購買頻度と購買経験から見る業態論をお話をさせていただきます。
購買頻度とは
購買頻度とは、1世帯または1人あたりが1年間にその商品を何回買うかということです。
・生活していてよく買うもの
・たまに買うもの
・一生に1回くらい買うもの
があります。
購買頻度が高い商品
例えば、ペットボトルに入っているお茶やコーヒー、水などは恐らく1日1回は少なくとも買う商品なので、非常に購買頻度が高い商品となります。
私はこのお茶に決めているとか、新商品が発売されたら試してみようということで、購買経験が豊富な商品を買うときの趣向と、例えば今日はどれを飲もうかなと思って20分、30分も迷う人はほぼいません。
「ま、いいか」とか、たまたま買ったものが美味しくなければ明日違うもの
を買うことになると思います。
購買頻度が低い商品
ですが、購買頻度が一生に1回の買い物である家などであれば、「はい、この家にしよう」とカタログを見て決めることはないと思います。
何度も見て、何度も話を聞いて買うと思います。
これは値段が高いので失敗したくないという理由だけではありません。
購買頻度が低い、購買経験が少ないというのは、ゼロから情報を集めないといけないので買い方や買う場所が変わってきます。
こちらについてはのちほどご説明いたします。
ホーム・ユースとパーソナル・ユース
ここでもう一つお伝えしたい、ホーム・ユースとパーソナル・ユースという分け方があります。
ホーム・ユース
ホーム・ユースは家族という単位で買うものです。
例えば、家、家具、自動車などのことを指し、意思決定するのがお父さんなのかお母さんなのかというところはありますが、家族のために買うという意味で、意思決定がより複雑になってきます。
金額が大きいということもありますが、家族の中で言いますと息子さん、娘さんが大きいのであればそこの意見も聞かないといけません。
パーソナル・ユース
一方で、パーソナル・ユースというのは一個人が購買するものです。
例えば、今の時代で大きく変わったのは電話です。
電話は携帯電話が世の中に一般的に普及する20年前くらいにパーソナル・ユース化しました。
それまでは家の電話だったので、どこと契約するかは家の意思決定権でした。
しかし、携帯電話が普及して電話というアイテムがパーソナル・ユース化しました。
パーソナル・ユース化した商品は一気に購買経験が上がっていきます。
今まで高校生の子供が、自分の家の電話はどこと契約しているのか、電話の機種がどこなのかということは知らなくても良いことでした。
しかし、パーソナル・ユース化になってくると、自分の携帯電話はどこの会社のを使っているか分からないという人はいないと思います。
それは、パーソナル・ユースで購買経験をしているため、選択の余地が増えて買い方が変わるという話です。
購買経験
購買頻度と購買経験というのは、
購買頻度:年に何回買うか
購買経験:一生に何回買うか
という違いだけで、それほど違いはありませんが、購買経験で見たほうが分かりやすいかと思います。
毎日買うものなのか、一生に1回買うものなのか、数年に1回買うものなのかによって、買い方、見方が変わってくるということです。
これは自社が、BtoBだと全然違ってきますが、BtoCのビジネスをやってらっしゃる方は、大体このようなイメージで整理していただけたらよいと思います。
要は30年に1回買うものなのか、10年に1回買うものなのか、2、3年に1回買うものなのかによって、ホーム・ユースとパーソナル・ユースでそれぞれの業態や売り方が変わってくるということです。
やはり購買頻度が高くなればなるほど自分で選べるということですので、セルフ化が進んでいきます。
また、購買頻度が低い商品に関しては、がっつりとした接客や大きくて品揃えのいいお店に買いに行っているという話です。
ここ15年での変化
この15年くらいで大きく変化したのは、EC通販が出てきたことです。
今までは購買頻度が高い商品というのは現地で見て比較して買わないといけないものでした。
それが、EC通販上で比較できるようになってきた為、ホーム・ユースもパーソナル・ユースの商品も、3ヵ月に1回くらいや1年に1回くらいの購買頻度の商品であれば、わざわざ大型店や専門店の専門家の意見を聞かなくても自分で情報を収集して購入できるようになってきています。
そうすると、ものを売る側はどうなっていかないといけないかと言いますと、購買頻度の低い商品は、低いマーケットのところに行かざるを得ないのです。
購買頻度の低いマーケットにいくと、お客様の数も一気に減りますから、単価は上がってもお客様の数も減ります。
購買頻度の低いマーケットに行った場合
購買頻度の低いマーケットにいった場合、どうすればよいでしょうか。
二本立てでビジネスをやっていかざるを得なくなったのです。
自社の商品ラインナップの中で購買頻度の低い商品に関しては、
・店舗に来てもらったり直接対面で購入・サービスを受けていただく
・オンライン上で接客・購入していただく
ここで、
・自社の業態のどこからをセルフ化ないしオンライン化していくか
・どこからを対面化してアナログを残していくのか
というこのラインの線引きが難しくなってきています。
セルフ化やオンライン化のラインがどんどん上に上がっていっているからです。
オンラインでセルフ化できる領域が増えていき、専門店で対面できるところが限られてきています。
限られてきているということは、その中で勝てるにはどうしたらいいのか、他社との違いをどうすればいいのかというような課題に各社が直面しています。
・オンライン関係なくセルフで買ってもらうところ
・オンラインで対応するところ
・実際の対面で対応するところ
という3層に分かれてきているところを企業として全部取り込まないといけなくなっています。
ここだけで勝負するのもあり得ますが、長く成熟産業でやっている方からすると、後発企業がセルフやオンラインの箇所を取っていくため、専門店で長くやっているような企業が上に追いやられてしまい、狭いマーケットになっていきます。
狭いマーケットの中で一部のお客さんの満足度を上げて、セルフやオンラインで買う人は相手にせず、得意客だけを相手にするという戦略も、そこに残存者利益が出るのならありかもしれないですが、たいていは上手くいきません。
そのような成熟産業ほどブランド力があるわけですから、そこに人材を入れてセルフ化、オンライン化するとうまくいくはずです。
しかし、成熟産業ほどプライドがあるので、「うちはやらない」となってしまえば、もともとマーケットを100やっていたところが30くらいにしか対象にならないわけですから、3割の売上にしかならないわけです。
その中で3倍のシェアを取れば売上はトントンですが、現実的には取れません。
ですから是非、自社の戦略の置き方というところも、このような購買頻度から見ていただければと思います。