差別化のマーケティング
「圧倒的一番化のための原則」ということで、まずは「差別化のマーケティング」に関してお話をさせていただければと思います。
要素 | 差別化項目 | 圧倒的一番化のための戦略 |
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戦略的 (長期的) 要素 | ||
1. 立地(立地選択・市場選択) | ■勝てる立地(市場)になければ移動も視野に入れる ・集客、採用の両面において立地は重要 ・良い立地の定義 ⇒住所そのもの、地域の人が場所を聞いてイメージできる場所、アクセス手法の多い場所 | |
2. 売場面積(規模) | ■規模(売場面積)での圧倒的一番を取れていることが重要 ・1.3倍、1.7倍での差別化 | |
3. ロイヤリティ(認知度) | ■あらゆる手段を使って外部へ情報発信を行う | |
戦術的 (中期的) 要素 | ||
4. 商品力 | ■勝てる商品・サービスを持つこと ・勝てる商品・サービスは競合の1.3倍、可能であれば1.7倍の品揃えを持つ ・勝てない商品・サービスでも重要度の高いものは一番店/一番企業に1.3倍(1/1.3=77%)以上の差をつけられないようにする | |
5. 価格力 | ■価格主導権を握る ・最低価格商品の品質の一番化 | |
戦闘的 (短期的) 要素 | ||
6. 販促力 | ■企業と商品を合わせた販促が重要 | |
7. 接客力 | ■非対面・非接触における接客の在り方を考える | |
8. 固定客化 | ■LTVを指数として見られるようにする |
まず、1番、2番、3番は「戦略的・長期的要素」です。
そして、4番、5番は、「戦術的・中期的要素」になります。
6番、7番、8番は「戦闘的・短期的要素」で、
いわゆる、現場でやっていくことを短期的に頑張れば解決、改善していける要素です。
戦略的(長期的)要素
戦略的・長期的な要素として重要な順番で言えば1番重要なのが「立地」です。
市場選択・立地選択というところで、2番目が売り場面積(=規模)、
3番目がストアロイヤリティ(=認知度、ブランド)です。
これがなぜ長期的部門かを説明します。
立地というのは、例えばBtoCの商売で小売業だと、
「ここの場所でお店を作ります」というように店舗を一回作ってしまったら
「ここの場所で失敗したから違う場所に変えよう」ということは簡単にはできません。
店舗面積でも同じことで、最初300坪の店を作った後で
「300坪では全然お客さん来ないから500坪に増床しよう」と言っても簡単に店舗の拡張ができるわけではありません。
そしてストアロイヤリティは結局、会社の認知度やブランドということですから、長年かけて作っていくものです。
なので、創業1年目の会社がロイヤリティを作ろうとしても無理な話であるため、
そういう面では長期的に戦略的に慎重に考えていかなければいけません。
1. 立地(立地選択・市場選択)
立地選択・市場選択に関しては、勝てる場所で勝負しないと絶対的にいけません。
弊社の創業者である船井幸雄氏は常々、
「いい場所にどこよりも大きなお店を構えることによって、絶対的に勝てるのだ」
ということを常々言っていました。
この話だけを聞くと
「そんなことは誰でも分かることではないか」
「そりゃいい場所に大きな店を作れたら誰も苦労しないし、みんなそれができないから苦労してるんでしょ」
当然のように思われると思います。
しかし大切なことは、その立地に、経営者として勝負をかけられるかどうかです。
私もずっと流通業のコンサルティングを長くさせていただいていて、
その業種・業界の中で圧倒的一番(各カテゴリーキラー)作りということを長年させていただいていました。
そのときの原則は「競合よりもいい場所で、競合より3倍の売り場面積で、
競合より3倍のボリューム感で、お店を作る」ことでした。
ですから私も若いときには、競合店がどれくらいの面積でどれくらいの品揃えがあるかを調査し、
自社はそれより3倍の品揃えをしていくという至極当たり前のことを考えました。
「そのようなことはお金があればできるではないか」と皆さん仰いますが、
その当時の弊社の古いお客様は、本当に経営的にはジリ貧になっていて、
藁をもすがる思いで船井総研の門を叩いてくださった方たちでした。
その方たちが、何とか勝負をかけたいと、金融機関を駆けずりまわって、
経営者ですから個人補償も全部入れた上で大きな借入をし、
覚悟を持って「圧倒的一番を取れるお店」を作られたのです。
そのような会社様が今成功し、圧倒的一番で全国展開していらっしゃいます。
これは誰でもできたことかと言うとそうではなく、
「その覚悟ができたかどうか」が成功の分かれ目だと思います。
ですから、まずはそのような立地と売り場面積で勝てるところを作れるかどうかが重要です。
当然全ての会社ができるとは思いませんが、まず原則として一番重要なのはそこだということを絶対的に忘れないでください。
1-1. 悪い立地でお店を作る場合の問題
集客や採用面でも、やはり立地は重要です。
結局立地が悪いとどうなるかと言いますと、
客がなかなか集まらない
↓
客が集まりにくいため、販促費、広告費をかけないといけない
↓
立地にかけたお金以上にコストがかかるのでなかなか認知度が上がらない
↓
売上もなかなか上がらない
ということになります。
そして売上が上がるまで、長い赤字の期間が出てしまいます。
これがもし最初から立地が圧倒的一番であれば最初から客が来るわけですから、営業的には黒字になります。
返済が重たいだけで、黒字にさえなれば別に返済はしていけるわけです。
それが立地が悪く、黒字になるまで1年2年かかるとなったときに、
その間の赤字の積み重ねを考えたら、長期的な目線で見れば最初に投資をしたほうがいいという考え方もできます。
そのようなところから、良い立地の選び方が重要であることがわかるわけです。
1-2. 良い立地とはどんな立地のことなのか
良い立地には、車通りが多い、人通りが多いなど、いろいろな要素があります。
立地選定のときには私どもも経営者さんといっしょに回りますが、
僕らは外から来ているわけで「車ならここの場所がいいのですよ」という話を聞きます。
けれども、僕が最初に経営者さんに聞くのは「ここの場所を人に説明するときなんて説明しますか」ということです。
すると「国道〇号線の〇〇駅から20キロくらいのところです」と経営者は答えますが、
「そんなのお客さんは分かるわけないじゃないですか」と返します。
例えば
・(目の前に市役所があるのであれば)市役所の目の前
・〇〇高校の目の前
・大きな流通店舗の斜め向かい(この時の目印は競合他社でもOK)
など、そのようなランドマークがあるほうが立地としてはお客さんに説明しやすいものです。
説明される側としても「あそこの店良かったよ!〇〇駅から車で20キロのところ」と言われてもピンとこないので、
興味はあっても来店を断念されることもあります。
いい立地の鉄則というのはそのようなところにも影響します。
例えば、住所が〇丁目〇番地のようにシンプルで分かりやすい住所のほうが
「あ、便利な場所にありそうだな」ということで認知度も上がってくることもあります。
番地というのはこちらで指定できるものではありませんので、
それだけ立地というのは、「後からどうにかすることができないもの」だということです。
ですから、
・立地選定は絶対に間違わない
・立地は簡単には変更できない
というところを理解し、最初から勝てる立地で勝負してください。
2. 売場面積(規模)
最初に投資はかかるかもしれませんが、中・長期的に見れば
「勝てる立地で勝負する」ということと、やはり「規模(売り場面積)で勝つこと」が重要です。
ハフ理論などいろいろな集客の商圏理論などの本でも書かれているのですが、
お客様の吸引力は間違いなく売り場面積に比例します。
これは心理的なものなのでどうにもできないことです。
片側に100坪の店があって、もう片側に300坪の店があるとすると、やはり300坪の店のほうが絶対的に吸引力は高いです。
これは規模が大きなところのほうが間違いなく吸引力があると実証されていることなので、
競合企業と比べてより大きな売場面積を取るべきです。
また例えばウェブサイト上で言えば、競合よりも大きな広告面積を取るなど、やはり面で押さえていくことが重要です。
自社と他社を比較するのにはいろいろな判断軸がありますが、
売り場面積は実際に広さを測ればいいだけなので、判断軸として分かりやすいものです。
競合企業や他社より売り場が大きいかどうか、
見た目から分かる違いを持っているというのは間違いなく吸引力に影響します。
当然大きいほどコストはかかり、増やせば増やすほどコストはかかるのですが、
吸引力の差に大きく影響しますので、そこはコストをかけるべきだと思います。
3. ロイヤリティ(認知度)
ロイヤリティという面では、あらゆる手段を使って「後発でも外部への情報発信をいかに行っていくか」が重要になります。
今は老舗企業でなくても情報発信の仕方で「あそこの会社は安心できる」など情報発信はできます。
ですから、ロイヤリティを上げるというのは
・経営理念をどう伝えるか
・会社のポジションをどう伝えるか
ということです。
BtoCでもBtoBの商売でも、自分たちの経営の考え方や戦略をウェブサイトで伝えている企業は多くあります。
これらは会社や経営者の自己満足などと言われがちですが、実は非常に大事なところです。
後発企業がロイヤリティを上げようと思った時、
自社がどのような考え方で経営をしているのかを伝えなければ、企業のロイヤリティは上げられません。
ですから長期的に自社の経営を考えたときに、自社の理念を伝えることは非常に重要になってきます。
戦術的(中期的)要素
4. 商品力/5. 価格力
戦術的(中期的)要素には、商品力や価格力があります。
これに関しては、マーケティング講座の中で品揃えの話や価格帯の考え方の話はさせていただきましたので、
ここでは簡単に説明させていただきます。
やはり競合店に対して1.3倍、1.7倍の品揃えで勝っていくということが大事ですし、
価格に対しても価格主導権を取るというところが大事です。
参考:強者の戦略と弱者の戦略【船井流経営法】
4-1.最低価格の商品ほど品質を上げる
特に一番大事にしていただきたいのは、最低価格の商品の品質を競合企業と比べて高くするということです。
例えばパン屋であればそこに売っている一番安いパンがあんパンだとして、
仮に世の中のパン屋がどこもあんパンを一番安い価格のパンとして設定しているとします。
競合店がどこも100円のあんパンを置いているのであれば、
自店では100円のあんパンはどこよりも美味しくすることが絶対的に大事になるのです。
つまり、自社にとって最低価格の商品ほど品質を上げていくということが大事です。
高い商品はみな品質を上げようと努力するのですが、逆に安い商品ほど原価をかけて品質を上げていくのです。
マーケティングで言えば、安い商品のほうが利益率が低く、高い商品のほうが利益率が高い状態が理想です。
安い商品の利益率が低く原価率が高い場合、それだけ原価をかけることで
競合企業の同価格帯商品と比較してその安い商品の味や品質を高められるわけです。
そしてお客様からすると
「安い商品ですらこれほど品質が高いなら、もっと高額な商品はさらに品質が高いだろう」
という印象を自店に対して受けます。
ですから、商品力で差別化するとか勝負をかけるというときには、
マーケティングの原則の価格の分岐点を押さえつつ、最低品質の商品の品質の一番化を実施してください。
戦闘的(短期的)要素
6. 販促力/7. 接客力/8. 固定客化
販促・接客・固定客化に関しては、結構どこの会社も一番しゃかりきになって取り組まれているところです。
この辺りに関しては、皆さんが普段から頑張っていらっしゃるところであり、
戦闘的なところは普段経営者が気が付いたらどんどんやっていらっしゃるところなので、
ここは今回は割愛させていただきます。
まとめ
中期的要素や長期的要素の部分は戦略的に意識していかないとなかなか改善するのに時間がかかる一方、
戦闘的な要素は頑張れば1ヵ月で解決でき、戦術的な要素は頑張ったら3ヵ月から1年で解決できます。
しかし、戦略的な立地や売り場面積のロイヤリティは何年もかかって解決していかなければいけない問題で、
すぐには解決できない問題です。
ですから、最初にきちんと考えていかないといけません。
このように、「圧倒的一番化のための原則」ということで差別化の8項目とを念頭に置いて
他社との差別化を実施していただければと思います。