業績を上げていくための方程式を作る
今回の記事では「売上高の方程式とシェア理論」に関してご紹介させて頂きます。
船井総研は様々な業種・業界のコンサルティングをさせて頂いております。
業績アップのコンサルティングを一番の主題にブレずにずっと50年間やっているのですが、
コンサルティングで最初に取り組む作業というのは
「各業種・業界ごとの売上高の方程式」を作ることなのです。
基本ビジネスや商売で考えた場合、
この方程式はどんな場合でも必ずかけ算なのです。
なぜ足し算ではなくかけ算かというと、
何か1つの要素がゼロになれば全てゼロになりますし、
何か1つの要素が倍になれば全体が倍になるからです。
ビジネスで規模を拡大(スケール)していくためには要素の掛け算をしていく必要があり、
要素をただ1つずつ足していくだけではいつまでたっても規模の拡大はできません。
船井総研が一番汎用的に使っている売上高の方程式は、
という方程式です。
マーケットサイズ=何を売るのか、何を自社の糧にしていくのか、
商圏人口=何人ぐらいの人に、また誰を対象にしていくのか、
シェア=どのように自社の存在感を高めていくのか、
ということで、このかけ算に「業績を上げていくための要素」が凝縮されているのです。
この三要素について、それぞれ解説いたします。
(1)「マーケットサイズ」を知る重要性【戦う武器を決める】
まずはマーケットサイズを知ることが重要です。
なぜ「サイズ」かというと、自社が取り扱っている商品やサービスが
どれくらいの市場規模を持つものなのか知る必要があります。
自社が勝負をかける商品・サービスの市場感を知るということなのです。
よく私どもにご相談頂くのは
「うちはすごく面白いサービスとか商品を開発した」
「これはどこもやってない」
「ニッチトップでいける」
というような内容です。
確かにそのサービスや商品はどこも扱っていないのですが、
それをどこも扱っていない理由は、
そこに市場性がないからだというケースがあります。
市場規模がないからどこもやらないわけであって、
市場規模のないところでいくら一番を取っても売上は上がりません。
例えば、市場規模が100億あるマーケットで勝負をしたときに
そのうちの1%しかシェアが取れなかったとしても売上は1億円です。
「市場規模が5000万しかないが、どこもやってないからうちが独占できる」という場合は
100%のシェアを取ったとしても売上は5000万円です。
「一番を取ることが大事」ということはマーケティング講座で
繰り返しお話させて頂いてるんですけれども、上記の
「1%のシェアを取って売上が1億」と「100%のシェアを取って売り上げが5000万」なら
どちらを選択しますかと言ったら、間違いなくシェア1%の1億を取ると思います。
マーケットサイズを見極める必要性というのは
自社が戦っていく商品やサービス(属性)を絞っていったときに
自社がシェアで一番を取れれば経営が成り立つぐらいの市場規模があるのか、
ここで一番を取っても経営が成り立たないぐらいの売上しかないのかを見るためにあります。
もしマーケットサイズが小さく、シェアで1番を取っても
経営が成り立たないほどの売り上げしか見込めないのであれば
そこで一番を取る選択肢は絶対になくなるはずです。
そうしたときに市場規模がどれぐらいの大きさになるのか、
さらにこれをセグメントに分けたときの市場規模がどれぐらいで
さらにそれを予算帯で分けた時の市場規模はどれぐらいで……というところを
きちんと見極めることが非常に重要です。
新規事業で失敗する場合は、市場規模の見極めが間違っているケースが非常に多いのです。
私どももコンサルティングでお手伝いする際、
新規事業を考えている場合に私たちが一番にやるのは、
その商品の市場規模がどれぐらいあるのかをいろんな角度から検証することです。
そして検証の結果、市場規模が小さい場合には
「さすがに社長、ここで勝負をかけるのは危険ですよ」
「もうちょっとマーケットを広く見ましょう」や、逆に
「これはマーケットが広すぎて絶対一番取れないから、
もうちょっと絞って狭い属性にして一番取りましょう」というように
サポートさせていただいております。
新事業立ち上げや特に変わった事業とかこの市場の見極めがすごく大事です。
私も結構ベンチャー企業さんやベンチャーキャピタルさんからのご相談をいただきますが、
「このビジネスでどう思いますか」と聞かれたときに、
やはり市場規模があるかどうかをもとにそのビジネスの可否を判断しています。
市場規模があるところで大きいところで
非常にユニークなやり方でその中のニッチを狙っていると
「1兆円の市場の中のわずか1%のところを狙ってます」と言っても
「1%でも10億の市場規模があれば十分いけますよ」と言えます。
これが「市場規模10億しかないので、例えそこで100%取っても
所詮10億しか売上いかないので、中々上場は厳しいかもしれません」
というようなお話ができたりしますので、そこを知る重要性が非常に大きいです。
ですから皆さまも自社で扱っている商品とかサービスが、
どれくらいの市場規模があるのを
常に見極めていただきたいと思います。
(2)「商圏」を知る重要性【戦う相手・フィールドを決める】
二つ目は商圏を知ることが重要です。
誰に売るのかを決めることで、ターゲットエリア・ターゲット顧客を決めていく、
ということなのですが、ここもマーケットサイズと考え方は同じです。
大商圏で人口が100万人のわずか1%の人だけを顧客ターゲットにできるビジネスと
人口1000人の100%を顧客ターゲットにできるビジネスがある場合、
前者の場合100万人の1%は1万人、後者の1000人の100%は1000人ですので、
どちらで勝負したいかということは言わずもがなだと思われます。
世の中のありとあらゆるビジネスはこれからどんどん小商圏化していきます。
特にコロナ禍において宅配を利用するユーザーが増加し、
今までだったら大都市に出かけて行って購入していた購買頻度の低い商品も
今は宅配で全部買えますから、遠くに行かなくても物が買えるようになっています。
普段の生活の中で商圏がどんどん狭くなっていっているのです。
特にもう一つあるのは若い年齢層の車離れです。
人口の高齢化割合増加によって今まで車で行けていた郊外店に行かなくなってきます。
車という移動手段がなかったら行けなくなるわけですから、
行政も次第に財政負担が重たくなってきてます。
高齢化によってバスも減便させますし、
地方鉄道会社さんも減便させていく流れになっていますので、
どんどん商圏が狭くなっている傾向があります。
しかし、小商圏で勝負できるかといったらこれにも限度があります。
ですから、どれぐらいの商圏単位をターゲットにするのかを決める必要があるのです。
自社のビジネスは1万人の商圏で成り立つのか、
いや5万人なのか、それとも10万人なのか、
はたまた日本全国をターゲットにしないと成り立たない商売なのかを見極めることが重要です。
(3)「シェア」を知る重要性【戦う方法を決める】
マーケット・対象商圏が決まったら
そこで一番を取っていくことが重要だという話をさせて頂きました。
マーケットを絞ったり商圏を絞る理由は一番を取りやすくなるということなのです。
どんなビジネスにおいてもシェアで一番を取ることは非常に大事です。
一番を取るということは
「うちはこのカテゴリーでは一番ですよ」
「この地域では一番ですよ」ということを
外に向けてアピールできる ことになります。
広告とかウェブサイトでも、化粧品部門の中の男性化粧品の顔に塗るカテゴリーの、
脂を取るカテゴリーで一番になりましたと言われても
「一番なのか」という印象はつきますよね。
だから一番を取るために狭属性にしていきます。
一番というのは広告宣伝効果としてはダントツに高いです。
一番のところにお客さんが集まって来れば、
集まってきたお客さんに一番になれた商品以外の物も売っていけますので、
まず一番になることが大事なのです。
しかし、マーケットサイズ×商圏内で一番になり独占シェアを取ったところで
会社としてビジネスとして成り立たなければ、
そもそも論で会社が存続出来なくなり、単なる自己満足になってしまいます。
そこの見極めをまずはきちんとしていく必要があります。
先ほど船井総研で使う典型的な
のお話をさせて頂きましたが、
やはり各業種業界に自分たちの方程式を持つべきです。
例えば住宅の会社であればモデルハウスに来た人に対して、
何割ぐらい商談できたのか、商談した人に対して何割ぐらい見積もりが出せたのか、
見積もりを出した中で何割ぐらい成約したのか、
成約単価がいくらぐらいだったのか、を列挙した場合、
売上をアップさせるには、この中のどれかの要素を伸ばせばいいわけです。
モデルハウスの来場者を倍にしたら商談がしきれない、等の問題あるかもしれませんが、
基本的には一つの項目が倍になれば、他は以前と同じ比率でも売り上げは倍になります。
「うちはまだまだモデルハウスへの来場率が低い、
来場者数が少ないからせめてきちんと全員と商談するために
どういうオペレーションにしたらいいのか」というように、
「商談だけではなくて見積もりを出すために、
どのように接客して見積もりに繋げるトークスクリプトを作成しようか」
というところを考えていくことができます。
例えば住宅会社の場合、方程式を細分化すると、
・販促広告担当者のKPI=モデルハウスの来場者数
・営業マンのKPI=商談率と見積もり提出率
というように、各担当者が関わる業務の重要指標を要素分解出来ます。
商談率が来場者数に対して50%なら、
これを55%、60%にするというところが、まさにKPIになっていきます。
このように独自の方程式を設定し要素分解をした上でその要素のKPIの設定する必要があります。
売上とKPIが別建てで動くとなると単なる二度手間ですし、
「KPIは達成したけど業績は上がらない」となったら全くもって意味がありません。
独自の方程式を自社で作ってみることが重要で、
その方程式を細分化することを私たちでは因数分解と呼んでいます。
自社の売り上げを因数分解していったらどうなるのかといいますと、
大きな分け方でいくと、客数 × 客単価という方程式になります。
では「客数」を因数分解していったらどうなるのか。
「客数」とはモノを買ったお客さんの人数ですので、
その手前で「来た人に対してどれぐらい商談できたのか」という「商談割合」も「客数」を構成する要素ですし、
さらに「商談したあとの見積もり件数」も「客数」の構成要素の一つです。
できるだけ細かく因数分解すればするほど、KPIの実行力が上がります。
「御社の売上高の方程式はどう表したらいいですか」という質問に対して、
すぐに肌感覚で答えられる会社さまは経営課題が見つけやすいです。
過去に同じ質問をして「何か分からないけど気合いと根性で」と言われ、
どうやって改善したらいいのか分からないところもありましたので、
こういったところは重要度が高いと思います。
また、戦略的に間違いを起こすケースで一番多いのは
自社が何番手なのかを理解せずに戦略を立てることです。
がむしゃらにやれば業績は上がりはするのですが、
効率良く業績を上げていかなければ資金資産、人的資産の限界というものがあります。
ですので、それぞれのポジションごとに何をやらなければいけないのか、
どういう位置づけでいるのかを確認できなければなりません。
そして圧倒的一番をマーケットで取った後は競合対策は意味を無くすので、
自社自らが需要創造をしていく必要があります。
弊社のお客様も圧倒的一番企業になっているお客様が非常に多いため、
トップシェアのポジションになって
自らが新しいマーケットを開拓していかなければならないケースがあります。
新規事業を始めたり、今までお客さんがそのカテゴリーでは見たことのないようなサービスを提供していったり等
今までにない何かを始めなければいけません。
もう一つ競合戦略として非常に重要なポイントで言うと、
将来的に競合となり得る事業を自ら行うということです。
例えばユニクロがGUという業態をされていますが、
ユニクロよりちょっと安い価格帯で言うとGUはユニクロの一番の競合というイメージになります。
自ら自社の競合になり得る業態を作れる会社はすごいなと思います。
採用で一番を取られていたリクルートがアメリカのIndeed事業を日本に持ってきて、
それを日本で展開されているという例もあります。
Indeedの仕組みは間違いなくリクルートにとっては競合になります。
端から見れば自社の競合を自分で作ってどうするんだと思われるかも知れませんが、
競合はいつかは市場に出てくるわけです。
それならば自ら競合になる業態をやっていこうというのが
圧倒的一番店が取るべき戦略の一つ と言えます。
一番企業の戦略で何が大事かといったら
二番企業・三番企業がやっていることを必ずやるということなのです。
船井総研で言う「包み込みの発想」になりますが、
圧倒的一番になろうと思ったら、
二番企業・三番企業がやっていることも包み込んでいかないといけないという原則があります。
では二番企業・三番企業はどうするかというと、
まずは自分たちが二番企業だったら、一番企業と差をこれ以上開かないようにするということと、
戦略ターゲットは自分より上のところではなく
シェアが1つ下の他社をターゲットに当て、そこのシェアを取っていくという戦略が有効的です。
弱い者いじめ的に映ってしまうかもしれないですが、
マーケティング的には実はそれが絶対的に大事なのです。
自社より上位の会社に対して戦っていこうとすると、コストとリスクが伴います。
しかし自社より力のないところに対して攻めていくのは勝てる確率も高くなります。
現在あらゆる業種で業界再編が起きているのは、
下のマーケットを取って行くしかないところがあるかと思われます。
そうすると圧倒的一番企業は新たなマーケットを作ってきますからどんどん群を抜いていく。
圧倒的な一番になれていない、二番企業以下のところに関しては、
どんどん下から業界再編の波に飲み込まれていくという流れになっています。
必ず自社より下位の会社とか店舗を攻めつつも
自社より1個上のところには差をこれ以上開かれないよう、
できれば少しずつ下の売上を吸収しながら三番企業は二番手に近付く、
二番企業は一番に近付くということをやっていかないといけません。
こうした戦略で徐々にシェアを上げていくということなのですが、
売上、シェアというのは一気に上がらず、
最初は11%から26%と緩やかに上がっていくものです。
緩やかな成長の後で大体四番手ぐらいになったら、
そこから二番手になるまでの間はぐっとシェアが伸びて行きます。
そこでシェアを一気に伸ばして一番企業になった後は
ちょっと伸びが鈍化するところがありますので、
自社がこのマーケットの中で三番手・四番手ぐらいに食い込んできたと思いましたら、
そこで一気にアクセルを踏む必要があります。
自社のポジションをきちんと見極め、
マーケティング的に正しい戦略を取る ことがポイントになります。
以上が売上高の方程式とシェア理論に関しての解説記事でございました。
次回の記事もお楽しみに!