EC事業において広告運用は売上を左右する重要な要素です。複雑化するWebマーケティングの世界で、いかに効率的かつ効果的に成果を上げていくか、多くの中小企業経営者が頭を悩ませていることでしょう。今回は、EC広告で成果を上げるための4つの要素に焦点を当て、AIや動画の活用、そして人間が果たすべき役割について解説します。
1. Google & Meta広告のフル活用とAIによるパターン構築術
現在のEC事業において、Google広告とMeta広告は直接購入者に届く代表的な獲得型広告として非常に重要です。
GoogleのP-MAX広告:あらゆるデータを元にAIが広告配信を最適化してくれるサービスです。これまで広告運用担当者が行っていた煩雑なオペレーションをAIが代替し、成果の最大化(パフォーマンスマックス)を目指します。
Meta広告(ASCキャンペーンなど):日本で特に利用者の多いInstagramをはじめとするMetaのプラットフォームでも、AIを活用した広告運用が可能です。自社のECカート機能と連動させ、機械学習による最適化を行うことで、効果的な広告配信が期待できます。ユーザーがどんなものを好み、何を見ているかのデータに基づき、どこに、誰に広告を出すかをAIが自動的にコントロールします。
しかし、AIに全てを「任せきり」にするのは禁物です。運用担当者は、AIが正しく動いているかを監視し、さらにデータから読み取れる広告以外の施策を立案するといった発展的な役割を担う必要があります。AIと人間が協働することで、テストマーケティングのサイクルを高速化し、より多くのテストを繰り返すことが可能になります。
2. 動画で見せるROASアップのテクニック
ROAS(Return On Ad Spend)とは、広告費用に対してどれだけの売上が上がったかを示す費用対効果の指標です。例えば、100万円の広告費で1000万円の売上があれば、ROASは1000%となります。このROASを向上させる上で、動画の活用が今、大変注目されています。
かつては何かを探す際にGoogle検索が主流でしたが、現代ではInstagram、YouTube、TikTokといった動画プラットフォームで動画を見ながら「これが欲しい」と感じたり、そもそも欲しいものを動画で調べるユーザーが増えています。
自社の商品やサービスを動画で訴求し、適切に広告配信することで、費用対効果の向上が見られます。動画広告は、単に「何人の人に見てもらったか」という評価指標だけでなく、EC・Web・SNS広告においてはその成果がROASとしてもしっかりと返ってくる点がメリットです。
3. 正しい数字の見方が勝負を決める効果的なPDCAと現状分析
AIの活用によりテストマーケティングのスピードが加速する中で、広告担当者やマーケティング担当者には効果的なPDCAサイクルを回す役割が求められます。
その際、広告の管理画面に表示されている数字だけでなく、より広範な視点を持つことが重要です。
ウェブサイト全体の数字:Googleアナリティクス4などのウェブ分析ツールを用いて、広告から来た顧客とそれ以外のチャネルから来た顧客がどのような行動を取り、購入に至っているかを詳細に分析する必要があります。
ビジネス全体の状況:ウェブサイトだけでなく、ビジネス全体の数字も把握し、広告施策が全体最適に貢献しているかを常に確認することが肝要です。
部分最適に陥らず、ウェブサイト全体、ひいては経営全体の視点から数字を読み解き、広告戦略に反映させることで、正しい数字の見方による差別化が生まれます。
4. 人間とAIの究極の役割分担
現代のビジネスにおいて、AIのフル活用は不可欠な時代となりました。キャッチコピーのアイデア出しや、PDCAサイクルの高速化、テスト数の増加など、AIを上手に活用することで、これまで人間が担っていた役割をより高付加価値なものに変えることができます。
しかし、最終的な責任を持ち、意思決定を行うのは人間の役割です。AIが提示する選択肢の中から最良のものを選び、ビジネスの方向性を決断するのは人間です。そして、このAIやテクノロジーを適切に使いこなすためのリテラシーやスキルこそが、人間が持つべき重要な能力であり、競争優位性をもたらす差別化のポイントとなります。
EC事業の成功は、いかに細部にこだわり、継続的に改善を行えるかにかかっています。AIと動画という強力なツールを最大限に活用しつつ、人間の戦略的思考と判断力を組み合わせることで、持続的な成長を実現できるでしょう。
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