2025年現在、中小企業庁のHPには、 『中小企業の皆様が飛躍的成長を遂げるために、自ら、「売上高100億円」という経営者の皆様にとって野心的な目標を目指し、実現に向けた取組を行っていくことを宣言する』、『100億化宣言』の一覧が掲載されています。多くの製造業の企業もこの宣言をしており、100億という売上は1種の企業目標となっていることが分かります。
20億・30億の企業が部品加工業や組立加工業などの受託型製造業が100億を目指す場合、その方法は大きく3つに分類されます。
1.成長市場の顧客と取引をする
2.自社製品を持つメーカーになる
3.M&Aを実施する
ただ上記3つの方法は、それぞれに解決しなればならない課題も多くあることも事実です。
● 成長市場の顧客と取引をする
~受託製造業が成長するための王道戦略~
受託製造業で業績を最も伸ばすための王道戦略は、長期的な取引関係を築いた顧客と共に成長していくことです。創業20年以上の企業で売上が30億円を超える企業の多くは、長く取引している主要顧客が存在し、その顧客の仕事に合わせて培った生産設備や技術が、自社の業績を支えています。
このモデルでは、主要顧客の業績が伸びれば自社の業績も伸びますが、逆に顧客の業績が悪化すれば、自社の業績も減少する傾向にあります。もし、産業構造の変化により主要顧客からの仕事が減ったり、価格が厳しくなったりした場合は、新たな成長市場の顧客を開拓することが、業績向上の打開策となります。
成長に向けた経営判断と投資の進め方
新たな成長市場の顧客を獲得するためには、マーケティングやプロモーション活動が不可欠です。しかし、新規顧客との取引が増えた後に問題となるのが、工場の増設や新設、大規模な設備投資をどう判断するかです。
高度経済成長期のように市場の右肩上がりが期待できない現在、将来の仕事量が確約されていない状況で、大型投資を行うのは大きなリスクを伴います。年間の営業利益や投資回収期間を十分に加味した上で、慎重な判断が求められます。
特に、現在の売上規模が20〜30億円の受託製造業が100億円を目指す場合、最大の課題は「いかにして100億円規模の生産キャパシティを確保するか」です。
リスクを抑え、着実に成長するための戦略
船井総研が支援する受託製造業のケースでは、以下のような順序で成長を目指します。
・まず、成長市場の顧客を多く開拓する。
・ 次に、すべての仕事を自社で行うのではなく、外部の協力会社をうまく活用する。
・ 外注への仕事量を確保した上で、補助金などを活用した上で、
自社で工場・設備に投資しても十分な採算がとれると確認した上で進める。
また、実際には無理に売上100億円を目指すのではなく、利益の向上を重視する企業が多いのも事実です。これにより、リスクを抑えながら着実に成長していくことが可能になります。
受託型製造業の成長市場の顧客開拓の方法にご興味ある方、是非下記をクリックください。
自社製品を持つメーカーになる
~受託加工業からメーカーへ転身し、収益を大幅に向上させる方法~
受託加工業が売上と利益を大きく伸ばすには、自社商品を開発してメーカー化を目指す方法があります。自社商品を持つ最大のメリットは、他社との差別化による高い収益性と、標準製品を大量生産することで売上を拡大できる点です。
しかし、メーカー化には課題もあります。商品の性能試験や安全性の確保、規格対応には開発コストがかかります。さらに、商品を採算ベースに乗せるための販売管理費も必要です。また、コストをかけたからといって、採算が取れる商品が開発できる確率は一般的に10%以下と低いのが現実です。
リスクを抑えたメーカー化の進め方
受託製造業は、すでに製品を製造する設備と技術を持っているため、その設備と技術を活かした機械部品などの開発であれば、リスクを比較的抑えることができます。一方で、電気製品は各種試験や安全性の費用が高くなる傾向があります。
そこで、船井総研のクライアント様がメーカー化に成功した多くの場合、最初から完全な標準品を開発するのではなく、カスタムメイド型の標準品から始め、徐々に販売数を増やしながら標準品のラインナップを増やしていく方法を取っています。
「特注部品メーカー」 として成功する道
製造業の機械部品には、ナショナルメーカーや大手通販サイトが提供する一般的な標準サイズの部品が存在します。しかし、それだけではすべてのニーズをカバーしきれていません。この隙間を狙い、「特注部品メーカー」として独自の地位を築き、メーカー化を実現した事例が多数あります。
具体的な成功事例
形状や性能のラインナップを追加したケース
【特注歯車】、【特注カバー】、【特注シム】、【特注フランジ】など
特定の環境性能(温度・湿度・防塵・防水に対応した製品)に特化したケース
【特注デジタルサイネージ】、【特注屋外盤】など、
メーカー化は、受託製造業に比べて大幅な利益向上につながるだけでなく、自社の得意な製造領域と重なる新規案件が増えるため、新規受注がしやすくなるという魅力もあります。
メーカー化を目指す方法にご興味ある方、是非下記をクリックください。
M&Aを実施する
~時間をお金で買う企業戦略~
産業構造の変化や業界再編が加速する中で大手企業だけでなく、中小製造業でもM&Aが一般的になり、年々M&A市場は拡大しています。部品加工業のM&Aで最も多いケースは、自社の加工工程の隣を事業とする企業のM&Aです(工程付加型・垂直統合型)。
自社の対応範囲を増やすことで1社の取引先当たりの単価の向上や、取引先のシェア、業務工程の統一によるメリットを生むことで自社だけの企業経営よりも成長速度を加速させることができます。部品加工業で有名な事例が技術承継機構(創業7年で10社のM&A、Gr従業員556名、売上110億、営業利益15億、EBITDA21億)のケースです。このケースは以前にも紹介したことがあり、また船井総研でセミナーを開催したことがあり、ご興味があるかたは下記のセミナーレポートをクリックください。
今回のコラムでは受託型製造業が売上/利益の向上、”100億化を実現する3つの方法”をご紹介いたしました。企業ごと、規模ごとに選択する方法に違いがあることも事実です。少しでも疑問や自社に合った方法をご相談した経営者様はお気軽に船井総研までご相談ください。
執筆者: 製造業商社支援部 マネージング・ディレクター 藤原 聖悟 ふじわら しょうご |