旧システムが抱える課題と理想的なIT戦略
企業が持続的な成長を実現し、年商100億円企業を目指す上で、ITシステムの役割は単なる業務効率化ツールを超え、戦略的な意思決定を支え、新たな価値創造の源泉となるべき最重要課題となっています。
しかし、多くの企業では旧システムが成長を阻害する深刻な課題を抱えています。部門ごとのシステム導入によるデータ分断と連携不足は、非効率な業務プロセスや重複入力を生み出し、多角化企業では事業間のデータ連携が進まず、全体最適化やシナジー創出を困難にしています。また、顧客データがマーケティング活動に十分に活かされず、LTV(顧客生涯価値)最大化を阻害しています。さらに、長年運用された旧システムはシステム維持コストの増大と技術的負債をもたらし、セキュリティリスクの増大や新規技術導入の足かせとなっています。
これらの課題を解決し、成長を実現するのが「攻めのシステム再構築」です。理想の業務システムは、CRM(顧客関係管理)、ERP(基幹業務システム)、そしてそれらを補完するAIエージェントで構成されます。CRMは営業・マーケティングなど「フロント業務」を担い、LTV最大化を目指し柔軟なカスタマイズが重要です。ERPは販売・在庫・会計など「バックオフィス業務」を効率化・標準化し、「Fit to Standard」、つまりシステムに業務を合わせることが鍵となります。
システム再構築がもたらす経営革新とCRM活用
システム再構築は、「業務効率化による生産性の大幅向上」、散らばる情報を一元管理しリアルタイムで可視化する「データドリブン経営への転換と意思決定の迅速化」、そして「顧客との関係強化、LTV最大化」といった経営革新をもたらします。
特にCRMの活用は重要です。顧客関係価値を向上し業績を上げ続ける「CRMカンパニー」は、あらゆる顧客接点から得られる情報をCRMに集約し、リード育成から商談、分析までを一元管理することで、顧客ロイヤルティと収益を向上させます。また、近年進化著しいAIエージェントは、「賢い秘書」のように自律的に動き、顧客対応のパーソナライズ、定型業務の自動化、リアルタイムデータ分析によるデータドリブン経営を加速させます。効果的な活用には、業務プロセスの標準化とデータの整理が不可欠です。
変革を担うDX人材と求められる4つの能力
DX推進の核は人的マネジメント変革です。この変革を担う人材は、単にデジタル技術に詳しいだけでは不十分であり、以下のような人物像が求められます。
•テクノロジーとビジネスを橋渡しする能力
:技術的な知識だけでなく、それを実際のビジネス課題や戦略に結びつける役割を担います。
•データドリブンな思考と分析力
:データに基づいて物事を考え、分析し、意思決定を行う能力が必要です。
•変革を推進するリーダーシップとコミュニケーション能力
:組織全体の変革を主導し、関係者との円滑なコミュニケーションを通じて推進していく力が求められます。
•常に顧客志向で価値創造を追求できる意識
:顧客のニーズを深く理解し、デジタル技術を活用して新たな価値を生み出すことにコミットする姿勢が重要です。
こうした人材を育成し、彼らが活躍できる組織文化を醸成することが、DX成功の鍵となります。
システム再構築は、すべてを一気に大規模に入れ替えるのではなく、優先順位を付け、計画立ててプロジェクトを遂行します。未来の「あるべき姿」を描き、具体的なロードマップを定める「DXグランドデザイン」の策定することで、この変革を成功に導くことが可能になるのです。
執筆者: 執行役員 DX支援本部 本部長 清尾 修 せお おさむ |