近年、市場の縮小や環境変化が激しくなる中で、単一事業での継続的な成長が困難となり、複数の子会社を持つグループ経営体制へ移行する企業が増えています。
グループ経営とは、親会社が複数の子会社・関連会社を一つの組織体として捉え、グループ全体の視点から戦略を立案し、経営資源を最適に配分することです。この取り組みにおいて、その成功の鍵を握るのが、グループ本部組織の機能強化です。
1. グループ本部組織が担うべき役割
グループ経営への移行段階にある企業や、M&Aによりグループ会社が増えた企業にとって、グループ本部の役割が明確になっていないことは大きな課題です。グループの成長を加速させる出発点として、親会社は事業執行とグループ戦略推進の役割を明確に区別し、グループ本部組織の整備と合わせて、以下の戦略機能を強化する必要があります。
特に、親会社は事業部門(事業会社)を分離することで、個々の事業執行状況を評価し、グループ全体の成長戦略を推進する役割を担います。この戦略推進を担う中核こそがグループ本部なのです。
グループ本部が担うべき主要機能は、以下の5つに集約されます。
1. 事業開発の推進
2. 事業ポートフォリオマネジメント
3. 経営人材の育成
4. ガバナンス機能強化
5. ブランディング構築
2. グループ本部機能強化の具体的な課題
しかし、多くの中堅・中小企業が、グループ本部を機能させるうえで、様々な課題に直面しています。
例えば、「経営企画や管理部門の人員が不足している」ため、本来グループ本部が行うべき企画業務に集中できず、日常業務に追われてしまうケースです。また、経営者が一人で重要な意思決定を担い、グループ本部による戦略的な議論が形骸化している企業も少なくありません。
船井総研がご支援するグループ本部機能の設計において、特に重要視されるのが「新規事業開発」と「経営人材の育成」です。これらは成果創出までのリードタイムが長いため、グループ本部が早期に着手し、仕組み化することが求められます。
3. グループ本部における主要機能の強化
グループ本部が機能することで、グループ全体の資源の最適化を図る事業評価体制(事業ポートフォリオマネジメント)が構築できます。成長させる事業、撤退する事業、新規事業などを客観的に評価することは、グループ本部の重要な役割の一つです。
また、グループ本部はリスクを最小化しながら成長を両立させる体制、すなわちガバナンス機能の強化も担います。ガバナンスを強化しすぎると意思決定が難しくなりますが、緩すぎると不正リスクが高まるため、グループ本部はバランスの取れた体制を構築する必要があります。具体的には、長期的な経営方針の浸透や、意思決定権限の明確化、そして経営レビュー体制の構築をグループ本部主導で行います。
さらに、次世代の経営幹部育成(サクセッションプラン)が進んでいない企業に対して、グループ本部人材や事業会社経営者など、人材プールごとに育成目的・内容を決定する枠組みづくりもグループ本部が担うべき業務です。
4. 理想的なグループ本部設計に向けて
グループの成長ステージに合わせたグループ本部組織のあるべき姿を設計するためには、まず親会社が保有する機能と事業会社固有の業務を明確に区分けすることから始まります。
当社では、経験豊富なグループ経営の専門コンサルタントが、戦略立案から、グループ本部機能・組織設計、実行計画の策定、モニタリング機能整備まで、一気通貫でサポートいたします。
特に、グループ本部の設計においては、トップダウン、ボトムアップ両面からのアプローチで合意形成を重視し、継続利用できる仕組みを貴社のグループ本部にインストールすることを目指します。
グループ本部の機能強化でお悩みでしたら、ぜひ一度ご相談ください。
執筆者: 事業イノベーション支援部 ディレクター 佐野 暢彦 さの のぶひこ |