近年、経済産業省を中心に「中堅企業政策」が強化されています。「中堅企業」とは、従業員2,000人以下で中小企業の定義に当たらない会社をいうとされています。
特に地方都市圏では、中堅企業が地域に与える影響力が高いです。
したがって、中堅企業振興策が日本全体の経済発展の底上げに寄与します。
中堅企業は上場(IPO)を目指すべきか
筆者の意見ですが、中堅企業はすべからく上場(IPO)を目指すべし、と考えます。
上場すると信用と知名度が上がる、人材採用が容易になる、後継者確保に有利などメリットがあります。
一方で、一般株主などステークホルダー対応、上場コスト、短期業績が注目され長期戦略に則した施策を取りづらいなどデメリットが言われております。
今回は細かくメリット、デメリットを説明しませんが、上場を薦める背景として「ガバナンスの強化」について説明させていただきたいと考えます。
上場準備がもたらす「ガバナンス強化」のメリット
「ガバナンス」という用語には、使用する場面や論者によっていろいろな意味が含まれる場合がありますが、端的にいうと、「会社が一定のルールを定めて、会社と経営陣が合理的、客観的に業務遂行できるための仕組みづくり」といった意味です。
主に、「行き当たりばったり」、「数字より勘」、「非合理的」、「公私混同」といった概念とは逆の経営を目指すことが主眼にあります。
上場企業では、一般の投資家が株式を購入することになりますので、投資家保護のため、「ガバナンス強化」が強く求められています。
一定の社内体制が整っていない企業は、そもそも上場できないか、上場廃止に追い込まれます。
したがって、上場を目指す会社には、ガバナンス強化のための仕組みづくりが求められます。
これまでIPO支援を行う過程で、多くの企業が上場準備を通じて意識の変化や社内体制が強化されるところを見てきました。
中堅企業に上場を薦める理由は、上場準備を通じて社内体制が強化されることにあります。
地域に大きな影響を及ぼす中堅企業こそ、ガバナンスを強化すべきです。
成長支援政策「特定中堅企業者」とガバナンス強化の共通点
経済産業省では、中堅企業のうち特に成長意欲の高い企業を「特定中堅企業者」として認定し、税制措置等の優遇施策を導入して成長を支援する取組みを行っています。
(出典:2024年9月 経済産業省「特定中堅企業者の要件及び確認フロー」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chuuken/tokutei-chuuken_overview.pdf)
「特定中堅企業者」の認定を受けるためには「十分な経営能力」があることが必要です。
十分な経営能力があることの認定には、「成長戦略」と「事業計画」があり、それを実行するための「管理体制」と「コーポレートガバナンス強化の取組」が必要とされています。
この「特定中堅企業者」認定と、上場準備の過程で整えなければならない事項とは共通している部分が多くあります(下記参照)。
(出典:前記「特定中堅企業者の要件及び確認フロー」をもとに船井総研にて作成)
体制整備には、多くのコストと手間がかかりますが、次のような効果が期待できます。
いずれも、地域のかなめである中堅企業にとって、大変重要なものと言えます。
上場準備をしたとしても上場できない企業がたくさんあるのが事実です。また、上場にはデメリットもあるため、全部の中堅企業が上場を目指さなければならないというわけではありません。
しかしながら、上記のようなメリットのあるガバナンス強化は、地域経済のかなめである中堅企業にとって、また、後継者を確保して永続的に発展可能な企業を目指す場合には、不可欠なものといえます。
中堅企業や中堅企業を目指す企業の経営者の皆様におかれましては、上場を目指すことやガバナンス強化について、ぜひご検討いただきたいと考えております。
執筆者: IPO支援部 マネージャー 前田 宣彦 まえだ のぶひこ |