日本企業の9割を占める中小企業は、常に新たな商品・サービスのターゲットとして注目されています。特に近年、SaaS(Software as a Service)型ツールは、中小企業の多様な課題を解決するソリューションとして日々開発され、多くの企業がこの市場に参入しています。しかし、その中で実際にサービスが「売れている」企業はごく一部であり、多くの企業が期待通りの成果を得られずに苦戦しているのが現状です。
あなたがもし、「中小企業向けに商品・サービスを販売したい」と考えている企業の部門責任者、あるいは経営者であったとして、この現状をどのように捉えているでしょうか?
中小企業向けSaaS市場の現状と飽和するソリューション
中小企業向けのSaaS市場は、まさに群雄割拠の様相を呈しています。その種類は多岐にわたり、例を挙げるとキリがありません。
- 採用・人事関連SaaS(採用管理システム (ATS)、タレントマネジメントシステム・・・etc)
- 営業・顧客管理関連SaaS(顧客管理システム (CRM)、営業支援システム (SFA)・・・etc)
- 会計・経理関連SaaS(クラウド会計ソフト、請求書発行・管理システム・・・etc)
- 業務効率化・生産性向上SaaS(オンラインストレージ・ファイル共有サービス、• ノーコード/ローコード開発プラットフォーム)
これらはごく一部の例に過ぎませんが、日々新たなSaaSが市場に投入されています。しかし、繰り返しになりますが、実際に多くの顧客を獲得し、安定的な売上を上げている企業はごくわずかです。
なぜ、これほど多くの魅力的なSaaSが開発されているにもかかわらず、「売れない」という壁にぶつかってしまうのでしょうか?
「売れない」根本原因:中小企業向けマーケティングの精度不足
要因は様々考えられますが、私たちが日々多くの経営者様とお話しする中で痛感するのは、その一つが「中小企業向けマーケティングの精度不足」にあるということです。
船井総合研究所では、年間1,500本を超える経営者向けセミナーを実施し、日本全国の経営者様の経営課題と日々向き合っています。その中で、中小企業様向けにサービスを提供しようとしているSaaS型ツールの紹介を見るたびに、「中小企業の経営者様が求めているのはそこじゃないんだよな…」「もっと〇〇を訴求した方がいいのに…」と感じるケースが少なくありません。
特に、中小企業向けに商品・サービスを提供する上で肝として押さえるべきは、「経営者の人物像」を深く理解することです。
これらの特性を深く理解し、アプローチに活かすことが、中小企業へのアプローチ成功の鍵を握ります。
中小企業経営者が最優先する「売上」と「利益」
特に重要なのは、SMB経営者がもっとも関心を持っているのが、何よりも「売上」と「利益」であるという点です。従業員満足や働きやすさ、リスクマネジメントももちろん重要ですが、多くのSMB経営者にとって、これらは最優先事項にはなりにくいのが実情です。
なぜなら、売上と利益は単なる中長期の指標ではなく、目の前の資金繰りや従業員への給与支払いなど、企業の存続に直結する即時性の高い指標だからです。中小企業は経営資源が限られているケースが多く、「会社が明日も存続できるかどうか」に直結する売上・利益の確保が、経営者の思考の中で非常に大きなウエイトを占めています。このため、売上や利益に直接的につながらない施策には、どうしても興味を持ちづらくなる傾向があるのです。
さらに、SMB経営者は投資対効果(ROI)を極めて重視する傾向があります。「長期的に見れば良い投資です」と言われても、その判断ができるだけの余裕がないケースが多いのです。財務的な基盤が脆弱な企業では、今月のキャッシュフローがどうなるかが、最も切実な関心事です。そのため、成果の見えにくい投資や、将来的なリターンを前提とした提案には慎重になりやすいのです。
例えば、あるSaaSが「従業員の残業時間を〇時間削減できます」と訴求したとしましょう。もちろん残業時間削減は重要ですが、多くのSMB経営者が聞きたいのは「それによってどれだけ人件費が削減できるのか?」「削減した時間でどれだけ売上に貢献できるのか?」といった、より具体的な金銭的メリットです。あるいは、「採用活動が楽になります」という訴求も、最終的に「優秀な人材を短期間で採用できるようになり、結果として売上アップにつながる」といった、具体的な成果を提示できなければ響きにくいでしょう。
このように、中小企業の経営者の思考回路を理解し、彼らが本当に求めている「売上向上」や「利益確保」に直結するメリットを明確に提示できるかどうかで、サービスの成約率は大きく変わってきます。
船井総研が提供する中小企業攻略のノウハウ
中小企業向けに商品を「売る」ためには、彼らの「痛み」を正確に理解し、その痛みを和らげる具体的な解決策を、彼らの言葉で語ることが不可欠です。技術的な優位性や多機能性だけをアピールしても、経営者の心には響きにくいでしょう。その際、以下のようなポイントを踏まえたソリューション開発を心がけることがポイントです。
船井総合研究所では、これまでの豊富な経験と実績に基づき、中小企業をターゲットとする企業様が、効果的なマーケティング戦略を構築し、持続的な売上成長を実現するためのノウハウを提供しています。私たちは、中小企業の経営者が何を考え、何に悩み、どのような言葉に反応するのかを知り尽くしています。
もし、あなたが中小企業向けSaaSを提供する企業として、あるいは中小企業に新たな価値を提供したいと考える企業として、現状の売上になにか課題を感じているのであれば、ぜひ私たちの知見をご活用ください。中小企業市場で「売れる」ための具体的な戦略と、それを実行するための支援をさせていただきます。
興味がある方は、ぜひ以下のページをご覧ください。中小企業向けビジネスを成功させるためのヒントが、きっと見つかるはずです。
執筆者: 事業イノベーション支援部 マネージング・ディレクター 吉田 創 よしだ はじめ |