私は、中小企業の経営者からコンサルティングの相談をされたとき、お受けする前に、「社長の夢は何ですか?」と尋ねるようにしています。
実はこのとき、明確に夢を語ることができる社長は、ほんの1割程度にしか過ぎません。 おもしろいのは、そんな社長は、コンサルタントだけでなく、社員や取引先、経営者仲間、そして顧客にも、夢を語っていることです。 そして、その夢に協力したいという人が増えていき、いつの間にか、「社長の夢」から「皆の夢」へと変わっているのです。 そんな社長が率いる会社は、2ケタ成長を持続して、10年後には5倍から10倍へと業績を伸ばし、地元で誰もが知る優良企業へと変貌を遂げています。つまり、社長の夢へと着実に近づいているのです。
【夢をカタチにする地図】 ただし、夢はただ語れば良いというものではなく、協力者たちを導くものがなければなりません。そのために必要なのが、「夢をカタチにする地図」、つまり経営計画書です。 明文化したり、数値化したりすることで、社長がその夢を実現するイメージが湧き、協力者の共感をも得ることで、「社長の夢」が「皆の夢」へ変わり、動き始めるのです。 経営計画書をつくる上で最も大事なのが、夢の明文化です。ポイントは、次の3つです。 1つ目は、「夢」を「目的」に変換することです。何を実現するのか?どういう会社にしたいのか?これらを凝縮して、1つの言葉にします。これが、企業としての「パーパス(存在意義)」となり、経営する上でのエネルギーになります。 2つ目として、「パーパス」をもとに、「会社が向かう未来の姿」を想像し、「ビジョン」として明文化します。 3つ目は、「ビジョン」をもとに、「実現のためのロードマップ」に落とし込み、企業成長の基準となる「ミッション」へと変換します。 このように、「パーパス」「ビジョン」「ミッション」を、夢を実現するための不変の価値観となるまで徹底的に落とし込むことが、社長として、一番重要なことなのです。
【明文化から数値化】 「ビジョン」「ミッション」を明文化したら、どの事業でどんな業績をつくるのか、「事業ポートフォリオ」をつくり、事業数値計画に落とし込みます。その際、事業ごとに売上計画と損益計画をつくることも大事ですが、それと同じくらいに大事なのが、組織計画と人員計画です。 それは、会社は究極的には、人を増やし成長させることでしか、業績を上げることはできないからです。 そして、事業数値計画をもとに、経営数値計画、すなわち「損益計算書」と「貸借対照表」に落とし込みます。 しかし、「事業数値計画」と「経営数値計画」は、市況により事業の成長スピードが変動したり、新規事業が加わったりすることで、事業ポートフォリオが変わることがありますので、毎年ブラッシュアップすることが必要です。そして、この「微調整」こそが、夢をより早く実現するための、社長にとって大事な仕事なのです。
中小企業の社長は、日々の仕事に追われ、日々の売上をつくること精一杯で、いつの間にか夢を見失っていたりします。そうならないためにも、毎年、「夢をカタチにする地図」である経営計画書をつくり、社員や取引先等に公開して、「社長の夢」から「皆の夢」へと昇華させてください。 |