中小企業のDXの現状とコロナショックの影響
はじめにマクロの話から入らせていただきます。こちらでは我々経営コンサルタントから見た中小企業のDXの現状とコロナショックの影響について簡単にさわりの部分のご説明をさせていただきます。
最初にこちらの数字を見ていただきたいのですが、皆さんこちらの10,000という数字は何の数字なのかが分かる方いらっしゃいますでしょうか。こちらは今後のコロナショックの影響を受けて倒産してしまうと考えられる企業数です。リーマンショックの時はおよそ15,000社が倒産したといわれておりますので、こちらの数字は決して大げさな数字ではないのだと思っております。
さらに言わせていただくと、リーマンショックよりもさらに苦しい状況になってしまう会社が増えると予想しております。その理由といたしまして、コロナショックとリーマンショックは同じ経済危機の括りではありますが、リーマンショックがシステム面だけの経済危機であったのに対して、コロナショックはパンデミックなので、経済の3大リソースであるヒト・モノ・カネが同時多発的にダメージを受けているので、リーマンショックよりも実体経済への影響が大きいと言われています。
日本国内では地方経済に与えるダメージが大きいです。リーマンショックの時は地方経済に対する影響をほとんど感じなかったのですが、コロナショックでは地方、都市部関係なく影響が出ていますので、10,000という数字は決して大げさではなく、最悪の場合これ以上の数の企業が倒産してしまいリーマンショック時の15,000を超えてしまうことも十分にあり得ると我々は予測しております。
コロナで影響がある業界TOP5&倒産企業の事例
そして、特に影響があると様々なメディアから取り上げられている業界をこちらのスライドにまとめさせていただきました。大手や老舗企業のほうが注目を集めやすいので、大手企業や老舗企業の倒産事例が取り上げられているわけですが、ここで皆さんに考えていただきたいことがあります。このように直接的かつ短期的に影響を受けている事例が目立っていますが、我々は遅かれ早かれ8割の業界で倒産まではいかなくとも、何かしらの影響を受ける可能性が高いと考えています。
今は一時的に一部分の業務ができない状態が多いと思いますが、実際に経営が傾いてしまうという経営に対する危機感が薄い経営者の方が多いなと感じています。ですので、最初に考えていただきたいのはコロナショックによる倒産は決して他人事でなくて、先ほどの5つの業界のように直接的な影響を受けていなくて今は目立っていなくても、遅かれ早かれ何かしらの影響があるだろうと考えていただきたいです。
コロナで倒産した企業の要因/影響業界
そして、実際にコロナショックで倒産してしまった企業のパターンとしてこちらのスライドに書かせていただいている3つのパターンがあります。一つ目が人の移動を前提とした収益モデルの業態です。二つ目がセールスがリアル領域のみのビジネスモデルです。最後の三つ目はオンラインに置き変えられる業態です。
それぞれ具体的にどのような業態かと言いますと一つ目の業態の具体例は、観光・自動車・自動車部品・鉄道・航空業界などです。二つ目の業態の具体例は、外食、百貨店、レジャー、ホームセンターをはじめとした小売業です。三つ目の業態の具体的置き変わり例としましては、店頭販売がEC販売に置き換わっていますし、オフィス勤務がテレワークに置き変えられています。ここの項目で何が言いたいかをまとめますと、ほとんどの業界で従来と全く同じ事業運営だとワクチン接種が終わりコロナ禍が明けたとしても業績の回復が難しくなりますので、何らかの変革を起こさなくてはいけないと考えております。そして、この課題はコロナショックで影響を受けた8割の会社共通のものだと考えていただきたいです。
DX―Q.なぜ、日本企業はDXに失敗しやすいのか?
このような背景もありますので、皆様は最近「DX」という言葉をよく耳にすると思います。略さずに言うと「デジタルトランスフォーメーション」ですが、私はこちらを専門にコンサルティングをさせていただいていますのでよくわかるのですが、結論から言えば、日本企業でDXに成功している企業は海外と比べてかなり少ないです。それはなぜなのかを私なりに分析いたしましたので、私の見解をお伝えさせていただきます。まず日本企業がDXに失敗しやすい理由は四つあると考えています。一つ目は経営者と経営幹部の高齢化が進んでいることです。こちらの問題が日本企業がDXに失敗しやすい1番の理由だと考えています。
このことに関しましてこちらのスライドに日本企業とアメリカの企業の社内で昇格したCEOの年齢と在任期間のデータがあります。見ていただくと分かりますが、アメリカと日本ではCEOの年齢が10歳ほど違っておりまして、アメリカのCEOのほうが若いです。アメリカのように年齢が若ければ初めからDXに関心がある可能性が高いです。もう一つの問題として、日本企業のCEOの在任期間が海外と比較しても極端に短いことが多く特に大手企業にこの傾向があります。
皆様に1度考えていただきたいのですが、ご自身のCEO在任期間が5年しかないのに、今後の会社の未来を見据えて手間も労力もかかるDXや新規事業の立ち上げに挑戦して、次の世代に会社を継承される方ももちろん居られると思いますが、そうでない方ももちろん居られると思いますし、そう思うのは当たり前のことでもし私が同じ立場でもそのように思います。新しいことに挑戦するよりも現状維持をしたほうが圧倒的に楽ですし、コロナショックが終わるまで5年から10年の間自社を存続させることはほとんどの方ができると思っています。このような理由から現状維持の選択をしているわけです。
そして、二つ目の理由ですが、経営の中心人物や会社の幹部が高齢化しているので、DX化の重要性に気付くのが遅すぎたことです。私のクライアント様は地方企業様が多いので同じように感じていますが、地方のクライアント様から繰り返し言われてきたこととして「地方ではホームページやネット通販で物を売らないよ。それは都会だけの話だよ」や数年前からリモート面談やインサイドセールスを導入したほうが効率がいいですし、そのほうが成果が出ますよと言っても、「地方は対面で顔を突き合わせて人間関係を作ってから話をしないと仕事は取れない」と本気でおっしゃられる経営者の方が多かったのですがそのような方々がようやく重い腰を上げた状況なので二つ目に位置づけさせていただきました。
三つ目の理由はDXに失敗してしまう会社の中には当然未来を見据えてデジタルスキルを持った人材を多く採用している企業ばかりではありませんので、既存社員をデジタル人材に教育していく必要があるのですが、育成するためのスキームや機能を持ち合わせていない会社様が多いです。
そして、続けて四つ目ですが、このような会社様で結果的に何が起きるかと言いますとDX化に対する幹部のモチベーションが低い上にDXを現場レベルに落とし込める社員の方もいないし、教育することができないので外部に頼ってしまう上に外部の言いなりで、自社に必要のないものを導入してしまいコストだけが膨れ上がってしまいます。これが日本企業の実情です。
これら四つの事象の起点は仕方のないことではありますが幹部社員の高齢化です。幹部社員の高齢化によって、会社自体のデジタルスキルやITリテラシーの高い人材が少ないため結局外部に頼ってしまいます。そして、当たり前のことですが、外部の企業にとってはその企業のDX化を推進するよりも、ツールを導入してマネタイズすることの重要度が高いので維持コストだけが膨れ上がってしまう現状ができてしまっているのだと考えています。
既存事業のDX、新規事業によるDX
続きまして、少し話は変わりますが、先ほどお話させていただいたような状況下でどのようにDX化を進めればいいのかですが、極端な話二つしか方法がありません。一つ目に会社の本業である事業のDX化を進めることです。二つ目にデジタルと相性の良い新規事業、例えば先ほどの通販事業などの新規事業でDX化を進めることです。恐らくこの二つしかないと思います。
そして、結論から申し上げますと前者の既存事業のDX化はなかなか難しいです。先ほど申し上げた四つの理由から本業の中核を担っている人材にDX化に対する関心がないか、もしくはデジタルスキルが高くないケースが圧倒的に多いです。そのような状況下で我々のようなデジタルに詳しい人材が外部から仲介に入ったり外部から勧められたツールを導入したとしても、モチベーションが低い方が多いとなかなかうまく進めません。
日本企業のDXが失敗しやすいのは反対派や現状維持派の勢力の抵抗があるからです。その結果我々のような外部のリソースが、自分たちに実践できる例えば、「営業だけzoomで行いませんか」や「名刺管理については各営業マンが個別でファイリングしていてはシェアできないので名刺管理のアプリを入れましょう」などの局所的なDXしか進まないケースが多いです。そして、本業のコア部分のDX化が進まず局所的な部分しか進めることができないので、既存業務のDX化は難しいと思います。よほど意識の高い経営者様や高いスキルを持った方が居れば話は変わってきます。
それではそのような会社様はDX化が難しいのかと言われればそうではないです。既存事業ではなく新規事業を立ち上げDXの成功事例を作っていただいてDXの必要性をコア業務に関わっている社員に感じていただくことが重要だと思いますので、WEB通販事業の目的はこの事業によって業績を伸ばして会社を成長させることと、何よりも企業のDX化を進めていくための最初の成功事例にしていただくことです。
ビジネスモデル自体の変革
そして、もう一つの重要なキーワードとして、先ほど申し上げた名刺管理のアプリ活用やzoomを活用した遠隔商談などは厳密にいえばDXではありません。DXというのはビジネスモデル自体の変革を指す言葉なので、デジタルに対応した新規事業を立ち上げていただくことが一番の近道だと考えています。
WEB通販市場の現状
その上で我々が提案しているWEB通販事業の現状についてご説明いたします。各スライドにある市場規模や事業ごとの通販化率を見ていただくと間違いなく今後10年から20年は成長する市場であることは間違いないです。そして、右肩上がりで伸びているにも拘わらずBtoB業態の通販化率は3割で7割の会社様が足踏みをしている状況ですので我々はECマーケットに対するセミナーを様々なところでやっているので、競合が多イメージがあると思いますが、実はそれほどでもないということを認識していただきたいです。
通販事業好調企業-1ニトリ様
ここからは通販事業を実践されて成功されている企業様を紹介したいと思います。一つ目の事例はニトリ様です。ニトリ様が通販事業を立ち上げられてから本業の店舗売上も伸びていますし、通販事業の売上も直近1年間で443億から705億にまで急成長されています。
そして、なぜニトリ様の通販事業が成功したのかについてですが、ポイントが二つあると思っていまして、一つ目はコロナ禍による素ごもり需要のニーズです。二つ目はコロナ禍に関係なくニトリ様が通販事業を始める際の戦略として考えていた実店舗以上の賞品提案力です。実店舗にもソファやベッドなどは置いてありますが、それは一般受けするものだけなので。通販部門ではお客様を選ぶ大きなサイズのソファやベッドをはじめニッチな配色などを選べるようにしております。
通販事業好調企業-2ヨドバシカメラ様
二つ目の通販事業の成功事例はヨドバシカメラ様です。家電業界は昨今Amazonなどの大手CE専用のモールが参入してきた影響で大打撃を受けているのは皆様ご存知かと思います。今の消費者の購買ルーティンは実店舗で商品を見てECサイトで購入する流れが増えていますが、ヨドバシカメラ様の場合はヨドバシカメラ様の実店舗で商品を見てヨドバシカメラ様のECサイトで購入するという流れができています。
その理由としてヨドバシカメラ様は他の競合店よりも早い段階で自社独自のECサイトを持っていた上にAmazonよりも商品が早く届くということで、家電という特定の領域に関してはAmazonにはない優位性を持っていてこの優位性のおかげで売上を維持することができたわけです。こちらの事例のようなことが皆様の業界でも起こる可能性があります。今は大丈夫かもしれませんが実際にプラットフォームを作られてしまうと全てを持っていかれてしまうので、そうなる前にリスクヘッジをするのが重要になります。
通販事業好調企業-3ANA様
三つ目の通販事業の成功事例はコロナ禍で活用できなかったリソースをECサイトでうまく活用したANA様の事例になります。こちらの事例は国際線の機内食をECサイトで販売しています。現在は海外便がほとんど飛んでいませんのでそこで提供するビジネスクラスとファーストクラスの機内食を販売することによって普段海外旅行をしない人やファーストクラスに乗らない方たちが家で機内食を食べることができるわけです。この通販事業のおかげで顧客数も増加していますし、今まで廃棄するしかなかったもので利益をあげられている事例になります。
自社通販サイト
以上、成功事例紹介でございました。これら三つの事例の成功のポイントとして共通しているのが、自社通販サイトを持っていることです。我々のクライアント様も必ず自社通販サイトを持っています。なので、EC事業を成功させるために必ず押さえておかなければならないこととして、自社通販サイトを持っていることです。
続きまして、自社通販サイトの定義についてお話させていただきたいのですが、本来の定義で言えば電子取引を行うWEBサイトの総称なのですが、区分を分かりやすくするために自社で立ち上げたサイトでなおかつ自社の商品のみを扱うサイトを自社通販サイトと呼びます。そして、自社通販サイトとAmazonや楽天などの大手通販サイトの違いは多くの企業様が通販事業に参入する際に考えられるのは出店戦略や販売戦略などを考えられるのですが、最初にやるべきことはそこではなく自社通販サイトを立ち上げることです。
それはなぜかと言いますと、ECサイトを使って通販事業を運営するより、自社通販サイトを使って通販事業を運営するほうが、長期的なメリットが大きいからです。一方でモール型にも短期的なメリットがあります。一つ目はすぐに通販事業を始めることができますし、マネタイズまでのスピードが速いです。しかし中間マージンを25%取られ続けるので長期的に見ると、利益率や収益を上げることが難しくマーケティングにかけられるコストも限られてくるなど制約も多いです。
自社通販サイトはすぐに結果を出すことは難しいのですが、中間マージンがないので利益率が高いですし、独自のスキームで顧客を囲うことができますので、リピートを狙いやすいなど長期的に見てメリットが多いのが自社通販サイトです。なので、はじめはサイトを併用していただいて、後々自社通販サイトの割合を増やしていただきたいです。
通販サイトツール選定のポイント
そして、自社通販サイトを立ち上げる際に重要なポイントとして、全てをオリジナルで作るとコストがかかりすぎてしまう点が挙げられます。先ほど申し上げた成功事例企業様のように資金が潤沢にあるのであればその選択も可能だと思いますが、そうでない場合は外部の制作ツールを活用されることをお勧めします。
こちらのツールの選定ポイントは大きく分けて五つあります。一つ目は低コスト、高スピードで構築できる点、二つ目は自社の業界に適応できるカスタマイズ性、三つ目ができるだけ低い販売手数料、決済手数料。四つ目が複数の集客導線の確保、五つ目が多彩な決済方法への対応力です。これら五つを網羅しているShopifyというツールを使っていただきたいです。Shopifyというのは現在世界一の通販サイト作成ツールです。およそ175ヵ国50以上の言語に対応しておりユーザー数は100万人以上、さらに130ヵ国の通貨に対応しており、拡張機能も充実していますので、最初はShopifyの活用をお勧めしています。ここからは先ほど申し上げた五つのポイントを一つずつご説明させていただきます。
一つ目の低コスト、高スピードで構築できるについてですが、月額3,000円からのスタートで使用するのはレンタルサーバーなので、自社でのサーバー管理が不要ですので、同様の他サービスと比べて非常に低コストなのもポイントになります。実は自社で通販サイトを持つ場合データ管理用のサーバーを自社に借りるか、造らないといけないのですが、それが不要なので、大きなコスト軽減につながっています。
そして、二つ目の自社の業界に適応できるカスタマイズ性についてShopifyはコストが安いにも拘わらず約1,000種類以上のテンプレートからデザインが選択することができるので、カスタマイズ性が高く、自社と同デザインのサイトが大量にあるという状況を避けることができ、あたかもオリジナルであるかのように見せることができることもポイントです。
三つ目のできるだけ低い販売手数料や決済手数料に関しましては、当たり前ですが、楽天やAmazonなどのモール型の場合月額の利用料がかかることも多いのですがShopifyはそこがかかりませんのでかなりのメリットになります。
四つ目の複数の集客導線の確保につきましては先ほど申し上げた通りShopifyは各種SNSと連携することが可能ですので、集客力が高いです。先ほど申し上げましたが、自社通販サイトで最もネックになるのが、立ち上げ当初にアクセス数やユーザー数を増やすのが大変です。Shopifyの場合は他の通販サイト作成ツールと比べて各種SNSとの連携が容易なので、集客も比較的容易になります。
そして最後、五つ目のポイントである多彩な決済方法につきましては様々な国で使われていますので多種多様な決済方法を使うことができますし、決済手数料も国内最安値の水準です。
ですので、まず自社通販サイトを作成していただいてその作成にはShopifyを活用していただきたいというのが我々がお伝えしたいことです。