。ここの三点でお話をさせていただきたいと思います。
まず2022年の時流なのですが、大きく七つ挙げさせていただいております。
①まだまだ収まらないコロナ
一つ目はコロナがまだまだ収まらず、感染者も非常に出ている状況でございますが、例えばそれによって集客イベントの中止や入場制限、これによる来店数の減少といったことにより集客が減っていてなかなか売り上げが戻らない、もしくは減っていってしまうことが引き続き起こるため、感染対策にかかる色々な消耗品によっては経費が増えてしまいます。
従業員に感染者が出たり、場合によってはお子様がいらっしゃる従業員のお子様が感染したことによって家にいないといけないということで休暇が出てしまいます。これにより人手不足になり、場合によっては店を閉めないといけないので一時的に休業しないといけないということが引き続き起こります。
あとは、コロナによってどうしても商談の延期や長期化というのが起きています。これにより売上や仕入れが減ってしまうことが起きています。まだまだ突発的な売り上げ急減や出費に対する備えが必要だということで、今年の2022年は気を付けないといけません。
②原油・素材価格の高騰
二つ目は「原油・素材価格の高騰」ということで、去年から原油や素材価格の高騰が続いていますが引き続き急速に上がっていっています。例えばウッドショックによる木材価格の高騰があって、会社によっては粗利率が3%~5%ほどダウンしてしまうこともありました。あとは半導体不足による仕入の価格高騰や仕入高減少ということも起きています。あとは原油価格です。これも高騰していて粗利率が3%から5%ぐらいダウンしてしまい、特に運送会社様には直接損害があったと思いますが、この利益率で非常に苦しいことが起こっているということです。そのため引き続き仕入れ価格が上がっても利益が出る収益力をつけていかないといけないし、あとは原材料が不足しても仕入れが出来る仕入力、これらを高める取り組みが必要です。
③将来人口の減少
そして三つ目が将来人口の減少で、マーケットの将来人口が減っていくことでマーケットがどんどん縮小していってしまうことが起きています。新規事業や新規マーケットへの参入をご検討されている企業様も多いと思いますので、そうするとどうしても投資が発生してきます。
④人手不足
四つ目が人手不足ということで、要は働き手としての人手不足です。これがあることで人件費や採用費、あと最近多いのは紹介手数料といったものがどんどん増加しています。
⑤業界の再編や収益構造の転換
⑥SDGs、カーポンニュートラル
⑦電子帳簿保存法の改正、インボイス制度の導入
あとの五つ目・六つ目・七つ目については少し新しい話でもあるのですが、業界の再編や収益構造の転換はこれらに対応していかないといけなかったり、あとはSDGs・カーボンニュートラル、これらも最近は企業でどのような取り組みをしているかに注目されています。あとは今年ですが、2022年に電子帳簿保存法の改正があったり、来年2023年にインボイス制度の導入がスタートしたり、こういったものに対しても対応していかないといけないですし、対応しようと思うと少なからず投資というものが発生してきます。
こういったものに2022年は取り組んでいかないといけないというのが皆様の置かれている状況だと思われます。
2022年の財務戦略方針
では、財務面でこれらに対応していくためにどういうことをやらないといけないのかという方針でいくと、まず一つ目がまさかへの備えを十分にしておくこと、二つ目が仕入力・投資力を高めること、三つ目が利益・資金の管理力です。これらを高めていくことが大事です。この三つが2022年の大きな財務戦略の方針として必要になってきています。
取るべき5つの財務対策
具体的に何をしたらいいのかというと、取るべき財務対策として五つを挙げております。
①引き続き現預金は厚めに持つ
まず一つ目が引き続き現預金は厚めに持つことです。持っておくべき現預金残高の目安として最低でも月商の二カ月分で、標準で月商の三カ月分ほど、超安全にいくのであれば今は月商の六カ月分ほど持っていってもいい状況だということです。そのためまだ月商の二カ月分の現預金を持てていないという方は、最低でもこの現預金の二カ月分を持つことを対策として行っていただく必要があります。
②戦略的に投資を進める
二つ目が戦略的に投資を進めることです。いわゆる投資のしすぎも良くないですし、投資のしなさすぎもよくないと、適切なスピードと適切な規模の投資はやっていかないとこの環境の変化が激しい中で対応できないということで、自己資本比率を最低10%は維持するということです。成長企業は大体20%~30%ほどを自己資本比率の目安としていることが多くて、そのため逆に自己資本比率が30%以上あるといった企業様は非常に投資余力がありますので、会社を伸ばすか今の環境に対応するための積極投資をぜひ検討していただきたいと思います。これが10%に満たない、10%は超えているが20%には足りないという企業様、そのうち20%に満たなくてこれからもまだまだ投資したいと積極的に投資する予定があるという企業様にはこの自己資本を賄う借入というものがありまして、それを資本性ローンといいます。この資本性ローンの導入を検討する必要があります。
③金融機関取引を見直す
三つ目が金融機関取引を見直すということです。恐らくコロナの借入によって借入額も増えた企業や金融機関との取引バランスが変化した企業も多いと思いますし、今のコロナの環境下においてはそろそろ返済もスタートする企業も増えてくる中で、経営方針や企業のステージに応じてちゃんと金融機関取引を最適化しましょうというお話です。目安としては年商3億円ぐらいまでであれば取引の金融関数数としては2~3行を、3億~10億ぐらいだと3~4行、10億~30億くらいだと6~8行ぐらいとしっかりとお付き合いをして必要な資金を調達できる金融機関取引を作っていきます。逆に30億を超えて100億を目指すフェーズになると強いメインバンクを作る必要がありますので、取引の金融機関を縮小して4行から6行ほどに絞って取引をしていくと、そのために金融機関取引を見直しましょう。
④経営管理力を高める
そして四つ目が経営管理力を高めることです。特に物の値段の動きが激しくて、正しく利益が出ているかをしっかり管理しないといけないですし、お金をどれくらい使えるかというのしっかり管理しながらでないとそもそも経営判断や投資判断といったことができなくなってきているのが今の状況ですし、それがさらに加速するということです。何をやらないといけないのかというと、勘頼みのアナログな経営管理からデータによるデジタルな経営管理に変えていくことで、もう少し具体的に言うとまずは月次決算を10日以内でやりましょうということです。月次決算をやっていない企業様は月次決算しないといけないですし、月次決算をやっているけど一か月かかっている企業様も多いと思うのでそれを10日以内でしっかり出せるようにしましょうということです。月次決算をやっていて10日以上かかっているという企業様は、最近はクラウド会計をはじめとするITツールの技術の発展が目覚ましいのでそういった会計周りのITツールを上手に活用して月次決算の早期化や経理の効率化を図ってください。あとは月次でもう一つやっていただきたいのが予実管理です。毎月実績しまってじゃあ今季は残りの毎月どれぐらいの売上利益で推移するのかを正しく管理して決算の着地を見える化します。こういった予実管理の仕組みがないという方も多いと思いますので、それは経営管理ツールの導入によってきちんと仕組みを整えていくことが対策としてあります。
⑤補助金・助成金を活用する
五つ目が補助金・助成金を活用することです。去年の12月20日に補正予算が成立しました。中小企業関連は合計で3兆8,594億円もの予算が計上されています。主な補助金でいきますと、事業再構築補助金、事業復活支援金、IT導入補助金、ものづくり補助金、持続化補助金、このあたりが非常に使いやすく、今は多くの中小企業が利用できる補助金が出ていますので、こういった補助金・助成金を上手に活用して傷んだ財務を補い、さらに伸ばすための投資を積極的に行っていただければと思います。
ということで取るべき五つの財務対策についてお話をさせていただきましたが、「対策はわかったけど実際にやりきれるか不安です」という経営者の方も多いと思います。なのでこういった財務対策の実行力を上げるために財務の基本スキルをしっかり身に付けましょう。
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