中小企業経理の課題
現状どういう課題を中小企業の経理は抱えているのかと言いますと、まず紙での請求書や領収書が多くて入力作業が大変です。現金出納帳や売掛台帳といった帳票をまだ手書きで作成しています。あと、部門別の損益や拠点別の損益をしっかり出していきたいですがなかなかそこまで手が回っていません。顧客管理、レジ、給与計算、請求などの色々なシステムを使っていますが各システムがバラバラになっていて、会計と連携していないことで二重入力が発生していること、拠点が増えるとどうしても経理の人員を増やさないといけないことで大幅に拠点展開をして、規模が拡大していくとそのぶんコストがかかるという課題があります。あとは経理業務が属人化していて業務の分担や引継ぎがなかなかできないというように、こういった現状があって前は紙中心のアナログで非効率な経理だったのが多くの中小企業の経理の課題となっております。
やはり多くの経営者の皆様は、更に効率化できるのではないか、しかしどうすればいいのか分からないと思い悩まれるかと思います。
現状がそういう形なのですが、2022年から2023年で経理というものが大きく変わっていきます。それがなぜかと言うと、まず2022年1月に電子帳簿保存法の改正が行われるからです。更に2023年10月にインボイス制度の導入がスタートします。これをきっかけに紙中心から電子中心の経理スタイルに変えていかないと非常に効率が悪くなってしまいますので、変えるには非常に良いチャンスです。
電子帳簿保存法の改正のポイント
この中の電子帳簿保存法の改正のポイントについてお話ししたいのですが、そもそも電子帳簿保存法とは何なのかと言いますと、紙での保存が義務付けられている帳簿書類の電子データ保存について定めた法律のことを電子帳簿保存法と言います。電子データ保存の方法は大きく分けると二つです。
一つ目は紙のものを電子データとして保存する、つまり紙での保存が義務付けられている書類を電子データにして保存するものです。
そして二つ目が電子データで受け取った書類を電子データで保存する。大きくこの二種類の保存方法があって、それについて定めているのが電子情報保存法です。
紙での保存が義務付けられている帳簿書類とは
ではここでいう紙での保存が義務付けられている帳簿書類とは具体的にどういうものを指すのかと言いますと、まず大きく分けると3種類の書類に分かれます。国税関係帳簿と国税関係書類、それと電子取引の大きくこの三つに書類が分かれます。国税関係書類の中では決算関係書類と取引関係書類の二つに分かれています。
それぞれどういうものなのかと言いますと、まず国税関係帳簿とはいわゆる取引の記録です。具体的には仕訳帳や総勘定元帳や現金出納帳などを国税関係帳簿と言います。
国税関係書類の決算関係書類とは具体的に何かと言うと、決算のために作成した書類のことで貸借対照表や損益計算書や棚卸表などの商品のことを指します。
取引関係書類とはどういうものなのかと言うと、まずは自ら発行した取引書類の控えです。自ら発行した書類、具体的には領収書や請求書や発注書です。もう一つが相手から受け取った取引書類です。例えば領収書や請求書や発注書という相手から受け取った書類は取引関係書類としてあります。
そして電子取引とは何かと言うと、そもそも紙を発行せずに電子で発行して受領まで行う取引です。電子決済やメールでのデータのやり取りやEDI取引など、このあたりを電子取引と指しています。こういった書類が保存を義務付けられている帳簿書類になるのですが、電子帳簿保存法ではこれらの書類の保存方法を三つに分けています。まず一つ目が電子帳簿保存、二つ目がスキャナ保存、三つ目が電子取引に係るデータ保存です。帳簿書類にはこういう形の情報処理で保存が義務付けられており、それぞれの保存方法がありますよという全体像になっています。
電子帳簿保存法の改正の概要
そのうえで今回この電子帳簿保存法の改正された大きな概要をお伝えすると、大きく四つ改正されています。まず一つ目が承認制度の配信、二つ目はタイムスタンプ要件の緩和、三つ目が適正事務処理要件の廃止、四つ目が検索要件の緩和です。
それぞれどういうことかと言いますと、まず承認制の廃止です。改正前の現状は導入の3カ月前までに税務署まで申請しないといけない、要は紙での保存ではなく電子データで保存しようとすると、導入する3カ月前までに税務署に申請しないといけないと改正前は定められています。これが改正後は、基準を満たした準備ができ次第対応することができます。要は事前に申請、承認する必要がなく、基準を満たして準備ができたらすぐ電子保存に切り替えていいですよというのが改正後の状況になります。
二つ目のタイムスタンプ要件の緩和です。これは現状どうなっているかと言うと、受領者が自署をしたうえで3営業日以内にタイムスタンプを付与しないといけないということです。まず自署しないといけないことと、3営業日以内にタイムスタンプを付与しないといけないことでなかなかハードルが高かったです。これが改正後は、そもそも署名が不要になります。しかもタイムスタンプの付与の期間が最長2カ月以内で、ある程度しっかりと猶予を持ってタイムスタンプを付与すればいいということで緩和されています。
そして三つ目が適正事務処理要件の廃止で、現場の定期検査で原本とデータの突合作業が必要だということです。要はデータ保存したからといって紙をすぐ捨てていい訳ではなく、紙の原本をきちんと保存して定期検査でデータと紙の原本を突き合わせて使わせる必要があったのが現状です。これが改正後は、この適性検査がそもそもいらないということで紙原本の保存が最初から不要になりますよということです。
そして四つ目が検索要件の緩和で、色々な検索ができる要件があってこれをしっかり定めておかないといけないとあります。それが現状だと取引年月日や勘定科目、あとは取引金額、その他の帳簿に応じた主要な記録項目という色々な項目を検索要件として検索できるものとして備えられないといけないとありましたが、改正後については年月日と金額と取引先のみです。この三つを検索要件として備え付けていれば問題なしということで緩和されています。
保存が義務付けられている帳簿書類
この改正がされたことで具体的にその保存の方法がどういう形に変わっていくのかをお伝えしていきたいなと思うのですが、まずこの電子帳簿保存にあたる取引の記録のところが例えば仕訳帳や総勘定元帳、決算のために作る貸借対照表、損益計算書、あとは自ら発行した取引書類の控え、領収書の控えや請求書の控え、これらのいわゆる電子帳簿保存にあたるところです。
電子帳簿保存法の改正のポイント1 電子帳簿保存
これらの保存方法がどう変わるかと言いますと、電子帳簿保存で要件が五つあります。
まず一つ目が訂正削除の履歴の確保です。要は記録事項の訂正削除を行った場合の事実内容を確認できることです。
二つ目が相互関連性の確保です。電子化した帳簿と関連する他の帳簿の関連性を確認できるようにしなければいけないことです。
三つ目は関係書類等の備え付けです。システム関係書類、要はマニュアルなどの備え付けを行っていかないといけないことです。
四つ目が見読可能性の確保です。要はデータの保存場所にPCやプリンタ、あと操作説明書を備え付けて、正しく画面や書面に出力できるようにしておくことが必要です。
五つ目が検索機能の確保です。取引年月日、勘定科目、取引金額、その他帳簿に応じた主要な記録項目で検索できることです。
改正前はこの五つの要件があってこの五つを全て備えていないと電子帳簿保存として認められなかったのですが、これが改正後は関係書類等の備え付けと見読可能性の確保の二つだけができていれば問題なしとなったことで・・・