創業40年で7%に落ち着く自然の摂理とは
上記グラフは株式会社東京商工リサーチデータ(約150万社)をもとに船井総合研究所が加工したものです。横軸に創業からの経過年別に並べ、縦軸に「〇〇スコア」をグラフ化しました。
このスコアは、創業からの経過年数が40年を超えると7%に落ち着いてきます。この7%が示す意味とは何でしょうか。また企業が年を重ねると弱くなる自然の摂理に抗う方法はあるのでしょうか。
この記事では、このスコアの正体を解き明かし、企業の持続的成長を阻害する要因と打開策について分かりやすく解説していきます。
スコアの正体:企業の持続的成長力を評価する「〇〇スコア」
企業の持続的成長力を評価する指標として、船井総合研究所では「〇〇スコア」と呼んでいます。このスコアは売上高成長率と営業利益率の2つの要素をもとに算出します。売上成長率は、市場環境や企業の競争優位性を評価する目安となります。一方で、営業利益率は効率的な経営資源の調達・活用ができているかを評価する目安となります。2つの要素を合計することで、企業の持続的成長力を数値で示すことが可能となります。
船井総合研究所ではこのスコアが20%以上だと優れた成長企業、40%以上になると特に優れた成長企業と評価しています。一方で、このスコアが10%以下というのはどういった経営状態なのでしょうか。
よく言えば「企業の成長が安定し、成熟段階に入った」と言えます。船井総合研究所が行ったある経営者のインタビューによると、「1拠点(管理しやすく、リスクの少ない事業運営)で収益性が確保され、低成長でも赤字にならない」経営状態にあり、「あえてリスクを冒す必要があるのだろうか」という安定志向になっていることがわかりました。
事業承継が再成長のチャンスか?
上記とは別に船井総合研究所が行った100億企業へのインタビューの中で「成長を促進する要因と考えられること」について質問をしたところ、以下のような回答が得られました。
■売上高130億円の経営者のインタビューより
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■売上高210億円の経営者のインタビューより
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創業40年以上でも高い成長率を持続する突破口とは
先述のインタビューから「事業承継」が再成長を覚悟するきっかけとなり「新規事業」に取り組む流れがわかります。他にも持続的な企業成長に必要な経営テーマは有象無象に存在しますが、100億企業化を1つの目標にした場合には、ある程度事業展開を絞り込むことができます。
中小企業庁の研究では、売上高100億円に達成した企業の成長パターンとして、A: 成長市場型 、B: 独自価値創出型 、C: 成長志向M&A型の3類型が紹介されています。これらのパターンを船井総合研究所が把握しているケースとともに解説していきます。
出所:中小企業庁 2023年6月「中小企業の成長経営の実現に向けた研究会 中間報告書」
A: 成長市場型
・公開情報から市場規模が近年伸びていることが確認できる業種・業態で事業を行う企業
・成長している市場の中で、活動の工夫のほか、成長が見込める市場を的確に見極めてその中へ進出できた企業
【ケース】
業種:太陽光事業を中心とした卸売商社
成長のポイント:成長市場である再生可能エネルギー領域において、従来の太陽光パネルの一般家庭向け訪問販売から、法人向けの産業用メガソーラー事業に参入し、卸売商社へと業態を転換。これにより、1件あたりの事業規模が大きくなり、売上規模の増加
B: 独自価値創出型
・公開情報から市場規模が近年伸びていない(もしくは確認できない)業種・業態で事業を行っている企業
・市場全体が伸びていない中でも、需要が伸びる特定のセグメントに着目したり、他社とは異なる独自の価値やサービスを創出したりすることで売上を増加させている企業
【ケース①】
業種:不動産業
成長のポイント:地域密着し、地域の不動産の情報量と早期の情報仕入れで分譲・リノベーションビジネスを有利に展開。同様のモデルでドミナント展開にてエリア拡大を実現
【ケース②】
業種:外食業
成長のポイント:
・FC化本部化により調達面(ヒト・モノ・カネ)を他社に頼ることで一気にエリア拡大を図る
・FCモデルを整えることで結果的に、直営店の品質も、効率(セントラルキッチン化)も高まった
・外食向けの冷凍餃子や冷凍チャーハンなどを通販・スーパードラッグストアで販売。中堅ならではの小回りの利く対応で差別化を図った。コロナ化には大きくリスク分散効果が図れた
C: 成長志向M&A型
・M&A等の組織再編を活用したことが、企業の成長に大きく貢献している
・M&A等によって、単なる規模の拡大だけでなく、企業結合による何らかのシナジー(相乗効果)を得て、競合他社よりも競争優位性を獲得
【ケース①】
業種:中古車ディーラー
成長のポイント:再現性の高いビジネスモデルを展開しており、買収先に社員を派遣。店舗運営のノウハウを移植し、PMIを成功させている
【ケース②】
業種:食品製造・卸
成長のポイント:業績不振や事業承継に悩む老舗で展開している同業を買収し、販路の獲得、生産拠点の拡充による物流効率化、特定の技術や品揃えの強化を図った
まとめ:創業40年以上でも高い成長率を持続する突破口は「事業承継」と「新規事業」そして「100億企業化」
成長力の低下と成熟
企業の持続的成長力は「〇〇スコア」(売上高成長率+営業利益率)で評価されます。創業5年未満で43.3%と最も高いこのスコアも、時間の経過とともに低下し、創業40年以降は約7%台に安定化・成熟化します。
成長を阻害する要因
収益性が確保され、低成長でも赤字にならない経営状態に安定化すると、あえてリスクを冒す必要を感じにくくなる「安定志向」に陥るケースがあります。
再成長の突破口
この自然の摂理に抗うには、事業承継をきっかけにリスクを覚悟して新規事業に取り組むことで再成長を促すことができます。更に売上高100億円に達成した企業の成長パターンに倣うことで再現性を高めることができます。
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