迫りくるDXプロダクトの再編
いま多くの日本企業は、「システムコストの圧縮」という命題に直面しています。低成長・人口減少といった経済環境の悪化を受け、企業は投資対効果をより重視せざるを得ず、海外に比べて導入しているアプリ数が圧倒的に少ないという現実があります。
実際、ある調査によれば欧米企業は一社あたり平均93個ものアプリを導入しているのに対し、日本企業はわずか35個にとどまっています。これはすなわち「コストを抑えつつ生産性を高めること」が国内DXの最優先課題となっている証左です。
そのため、世の中のデジタルツールは毎年のように値上げされ続けているものの、日本企業ではランニングコストをより厳格に精査する時代に突入しています。加えて、アメリカを中心とするIT市場では、エンジニア人件費やインフラコストが高騰し、生成AIを支える電力やGPUの供給不足も重なって、各社がさらなる値上げを余儀なくされています。こうした国際的な競争環境は、日本市場にも直接的な影響を及ぼします。
2~3年後に考えうるシナリオ
では、今後2~3年で日本のDX環境はどのように変化していくのでしょうか。以下の4つのシナリオが想定されます。
(1)高額SaaSの停滞
海外製の高価格帯ツールは、今後も値上げが進むと予測されます。しかし、もともとコスト面で導入に苦しむ企業が多く、価格対効果が見合わず、さらに多くの企業が解約や利用縮小を検討する流れが強まるでしょう。
(2)国内SaaSの脱落
国内ベンダーも値上げを続けていますが、機能不足に加えて価格競争力を維持できず、結果的に多くのツールが市場から撤退していくことが予想されます。
(3)Microsoft・Googleの独占構造
一方で、MicrosoftやGoogleは圧倒的な投資資金を背景に、Google WorkspaceやMicrosoft 365を「必要最低限のSaaS」として網羅的に提供しています。さらにAIを標準搭載し、フリーミアムモデルを維持しながらも存在感を増し続けています。こうした構造により、2~3年後には両社の市場支配が一層現実味を帯びると考えられます。
(4)格安海外SaaSの台頭
人事労務、会計、業務アプリといった“必需品システム”の領域では、インドや新興国発の格安かつ高機能なSaaSが台頭しています。グローバル基準の機能を持ちながらも圧倒的に低価格で、日本市場を急速に浸食していく可能性があります。
経営者がとるべき戦略
こうした環境変化を前に、経営者はどのように舵を切るべきでしょうか。次の3つの観点から整理します。
① AIの積極活用と選択的導入
まずは、GoogleやMicrosoftが提供する生成AIやグループウェアを前提に業務効率化を徹底することです。AIを活用できる領域から段階的に導入を進めることで、同じ人員でも生産性を大幅に高め、システム投資のROIを最大化できます。ただし、全社員に一律で標準装備するのではなく、利用部門や用途を見極めて厳選導入することがコスト抑制のカギとなります。
② 値上げが続くシステムの段階的置き換え
毎年のように値上げが繰り返されるシステムは契約を見直し、順次コストパフォーマンスに優れたSaaSへ移行することが重要です。例えば、インド発のZohoは中堅規模ながら世界基準の機能と低価格を両立しており、投資効率を確保しやすい選択肢です。
Zohoは顧客管理やメール配信、チャットボットにとどまらず、ワード・エクセル・パワーポイントに相当するオフィスツール、オンラインストレージ、Web会議システムまで幅広く提供しており、競合製品の半分以下のコストで導入可能です。
③グランドデザインの策定
コストを抑えつつAIを活用するには、システムを抜本的に見直す必要があります。そのためには、企業全体のDX戦略を「グランドデザイン」として描くことが不可欠です。部門ごとにシステムが乱立すれば、むしろ非効率化が進みます。経営者自らが主体的に「どの領域にどのシステムを導入するか」を設計し、ROIを最大化することが将来の競争力を左右します。
まとめ
2~3年後、日本市場は「高額SaaSの停滞」「国内SaaSの脱落」「Microsoft・Googleの独占」「格安海外SaaSの台頭」という4つの潮流に覆われるでしょう。そのとき慌ててシステムを切り替えても手遅れで、競合との差は広がるばかりです。
だからこそ今から「AI活用の前提化」「安価で高機能なSaaSへの移行」「グランドデザインによる全体最適化」を進めることが、経営者にとって最も合理的な選択肢となります。
当社では、インド発のグローバルSaaS「Zoho」をはじめ、世界基準の機能と日本市場に適した価格体系を両立したソリューションをご提案しています。現在のツールを使い続けるにはコストが高すぎる、かといって国内SaaSでは機能が物足りない――そんな悩みを抱える経営者様に、最適な選択肢をご提示いたします。
ぜひ、貴社のDX戦略のグランドデザイン策定にあたり、当社にご相談ください。