はじめに
皆さんこんにちは。株式会社船井総合研究所、金融M&A支援部です。本日は、財務戦略の策定のポイント、分析手法についてご説明させて頂きます。
まず、財務戦略とはどういった事かをお伝えし、財務戦略を立てる上で重要となる財務分析の5つの分析方法をお伝えさせて頂きます。
1.「財務戦略」が表すもの
財務とは、企業のお金の流れを管理し、資金を調達する業務を指しています。企業を円滑に経営する為には資金が必要となります。必要であれば、金融機関から融資を受け、株式を発行するなどし、資金を調達することもあります。投資先を選定して資産運用を行うことも、財務の重要な業務の一つです。そのため、どのような業務を行うのかは、企業の状況によって異なります。
財務戦略とは、財務についての中長期的に取り組むべき計画を立てることを意味しています。資金調達や、資産運用についての中長期的な計画や方針を決定することも、重要な要素の一つです。財務戦略に基づき、事業計画を立てることで社内に対しても、社外に対しても効果的なアプローチが可能となります。
2.経営戦略と財務戦略の違い
次に、経営戦略と財務戦略の違いについてです。企業の目的は、利益を出すことと言えるでしょう。経営戦略とは、その目的のためにどのような行動をとるのかを検討し、具体的な方針をまとめたものです。戦略を遂行し、利益につなげるためにはお金の流れを管理しなくてはなりません。企業は経営戦略を実行するために財務戦略が必要となります。
例えば、新しく店舗を開店することが経営戦略としては正しくても、財務戦略としては正しいと言えない場面もあるでしょう。経営戦略と財務戦略は別のものなのです。但し、財務戦略は、経営戦略の内容を前提として作成する必要があります。初めに経営戦略があり、その為にあるのが財務戦略です。
3.財務状況の重要性
企業を経営していく中で、新しい事業を始めたり設備投資をしたりなど、様々な場面で資金調達が必要となります。財務において資金調達は重要な業務の一つです。しかし、資金調達をスムーズに行うためには、企業の財務状況を良好に保つ必要があります。財務状況の良し悪しは、金融機関の信用格付けに影響するからです。資金調達実現の可能性を考慮せず、具体的な財務戦略を立てることは難しいでしょう。その為、財務戦略を策定する前に、現在の財務状況を把握しなければならないのです。財務状況を確認するために、財務分析を活用します。
4.財務分析① 収益性分析
企業がどれくらい利益を出しているのかを把握するために、収益性分析を行います。収益性分析では、企業が稼いだ利益の具体的な金額を見るのではない事に注意が必要です。売上に対してどれぐらいの利益があったのか、資本に対してどれくらいの利益があったのかなど、割合で比較を行います。単純な金額だけだと、規模の違う同業他社と比較することができないからです。
収益性分析には2種類あります。売上と利益の関係や、費用と利益の関係を見る取引収益性と、資本をどれだけ効率よく活用して利益にすることが出来ているのかを判断する資本収益性です。取引収益性では、粗利率、売上高営業利益率を指標としています。一方、資本収益性の指標としては、総資本経常利益率や自己資本当期利益率などがあります。
5.財務分析② 安全性分析
安全性分析では、企業が保有するお金の状況を考慮し、借入をした場合の返済能力を分析します。この分析により、企業の経営状態が安全であるかを確認します。安全性分析の結果が良くない場合は、返済能力が低いと判断され、銀行から融資を受けにくくなることが考えられます。安全性分析には、様々な指標が用いられますが、よく使われるのは、流動比率や自己資本比率です。
流動比率が高いほど、財務的な安全性は高いと判断されます。自己資本比率は、総資本における自己資本の比率を表した指標です。この指標によって、企業が自己資本によって資金を調達しているのか、銀行からの融資など、他人資本によって調達をしているのかが判断できます。自己資本比率が高ければ、安定した経営をしていると判断することができます。
6.財務分析③ 活動性分析
企業の資産がどの程度活用され、それがどのくらい売上に繋がっているのかを分析するのが、活動性分析です。活動性分析を用いて資産のバランスをチェックすることで、余分な資産はないか、無駄になっている資産はないかを判断します。資産が余っている場合、企業の活動は活発ではないと言えます。活動性分析で用いる指標には、総資本回転率、固定資産回転率があります。
総資本回転率は、資本を効率的に活用できているのかを表す指標です。この数値が高いほど、少ない資本で大きな売上を上げることができていると判断します。固定資産回転率は、固定資産が活用されているかを確認する指標です。設備投資が適切に行なわれているのかも、この指標から判断できます。
7.財務分析④ 生産性分析
企業の経営資源は、設備や資金だけではありません。従業員も含めた企業の経営資源が、売上や価値の喪失にどの程度貢献しているのかを判断する指標が、生産性分析です。生産性分析で用いる指標は、基本的に数値が高いほど良いとされています。指標が示す数値が高ければ、生産性が高く、経営資源を効率的に活用できていると判断できるからです。
主な指標として、資本生産性、労働生産性が上げられます。資本生産性は、資本に対する付加価値を金額で表したものです。数値が高いほど、より多くの付加価値をプラスしていると判断できます。労働生産性は、社員一人当たりの売上総利益を金額で表したもので、一般的に高いほど生産性が高いと言えます。労働生産性が同じである場合は、従業員の数が少ないほど、一人当たりが高い付加価値を生み出していると言えます。
8.財務分析⑤ 成長性分析
成長性分析では、企業がどのくらい成長したのかを判断します。分析には、企業の過去の状況と現在の状況を数値で比較しますが、分析の結果によって、企業の未来の成長について予想を立てることも可能です。企業には成長期があれば、成熟期もあるのが一般的でしょう。企業が向かえている局面によって、望ましい増加率は変わってきます。そのため、成長性分析においては、企業独自の事情も加味しながら、利益や売上がどの程度向上したのかを検討することが大切となります。
企業が成長するためには、財務戦略は欠かせません。財務戦略は、資金を調達したり資産を運用したりし、資金を調達するために必要なものと言えるからです。まずは、財務分析を行い、企業の財務状況を正確に把握する必要があります。その上で、ポイントを意識して、財務戦略を作成する必要があるのです。企業の経営戦略に即した財務戦略を立案しましょう。
今回は、財務戦略と財務分析の方法についてお伝えさせて頂きました。ご視聴頂き、ありがとうございました。