事業計画を「今こそ」作成すべき理由
コロナ禍が3年目に突入し、世間も徐々に落ち着いてきました。しかし、経営者の方々は、今後の市況に読みづらさを感じていらっしゃるのではないでしょうか。そのような中で事業計画があるとどのようなメリットがあるのでしょうか?
まず事業計画がある場合、今期の目標を見ながら経営をしていくことができるため、期中で軌道修正しやすくなり、目指すべき計算の着地へ数字を近づけることが可能です。先行きが読みづらい今、当初の見込みが外れ実際の決算時に想定と異なる着地となりうる可能性も十分にあり得ます。期中で進捗を確認し経営の舵取りをしていくために事業計画は重要な役割を果たします。
さらに事業計画があると、最適な投資のタイミング、投資額を可視化させることができます。自社の体力に合った投資で、企業成長を加速させることが可能なのです。また、資金繰り予測も立てやすくなるため、仕入れ等で現預金水準が低くなる前に金融機関に融資を打診し余裕を持った経営をすることができるのです。
金融機関からの融資を受けやすくなるという点でも、計画作成の必要性は高まっています。2019年12月に、金融機関内の教科書ともいえる金融検査マニュアルが廃止されました。以前は、決算書の定量面の数値を重視して、融資を決める傾向がありましたが、金融検査マニュアル廃止をきっかけに企業の数字では出せない定性面の未来的な部分を重視した融資をしていく傾向になったのです。
そして、新型コロナウイルスの影響から、「ゼロゼロ融資」が始まり、無利子・無担保でどのような業界の企業も借入ができるようになり、企業も調達がしやすい時期となりました。しかし、21年3月ごろから、コロナの融資制度も減少し、企業の業績が二極化するようになったため、金融機関は再び定量面重視の融資に舵を切りました。
このような流れから、融資を受けるためには、数字を持って自社の未来を説明する必要があるのです。数字で説明できる=事業計画に繋がるため、金融機関からも事業計画は求められるようになってきています。
〇事業計画書の作成方法 ~P/L計画編~
事業計画としてP/L計画だけを作成している企業もありますが、正しい事業計画を作成するためにはそれに加えて、B/S計画、キャッシュフロー計画を連動させる必要があります。
一般的にはP/L計画、B/S計画、そしてキャッシュフロー計画というような順序で作成します。まず、今回はP/L計画の作成のポイントについて紹介します。
1. 月次毎の売上、原価、費用、営業外損益の計画を作成
事業計画を年次計画だけ立てているという方も多いのではないでしょうか。年間計画は、年間ごとの数値目標とその進捗を確認することができますが、期中の数値目標が把握しづらいという問題があります。しかし、月次計画にまで落とし込むことで、進捗かつ試算表を用いた計画対比の実績を毎月確認することが可能になり、素早い経営判断に繋げられ、期中での軌道修正ができます。
例えば、1月の売上が上がった場合、なぜ上がったのか、2月以降もその売上を上げるためにはどのような取り組みを行えばよいのか、売上が減少した場合は、なぜ減少したのかという要因分析をした上で、次の対策に落とし込むことができるのです。
2. 販管費は、月次推移表を参考に固変分解を行う
販管費の中には固定費と変動費が混在しているため、固変分解によって、適切な販管費の設定が可能になります。固定費は売上の増減にかかわらず一定にかかる経費、変動費は売上に比例して増減するものです。
固定費は、従業員給与、役員報酬、賞与、法定福利費、通信交通費、地代家賃などが主に挙げられます。ただ、業種によって固定費・変動費の考え方が異なる場合もありますので、自社の業界に適した形で販管費計画を立てていただければと思います。
3. 売上対比の割合を見える化する
売上対比を見える化させることで、計画作成時に異常値が見つけやすく、業界平均と比較しやすくなります。
全ての項目に対して、売上対比%で記載することで、どの部分に異常値があるか簡単に把握することが可能です。また、業界の平均と比較しやすいというところも1つのメリットです。業界平均の人件費・地代家賃等を比較して自社が多いのか少ないのか把握することができます。
事業計画の作成方法 ~B/S計画編~
続いて、B/S計画作成編と題しまして計画作成のポイントについてです。
①B/Sは大項目で捉える
まず、自社にとって重要な勘定科目を洗い出します。どの項目が動くと状況が変わるのかを見極めることで、B/Sの大きな流れを掴むことができます。
一般的には、現預金や在庫、買掛金、短期借入金、長期借入金などが重要な項目となりますが、業界によって注目すべき項目は変わるため、自社の業種ではどこが重要なのか見極める必要があります。
例えば、製造業では、在庫数が増えるとその分の資産が膨張してB/Sが動くため、在庫が重要になり、物流業では償却対象資産が重視されます。
②P/Lと連動させる減価償却費、当期利益、成長率
「P/LとB/Sを連動させる」といっても、何から連動させれば良いか分からないという方も多いのではないでしょうか。P/Lと最低限連動させたい項目は、減価償却費、当期利益、成長率です。
減価償却費は、P/L上の減価償却費を前期償却対象資産から差し引いた後に、新規固定資産分の投資分を記入します。新規固定資産の投資分は、今年新たに固定資産を買う予定がある企業はその分を足します。また、月次計画を立てるため、毎月分を貯蓄の積み上げして、調整をします。
当期純利益は、P/L上の当期利益を純資産の繰越利益剰余金へ毎月積み上げて調整していきます。毎月の利益は、少しずつ繰越利益剰余金に積み上げていく形で連動させていきます。
成長率は、P/L上の売上成長率を昨年の売掛金、買掛金に掛けて算出し、売掛金や買掛金は業績に直接連動するため、売上成長率をそのまま掛けて反映します。
③借入は返済計画より引用する
短期借入金には、手形貸付と当座貸越の2種類があります。手形貸付は、契約書上の返済日をそのまま反映し、当座貸越は、返済計画があるため、返済計画に則った数字を該当月に反映します。
長期借入金は、毎月一定額返済されるため、毎月の返済分を前月の借入金から差し引くことで今月の短期借入金を算出します。また、新規の投資分の融資がある場合は、短期・長期のいずれかの適切な方に反映させます。
ポイントは、利息を含まずに計画を立てて、元金返済のみB/Sの借入に反映させることです。
④現預金は最後に調整する
続いて現預金以外の項目を作成後、貸借が一致するように現預金を調整します。
現預金調整後に、その他の項目を調整し、現預金の額を再度調整します。現預金調整後に長期借入金の返済の反映を忘れて、後から反映させた場合、貸借が不一致してしまう場合があるため、間違った計画で現預金を見ていると、必要な資金調達ができないので注意が必要です。
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