業界の現状について
近年、中小企業や小規模事業者においては、労働人口の減少や人件費の高騰が深刻な経営課題となっています。このような状況下において、省力化投資による生産性の向上や業務効率化へのニーズが急速に高まっています。政府もこれらの課題に対応するため、省力化投資補助金をはじめとする各種支援策を打ち出しており、省力化を推進するための企業の積極的な設備投資を後押しする動きが活発化しています。汎用製品はもちろん、デジタル技術等を活用した会社毎に事業に適合させるオーダーメイドの設備やシステムの導入は、人手不足の解消と高付加価値化の両立を実現する手段として注目されており、その動向が注視されています。
省力化投資補助金(一般型)に関する解説
2025年3月末に一次公募が申請締切となり、2025年5月下旬に二次公募の申請締切が予定されている省力化投資補助金(一般型)は、2024年に新設されたものづくり補助金の「省力化(オーダーメイド)枠」とほぼ同様の内容で引き継がれました。人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資等を支援するものです。従来の省力化投資補助金が「カタログ注文型」とされ、新たに「一般型」が追加されることになりました。
ものづくり補助金「省力化(オーダーメイド)枠」とは
では、省力化投資補助金(一般型)の前身である、ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠について詳しく見ていきたいと思います。こちらは、人手不足の解消を目指し、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入などを支援する申請枠です。ここでいう「デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)」とは、ICTやIoT、AI、ロボット、センサーなどを活用し、単一もしくは複数の生産工程を自動化するために、外部のシステムインテグレータ(SIer)との連携などを通じて、事業者の個々の業務に応じて専用で設計された機械装置やシステム(ロボットシステム等)のことです。重要な点として、デジタル技術等を活用せず、単に機械装置等を導入する事業は、本事業の対象とはなりません。
補助上限額と補助率
省力化投資補助金(一般型)の補助上限額と補助率は以下の通りです。従業員規模に応じて補助上限額と補助率が異なり、以下の通りです。
従業員規模 | 補助上限額(通常) | 補助上限額(大幅賃上げ特例) | 補助率(通常) | 補助率(小規模・再生) |
5人以下 | 750万円 | 1,000万円 | 1/2(1,500万円まで)、1/3(超過分) | 2/3(1,500万円まで)、1/3(超過分) |
6~20人 | 1,500万円 | 2,000万円 | 1/2 | - |
21~50人 | 3,000万円 | 4,000万円 | 1/2 | - |
51~100人 | 5,000万円 | 6,500万円 | 1/2 | - |
101人以上 | 8,000万円 | 1億円 | 1/2 | - |
(注)括弧内は大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例を適用した場合の金額です。
大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例を適用するには、
・事業計画期間において、基本要件である給与支給総額を年平均成長率2.0%以上増加さ せることに加え、更に年平均成長率4.0%以上(合計で年平均成長率6.0%以上)増加 させること。
・事業計画期間において、事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い 賃金)を事業実施都道府県における最低賃金+50円以上の水準とすること。
・応募時に、上記2点の達成に向けた具体的かつ詳細な事業計画書(大幅な賃上 げに取り組むための事業計画書)を提出すること。
が求められます。
これらの要件を未達の場合、補助金の上乗せ分について返還を求められます。
補助事業の要件
省力化投資補助金(一般型)は、以下の全ての要件に該当する事業計画を策定する必要があります。
1.労働生産性の向上:事業計画期間において毎年、申請時と比較して労働生産性を年 平均成長率(CAGR)4.0%以上向上させる事業計画を策定し、採択を受けた場合はそれに取り組まなければなりません。
2.1人当たり給与支給総額又は給与支給総額の増加:1人当たり給与支給総額※1の年平均成長率が事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間(2019年度を基準と し、2020年度~2024年度の5年間を指す。)の年平均成長率(以下「基準率」という。)以上、又は給与支給総額 ※2の年平均成長率を+2.0%以上増加させる事業計画を策定し、採択を受けた場合は自身が設定した目標値を超え る事業に取り組まなければなりません。
3.最低賃金の引き上げ:事業計画期間において、事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、毎年、事業実施 都道府県における最低賃金+30円以上の水準とすることが必要です。
4.次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の公表:従業員数21名以上の場合、交付申請時までに、「両立支援のひろば」に次世代育成支援対策推進法に基づく一般 事業主行動計画を公表することが必要です。
省力化(オーダーメイド)枠の採択率
ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠の過去の公募における採択率は、1次~16次の平均が49.8%であったのに対し、17次では29.4%、18次では34.1%と低くなっています。これは、審査が大幅に厳格化したことが推察されます。省力化投資補助金(一般型)においても、同様に厳しい審査となる可能性を考慮し、入念な準備を行う必要があります。採択されるためには、補助事業がポイントを押さえているかの確認と、その内容が伝わりやすい申請資料を作成することが重要です。
省力化(オーダーメイド)枠の活用事例
ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠では、自動化による生産性向上事例が多く見られます。採択された事業計画書のテキストマイニング分析によると、「システム」というキーワードが「ロボット」よりも多く出現しており、システム導入による省力化の事例も多いことが示唆されます。17次公募においては、採択案件の約8割が製造業であり、品質管理、検査、自動化に省力化投資が活用されています。
具体的な活用事例としては、製造から出荷前工程の自動化、特別仕様のバリ取り装置の導入、AI・IoT技術を活用した自動組立充填機の導入、最新技術のCNC旋盤による手作業の自動化、生産管理システムの導入、AIカメラを活用した画像解析による検査業務の効率化、ロボットシステムを活用した24時間無人加工ラインの構築などが挙げられています。
製造業以外にも、運送業における自社倉庫内の自動化、荷物位置の見える化による物流DX、オーダーメイド設備・システムを活用した商品出荷プロセスの自動化、タンカーの運航管理業務効率化、自動仕分けマシンの導入。
印刷業における印刷不良の予防・検査体制の完全自動化、アルミ罐用印版製作への挑戦、印刷工程の自動化とAI管理の導入。
建設業・不動産業における廃石膏ボード処理自動化ラインの構築、自動分析機能導入による不動産仲介業の戦略立案省力化、清掃・調査・修繕サービスのデジタルプラットフォームの整備、管理サービス事業拡大に向けたシステム投資。
サービス業における業務用マットクリーニング業務の自動化ライン新設計画、大規模言語モデルAIを活用した特許出願資料作成システムの構築、クレジット明細作成の自動化、AIクローリングによる顧客別営業活動支援システムの構築、革新的調査機械の導入。
宿泊・飲食業における回転寿司店舗オペレーションの革新、地域密着を最大化する宿泊施設の展開。
卸売業・小売業における縦型センサーとフリートレー選別機の導入による選果の省力化、AIを活用した骨材表面水率自動判断システムの構築、仮設足場板高圧洗浄装置の導入。
情報通信業における業務効率化とコスト削減を目的とした新アノテーションツールの開発、生成AIを活用した医療事務代行サービス業務の自動化計画、メール仕分システムの導入など。
多岐にわたる業種で省力化投資補助金の前身であるものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠が活用されています。
これらの事例から、省力化投資補助金(一般型)においても、カスタマイズされたデジタル技術搭載のハードウェアやシステムの導入が採択される傾向にあると考えられます。
採択率を高めるためのポイント
省力化投資補助金(一般型)の採択率を高めるためには、公募要領から読み取れる情報を十分に理解し、準備を進めることが重要です。特に以下の点に注意する必要があります。
•必須要件の確認と遵守
•事業計画書に記載すべき事項の網羅
•審査項目(適格性、技術面、計画面、政策面、大幅な賃上げ妥当性、加点項目)への対応
•口頭審査(実施される場合)への対策(適格性、革新性、優位性、実現可能性など)
公募要領には、採択されるための重要なヒントが多数含まれています。自社の省力化投資計画がこれらのポイントを満たしているかを入念に確認することが不可欠です。
まとめ
省力化投資補助金(一般型)は省力化投資を促進するものです。申請にあたっては、求められる要件を確実にクリアできるよう、社内体制の確認と準備を早めに進めることが重要です。特に、省力化を検討している場合は、専門家に可能な限り早く相談することを推奨します。事前に達成すべき要件や各種準備を余裕をもって進めることで、質の高い申請資料作成が可能となり、採択の実現可能性も高まります。
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