今回は中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)事例をご紹介いたします。
そもそもDXとは何かというところから、業績を大きく伸ばした事例を3つご紹介します。
中小企業のDM事例・解説 ≪他業種ではDXがここまで進んでいる!≫
まず、DX(デジタルトランスフォーメーション)について解説します。
中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、大きく2つの切り口に分けられます。
①デジタルマーケティングで売上を上げていく
②デジタルワークスタイルで生産性を上げていく
それぞれに対して、システムを活用することで、データが得られます。
そのデータを活用して新たな施策をする、新たなビジネスモデルを生んでいく、このような状態が、DX(デジタルトランスフォーメーション)している状態と言えます。
事例① 施行件数倍増!業界常識を辞めた葬儀社
売上・件数を増やしながらも、単価や生産性もUP!!
葬儀社のDX取り組み前後での実績は以下になります。
特筆すべきは、売上・件数を増やしながらも、単価や生産性も高まっていることです。
そのため、業界の常識もあって難しかった、月8日の休みも取れるようになりました。
さらに、売上アップ、社員の生産性アップだけでなくて、お客様の満足度も上げています。
これらを実現したのが、CRM(顧客管理システム・データベース)を徹底した「コンタクトセンターモデル」を取り入れたことです。
「コンタクトセンターモデル」では、お客様からのお問い合わせ(インバウンド)を担当者が受け、受けた情報をシステムへ入力します。
入力された情報は、システムを通じて指令塔役へ届き、司令塔役が案件ごとに誰に任せるか、仕事を振り分けます。
また、スタッフ達も、システムからインバウンドで受けた情報を見ることができます。
情報を見た上で、営業、施行、アフターフォローができるため、次のアクションを取りやすくなります。
アウトバウンドコールとは、施行が終わった後、「四十九日」や「一回忌」、「三回忌」などのイベント前に、お客様へどういう準備をすべきか、などを連絡するアフターフォローの一環です。
「それはどういうふうに進めたらいいの」や、「その時に必要な物を買いたい」など言われた時、アフターフォロー担当者が、お客様と直接打ち合わせをします。
担当者は、インバウンド担当者が得た情報、営業スタッフさんが得た情報、施行時に得た情報などを見て営業ができるため、受注率が上がりました。
業績を上げるコンタクトセンターのポイント
こちらの葬儀社で導入した、コンタクトセンターのポイントは5つあります。
今回は特にシステムに関連した、2つをご紹介させていただきます。
まず1つ目は、1担当者制から1施行から分業制に変更したことです。
葬儀社はお問い合わせ〜施行後のアフターまで、1人で担当することが業界の常識になっています。
この業界の常識が、休みを月8日、きちんと取れない原因になっています。
たとえば、明日が休みでも施行のご依頼のお電話があれば、打ち合わせへ行き、その場で施行のご依頼をいただくことが、ほとんどです。
ご依頼をいただいたら、翌日にお通夜、告別式、後飾り、請求業務などが発生します。
これらを1人の担当者が担うため、事前に休みをとっても、受注をすると休み返上で働く必要がありました。
そこで、この葬儀社では分業制を取り入れました。
搬送・ご安置は外部委託もしながら、打ち合わせ・受発注は受注担当、施行担当は最終打ち合わせ〜後送りまで、のような分業です。
これによって、それぞれ担当業務ごとに、打ち合わせや施行に行き、シフト通りに休みが取れるようになりました。
1担当者制のメリットは、お客様情報をずっと1人の担当者が持っているため、情報共有不足がないことです。
分業制になると、「前話したことを、覚えてくれていない」などが課題になるため、きちんとシステムに入力することで情報共有しています。
情報共有が正しくできれば、お客様からすればいつ電話をしても、打ち合わせをした担当者以外でも、自分の欲しい回答がもらえるため、安心して任せることができます。
それが実現できるのは、情報が全てシステムに入っているからです。
担当者1人だけでなく、葬儀社全員が自分の大切な故人の事を慮っていると感じていただくことができ、感動していただけたという話もありました。
この分業制を取り入れるためには、組織ごと変えていく必要があります。
葬儀社は従来、会館ごとに人を配置する状態でした。
A会館は施工、B会館は施工がないケースでは、B会館で待機者2名の手が空いているといった課題がありました。
分業制を実現するために、会館に人を紐づけず、案件ごとに司令塔からスタッフの配置指示を出すように変更しました。
エリアごとに分かれていた組織を受注部、施行部、アフター部、マーケティング部の部門を区切り、受注部の中からエリアごとに案件に向かう体制になりました。
これにより施行件数を500件から1,000件に倍増しましたが、人員は2名増やすだけで実現できました。
分業と組織体制の変更があってこその成果になります。
この2つの分業体制を実現するためには、「お客様情報の引継ぎ」、「担当者ごとの業務把握」、「最適な人員配置」、「配置後の情報をリアルタイム共有」が重要です。
そこで、2つ目のポイントとなる、顧客満足度を上げる、CRM(顧客管理システム・データベース)の導入が必要になります。
顧客管理システムは、「Excel」、「スプレッドシート」、「チャット」、「業務システム」など、多岐にわたります。
それぞれのメリット・デメリットを整理した上で、汎用性の高い「kintone」(顧客管理システム)を活用し、今の成果を出しています。
事例② 売上2.2倍&労働時間削減!土地家屋調査士
土地家屋調査士のDX取り組み前後での実績は以下になります。
2018年から2021年で売上・生産性は2倍以上になりながら、1人あたり労働時間の削減も実現しています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)実現の3つのステップ
こちらの土地家屋調査士では、以下3つのステップを順番に取り入れました。
①ワンマン測量
②分業制
➂デジタルツ-ル・システム活用
①ワンマン測量
土地家屋調査士は測量をする際に、2人で測量するのが一般的です。
しかし自動追尾型の機械を使うことで、もう1人の役割を機械が担うことができます。
結果、測量に2人でなく、1人で行けるようになります。
そのため生産性が上がり、測量件数も増えました。
②分業制
葬儀社と同様、土地家屋調査士も1担当者制をとっている会社が多いです。
しかし、分業制を取り入れて、測量担当者は担当者しかできない業務に専念させます。
それ以外の業務をパートスタッフに任せるようにしました。
パートスタッフにも業務を任せるために、システムが必要になってきます。
➂デジタルツ-ル・システム活用
システムを入れることで、3つのメリットが出てきます。
「見える化」「工数管理」「〇〇レス」です。
分業のためには、今のスタッフのスケジュールや件数を把握する必要があります。
そのため、スタッフの状況や、経営数値を見える化しています。
また、システム導入によって、工数管理もできます。
「標準コースは90日」と仮決めし、90日後に完了したのかをシステムに記録します。
記録を基に、なぜ遅れたのか、どの業務で遅れたのか、が見えるようになります。
課題が見えてくることで、次への改善ができます。
〇〇レスもシステムの特徴です。
分業制を取り入れると、「これをやって」「あれをやって」を伝える必要があります。
先程の葬儀社の事例では、司令塔ポジションをつくることで解決しています。
土地家屋調査士の事例では、システムで「指示レス」を実現しています。
システムに業務を登録すると、必要な工程が出てきます。
さらに、工程ごとの担当者が自動で登録・保存されます。
同時に、担当者へ自動で指示を出します。
工程の登録さえすれば、システム上から指示が出るため、伝達漏れがなくなりました。
また、以前は工程が明確に決まっておらず、担当者ごとに品質にバラつきがありました。
しかし、工程まで決めたため、事務所全体の納品物の品質も上げることができました。
工数管理とは、登録日からどれぐらい稼働して、日数経過したのかを示しています。
日数過ぎたものは赤く表示されるため、後日会議でどうして日数を過ぎてしまったのか、を詳しく見ることができます。
また、目標工数を立てた業務が、平均的に何日遅れているのかも見られます。
この業務を早く終わらせるために、何をすべきかを考えるのに役立ち、ドンドン生産性を上げています。
リアルタイムで経営数値・KPIを見えるようにして、社員の数値意識も高くなりました。
実際に社員から「自分の案件をもう少し増やしたい」と、自発的な意見が出ています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)化がもたらした付随効果
DXを通じて、顧客満足度を上げることもできました。
今までは、ご依頼を頂いてから、納品まで2日~3日かかっていました。
これが当日10時までの発注であれば、当日17時に納品できるようになりました。
この即日対応が、他との圧倒的な差別化になり、お客様から感動をしていただけ、また新たな受注に繋がりました。
その他にも、測量移動時間の軽減、商圏拡大ができました。
今まで測量の現場は、事務所から行くため、移動時間が多くかかっていました。
システムで管理できるため、自宅から直行・直帰ができるようになりました。
これによって、移動時間を短縮できました。
結果、従業員の住んでいる各地エリアまで、商圏を広げることができました。
事例➂売上3倍・生産性2倍!司法書士事務所
司法書士事務所のDX取り組み前後での実績は以下になります。
2017年から2020年で売上は3倍以上、時間当たり生産性も2倍以上になっています。
こちらを実現したのは、2つの戦略です。
①相続分野に特化・注力するマーケティング戦略
②デジタルツールを取り入れたマネジメント戦略
①相続分野に特化・注力するマーケティング戦略
2015年〜2020年では大きく、売上向上時期と生産性向上時期に分けられます。
まず、はじめに取り組まれたのが、マーケティング戦略です。
事務所として、相続分野に注力し、売上を伸ばしました。
当時は代表とパートスタッフの計2名で、代表自身が主力で売上を作っていました。
その後、遺産整理業務に注力しました。
そして、売上が上がってきたので、出店をしましたが、課題も生まれました。
その課題とは、代表に業務が偏ってしまい、負担が増加したことです。
業務処理については、マニュアルを作って効率化しようと思いました。
しかし、きめ細かな対応ができるようにと、マニュアルが細かくなったため、業務処理が非効率になってしまいました。
さらにこの時期の課題として、有資格者負担が大きかったことです。
代表が担当していた頃から、負担だった部分がそのまま有資格者の負担になりました。
人数を増やしても、負担が分散されるだけで、改善ができていませんでした。
支店を展開していても、担当者の負担が増えると、売上が伸びず、退職者が続出してしまいました。
②デジタルツールを取り入れたマネジメント戦略
そこで2018年より、マネジメント戦略を大きく変えました。
また、生産性向上を図るために、5つのことに注力しました。
今回は、そのうちデジタルシフトについてご紹介いたします。
まず、細かすぎて非効率なマニュアルを廃止し、代表自ら業務処理体制を再構築しました。
同時に、デジタルツール、「kintone」(顧客管理システム)を取り入れて、デジタルに合わせた業務処理体制を作っていきました。
体制づくりを従業員に任せようとする会社もありますが、従業員だけでは変えられません。
それは、今の体制や、やり方に課題を感じられないからです。
入社した時は、「なぜ、こんな不便なことやっているのか」と思う人も、「今のやり方が正しい」と言われ続けていると、不便さを感じなくなります。
そのため、体制づくりは代表者自身がすることが必要になります。
ここで取り組んだことは、案件の一元管理とムダの削除です。
今までの業務処理体制では、紙やスプレッドシート、ワードなど管理体制がバラバラでした。
そのため、利益率や生産性を出すのも一苦労でした。
そこで、3つのデジタルツールを取り入れ、これらを連携させて利用しています。
・「kintone」(顧客管理システム)
・カイクラ(電話応対システム)
・BOX(クラウドストレージ)
「kintone」(顧客管理システム)では、電話対応時に聞き取りが必要な項目を入れています。
今まではスプレットシートに入れており、応対する人ごとに入力もバラバラでした。
それを、システムで項目を統一し、二重入力が無くなりました。
また、案件管理にも活用しているため、入力された情報も踏まえて、誰に任せるかを判断できるようになりました。
案件の一元管理と無駄の削除、情報の見える化したため、スタッフも利益に対する意識が向上したそうです。
カイクラ(電話応対システム)とは、電話が鳴った時にお客様情報をパソコン画面に表示するシステムです。
「kintone」(顧客管理システム)と連動させることで、過去の反響情報などが、電話が鳴った時にすぐに出せるようになります。
これらのシステムによって、電話対応で担当者不在だから答えられないことがなく、電話対応している人がその場でお客様に情報を伝えることができます。
結果、担当から後で折り返すといった、電話対応の工数が大幅削減できます。
情報が表示されるからこそ、資料探す手間がないことも、カイクラ導入のメリットです。
BOX(クラウドストレージ)とは、インターネット(クラウド)を介して利用するファイルの保管場所のことです。
こちらも「kintone」(顧客管理システム)と連携をさせることができます
「kintone」(顧客管理システム)で新たにお客様情報を登録した時点で、お客様専用のBOX(クラウドストレージ)が自動で作られます。
この中にお客様ごとに必要な資料を入れて保存できます。
BOX(クラウドストレージ)は、フォルダごとにURLが発行されます。
そして、そのURLを自由に貼ることができます。
ChatWork「チャットツール」ならここ、「kintone」(顧客管理システム)ならここ、と貼ることで、アクセスをスムーズにできます。
さらなる生産性アップのための3つポイント
さらに生産性を伸ばすために、2020年から新たに取り組んでいることがあります。
その成果が出ている取り組みのポイントを3つです。
①経営理念・経営目標・行動指針の浸透、情報の透明性
②データ連動
➂組織化・分業化
①経営理念・経営目標・行動指針の浸透、情報の透明性
「kintone」(顧客管理システム)内の掲示板に、経営理念や行動指針・目標を貼り、目標に対しての結果と実績を常に見える化しています。
これが「情報の透明性」です。
そのため、どういうふうに自分が動けば、会社の利益が上がるのかが見えます。
また、担当者同士の受注の実績も見える化しました。
実績が見えることで、社員の意識が上がってきます。
どうしたら好調な人のようにできるのか、成功事例を聞きにいくようになりました。
②データ連動
データはいろんなシステム入れまくるのではなくて、システム同士を連携させて、データを連携させる、データ連動性が重要です。
その時使いやすいツールを使いながら、それぞれをきちんとと連動させます。
連動していることで、ほぼ一貫して納品までのデータを集めることができます。
データが連動していないと、情報の把握がすごく複雑になるため、連動させて必要なデータを「kintone」(顧客管理システム)に集めています。
➂組織化・分業化
本日ご紹介した、すべての事例に当てはまりますが、非常に重要です。
業務をするのは、システムではなく、社員です。
そのため、社員が動きやすい、働きやすいように進める必要があります。
そのために、やっていくべきは社員との個別の面談です。
社長が個別面談をすることもあれば、管理者の方が個別面談をすることもあります。
面談は、社員との日々のコミュニケーションをしっかりとした上でもものです。
面談で出てくる改善点などもシステムにうまく取り入れて、業務の標準化・平準化をしていただきたいです。
事例から見たDX(デジタルトランスフォーメーション)の成果
①同じ品質の情報を見られるため、業務効率化ができます。
システムの一元化で、いつでも、どこでも、誰でも、同じ品質の情報が見られます。
②データ連携によって、ストレスフリーで働けます。
各シーン(会社の状況)で利用しやすいシステムを使い、データ連携させます。
➂同じゴールに向かって仕事ができます。
経営理念・目標・行動理念などを毎日見えるようにするため、社員全員のゴール意識が高まります。
④常に数字が見えるため、数値意識が生まれます。
数値意識が生まれると、何となく業務をやることがなくなります。
ハッキリと「このためにこの業務を何分でやる」、「何日で提出しなければいけない」などを見える化して、透明性をつくります。
⑤コミュニケーションが増え、売上や生産性を上げられる強い組織になっていきます。
業務効率化した時間で、コミュニケーションの時間を新たに設けられます。
いろいろな取り組みは、雑談から生まれてくることも多いです。
何気ないコミュニケーションに時間を割くことで、強い組織を目指せます。
DX化は目的でなく、手段
最後にお伝えしたいことは、DX化は目的ではなく、手段です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、あくまで図の「STEP.01」です。
これから求められる組織になるための「STEP.01」であり、土台です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)と言うと、抵抗感があるかもしれません。
まずは、デジタルツールをうまく取り入れて、デジタルシフトすることが大切です。
とりあえずツールを入れてデジタルシフトするだけでは、うまく行きません。
デジタルツールを通じて、「何のために」、「何をしていくのか」、「どこを目指すのか」をきちんと作った上でDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現してください。
こちらの記事より、そのヒントが見つかれば幸いです。
他にも、最新の業績アップ事例を踏まえて、事業に役立つ情報を発信していく予定です。 楽しみにしていてください。