【インタビュアー】株式会社船井総合研究所WEBマーケティングユニットシニアプロフェッショナル宮井亜紗子(以下:宮井)
【インタビュー】No Company,inc.代表取締役秋山真氏(以下:秋山)
宮井:今日は博報堂グループの採用マーケティング支援企業であるNo Companyの
代表の秋山氏にご登場いただき、
「SNS、ウェブメディア、採用サイトどれをどうやって使ったらいいの?」
という質問をさせていただきたいと思います。
初めに、どのようなサービスを提供しているのか教えていただいてもよろしいでしょうか。
No Company,inc.について
秋山:まず最初に僕のほうからNo Companyについてお話ししたいと思います。 No Company,inc.という会社は、「スタイルがいきる社会へ」というコーポレートスローガンを掲げています。
会社としては割と新しく、2021年10月1日に博報堂グループの新会社として設立を発表しました。
コミュニケーションの力で組織と人を変えていく
実際の事業としては、この会社の前身となる採用コミュニケーション事業を博報堂グループのスパイスボックスという会社で一事業部としてやっておりまして、その事業部をスピンアウトしたかたちで子会社化したという経緯です。
サービス自体は、大きく二つの領域でサービスを展開しております。
一つは企業の採用支援をするという領域で、まさに今日の話題にもありますが、採用で使うメディアや媒体が非常に多岐に渡ってきました。
ですので、そういったものをマーケティングのノウハウや、我々で言う「SNSのデータ分析」を介してターゲット設計からコンテンツを作り、発信するまでお手伝いします。
もう一つは、組織開発や人材開発のお手伝いもしています。
SNSのデータ分析、ビッグデータの解析を踏まえ、世の中の働く人のインサイトや、企業が実際に取組まれていることに対しての口コミを分析し、その会社が従業員をより良くしていくためにはどうしたらいいのかというコンサルティングやリサーチを担当しています。
宮井:ありがとうございます。
ようやくウェブサイトができてきたのに、今おっしゃったように、色々と採用に関するメディアがある中で中小企業の経営者はどの媒体をどのようなタイミングでどう使っていいか、混乱していると思います。
そのような中で、一体何からどう使っていったらいいのかを教えていただけますでしょうか。
求職者の採用情報接触環境の変化
秋山:重要なのが、何からどう使うかというのもまさにそうですが、それくらい迷うくらい手段があるというのが、この採用市場のトレンドとして大きいと思っています。
コロナ禍で採用のオンライン化がすごく進む中で、求人媒体や新卒採用で言うと、合同説明会やナビサイト等で、企業を知って調べてエントリーしてという時代から変化しています。
ナビサイト自体はもちろん使いますが、そのナビサイトにたどり着く前に、例えばSNSを介してこのような働き方あるのだとか、このような職種があるのかというのを知ったり、そこからさらに働き方や採用関連のコンテンツを出すウェブメディアも増えています。
その中でさらに企業のことや仕事のことを知って興味を持ち、ある程度受けるところを決めてからナビサイトや採用サイトにくる傾向がこの数年、非常に強くなってきています。
このエントリー以前のタッチポイントが求人媒体や採用サイト以外に分散しているという構造を捉えるところから始めると非常にいいかなと思っています。
宮井:私が新卒の採用活動をしていた時はリクナビやマイナビさん等のサイトにいけば大体情報が揃っていました。
なのでまずそこを見て、情報を取りいっていたのですが、今の求職者とか学生は、それ以前に自分たちが積極的に取りにいっているという傾向なのでしょうか。
秋山:結論はそうですが、市場背景的なところが二つあります。
一つは学生さんの就活の早期化と長期化です。
経団連が通年採用を数年前から発信しているなどのお話がまずあります。
それよりもどちらかと言うと、就活生を起点に限られた、3年生の3月のタイミングで解禁になってから就活をするというよりかは、やる人はもう1年生、2年生のうちからインターンに行ったり、3年生でも早く始める子もいれば遅く始める子もいるという中で、情報にアクセスをする時期がシンプルに分散してきたという市場背景が一つあります。
あとは、求職者の求める情報の中身も少し変わってきていて、ナビサイトに表示されている情報も重要ですが、それ以外にその企業で勤めている社員さんの価値観が分かる情報や企業の雰囲気を求めていくとなると、情報求人ページというよりは、SNSで色々な多角的な情報を見ながら情報収集をしていくということかと思っています。
まとめると、求職者の情報を求めるタイミングが変わってきたことによって、合同説明会やナビサイトのようなシーズンで行われるイベント以外にも、情報収集ニーズが増え、求める情報の中身で、SNSや他のウェブメディアにある情報を求めるようになったことが大きいかと思います。
宮井:見てくださっている経営者の方は、40、50代の方が多いのかと思うのですけど、たぶん当時だと会社説明会に行ったり、OB訪問をしないとなかなか雰囲気が分からなかったのが、今はメディアを通じて分かるようになったということですね。
秋山:そうですね、もちろん全部とは言わないですけど、割と分かりやすくなっている背景もあるかと思います。
企業の採用広告におけるSNS・採用メディア利用増加
エンゲージメントが増加している採用・キャリア関連のメディア
ユーザー側が変わっていくので、企業側もこの2年は、〇〇ナビとかとは違う媒体にあえて広告枠を作り、記事を出して社員のインタビューを載せることでよりプッシュで発信する。
採用サイトはどうしても受け皿で検索した人が入ってくるものなので、そうではなくてプッシュで外の媒体で発信するということを強化しています。
あとは広告枠以外にもWantedlyやnoteを使うと、SNSにもnoteなどコンテンツがシェアされやすかったりするので、そのような枠を作り社員さんのインタビューや座談会をコンテンツ化して載せていくということをします。
多くの企業が採用メディア・SNS上での発信を実施
SNS広告の事例ですが、SNSも運用だけでなく、広告というメニューを使います。
運用だとリソースや継続の観点からなかなか採用担当者を確保するのは非常にハードルが高いですが、広告であればスポット、スポットで出したいときに出せるというメリットもあります。
先程のユーザーが変わっているというお話がありましたが、このような手法を使って、そこに対応するという動きはこの数年進んできているかと思います。
記事広告で実際のメディアで有料の広告枠で出稿されている記事もあります。
宮井:SNS、Twitterもありますね。
エンゲージメントによる情報拡散のイメージ
秋山:SNSやnoteののお話を出しましたが、企業の採用担当者の方も、どうやって日常的にターゲットが見ているSNS上に情報が露出されやすいかということをよく考えて、そこの一つのポイントがエンゲージメントという仕組みが、SNSで言うと非常にポイントかなと思っています。
例えば、Twitterで言うと、ニュースやウェブサイトの記事、個人や企業の発信の一次情報が、Twitter上でユーザーに、一次エンゲージメント、例えば「いいね」やリツイート等リアクションをされると、その一次エンゲージメントをしたユーザーのフォロワーたちのタイムラインにも情報が出ます。
その人のリアクションを通じて「あっ、こういう人の働き方いいな」とか、「あっ、こういうこともやっている会社なのだ」というのを認知するきっかけというのができたりします。
効率的にリーチする、情報発信を最大限にするためにいかにソーシャルエンゲージメントが出やすい媒体を選ぶかとか、情報や中身を作っていくかとか、そのようなところを気にしていくと、より日常的にターゲットが見ているメディアでの情報も増えるので、それこそ企業名がなかなか知られてなかったり、BtoBで採用広告に苦戦している企業はこういったところを気にしておくと良いかと思います。
宮井:今の話で言うと、最初の媒体選びも結構重要なのですね。
秋山:おっしゃる通りです。
メディアを選ぶときもSNSでもそれがどれくらいポテンシャルがあるのか、分かりやすく言うと、SNSでもアカウントを持っているメディアもありますし、アカウントを持っていなくても記事がSNS上でシェアされやすいメディアがあるわけです。
そこをどれくらい把握して逆算して考えられるのかは重要かと思います。
宮井:SNSでつぶやくだけでは駄目なのですね。
ターゲット学生・求職者にどのタイミングでどう情報を届けるのか
秋山:僕らもこのオンラインで採用広報、企業さんを支援するときに、こういった導線を考慮します。
採用広報の一つ一つのSNSもですが、ツールがどこで何を伝えるためのツールなのかををちゃんと考えておくことが重要だと思っていて、今日の媒体選びのポイントで言うと、ここからがかなり重要になってきます。
認知〜興味、共感、検討、選考アクションなどがあります。
自分たちが採用広報で採用ターゲットに対して情報を届けるときに、どういう状態の、要するにこのどこにいるターゲットに、より情報を届けたいのかによって使うべきツールは違ってきます。
求職者が情報を取りにきている状態なのか、全然その企業のことを知らない人に伝えたいのかによって、手法や媒体が異なってくるので、どこの領域で何を伝えるのかというお話と、あとは導線設計、選考までつながっている流れになっているのかというのを組んでいくのが重要かと思います。
宮井:これは、なかなか組むのが大変ですね。
秋山:これは全部やりましょうという話ではなくて、今どのようなことが各企業でされているのかというのを一覧化したものなので、もちろん企業によってはSNSの広告と採用サイトという1本で導線を作っていますという企業もいます。
ですので、こういった多岐に渡る手法の中から何を選択していくかということかなと思っております。
宮井:これができたらベストみたいな感じでしょうか。
秋山:これができたらベストですけど、さすがにここまで全部網羅的にしている企業はとても少ないのではないかなと思います。
一番最初にご説明した、一概にSNSやウェブメディアに分散しているのではなくて、領域によってその中で分散をしているのですけども、見ている媒体が違うというお話があるのですけど、やはりそういったものを捉えずに、オンライン採用のコンテンツ企画を始めてしまうと、例えば以下のような失敗例が挙げられます。
コンテンツの企画から考えてしまう
→ どの媒体で使用するコンテンツが想定していなくて、結果それをSNSで発信しても全然見られなかった
宮井:それ、ドキッとしました。
秋山:ほんとですか。
宮井:はい。ドキッとしました。
これはつまり媒体を先に選んでから、それに合うコンテンツを考えなきゃ駄目だよということですね。
秋山:おっしゃる通りです。
例えば、先ほどのマップで言うと、割とInstagramやTikTokやTwitterとか日常的に見る媒体で企業のことを知るには、まだその企業に非常に興味を持っているわけではないと思うので、いきなり企業色全面の発信をしても見てもらえません。
何を伝えるか、どういうテイストでというのも含めて、どの媒体で使用するコンテンツかを考えておくというのは重要かなと思っています。
宮井:なるほど。
秋山:あともう一つ、すごいあるあるなのが下記です。
採用サイトをリニューアルしたのだけど全然見てもらえない
→ 採用サイトよりも前段階のフェースに課題があることを見落としている
宮井:ドキッが2回目です。
秋山:そうなのです。
採用オンライン化がすごく進んでいるので、採用サイトをリニューアル
↓
しかし採用サイトをリッチにしたのに全然見てもらえない
というお話は、まさに一個前の導線設計を見落としているのです。
そもそも採用サイトは割と興味を持ったり選考中ぐらいにやっと見てくれるとかというもので、その前の課題はクリアできているかとか、来てもらうための導線はできているのかというのが非常に重要かと思っています。
宮井:確かに。
だからといって採用サイトがいまいちだとそれはそれで駄目ですか。
そこよりも先に導線を作ってからの方がいいですか。
秋山:そうですね。
採用サイトは割とオンライン採用の中で要だと思っていて、人に会えない分そこで情報を見たりすると思うのです。
なので、最低限まずは何もないのだったら、採用サイトからちゃんと作るということをしたほうが僕はいいかなと思います。
宮井:分かりました。
しっかり採用サイトは作るけれども、作って終わりではなくて、ちゃんと導線考えようねということですよね。
秋山:おっしゃる通りです。
どの領域の発信を強化するべきか?優先度を整理する
秋山:これは参考までですけど、採用のオンライン化で、オンライン上で色々なフェーズの候補者、採用ターゲットに接するということが増えてきています。
自社の課題はどこなのか
・企業名もまだまだ知られていないよというお話
・ある程度知ってくれている人はいて興味を持ってくれているのだけどなかなかエントリーの検討や受ける検討までいかないというお話
・検討して受けてくれているのだけど競合他社に取られてしまうというお話
やる領域や選ぶ媒体が全然違うので、まさにこの辺を意識して、あとはターゲットに届くための導線設計媒体選びというところが非常に重要かと思っています。
宮井:中小企業ではほとんどの場合、知名度もあまりありません。
その場合、何からスタートしたらいいでしょう。
秋山:それはまさに今日このあとの一番最後のお話につながるのですが、先程のコミュニケーションマップで言うと、一番左側にある認知のところから作っていかないと、まずまだ知られていないというお話だと思って、そこから取り組んでいくのがいいと思います。
このあと最後のポイントにもなるのですが、ターゲットが日常的に見ている媒体で気付いてもらうということが一番重要です。
なので、まずは
・SNS活用
・SNS選び
というのが非常に重要です。
新卒 or 中途 顕在層 or 潜在層
採用における活用は、上記の4つの要素が重要で、まずはシンプルに新卒向け、中途向け、どっちのターゲットにアプローチしたいのかを最初に分けたほうが媒体選びが整理できやすくなります。
あとは顕在層と潜在層と言っているのは、就活生や転職している人が能動的に就活とか転職をしているタイミングにアプローチしたいのか、それともまだ受けるエントリーの意欲とかも少ないし、エントリーする気持ちにもなっていない潜在層にアプローチしたいのかによって最適な媒体というのが異なります。
求職者のSNS・ウェブメディアの使い分け
主要なSNS、Instagram、Facebook、Twitter、TikTok、YouTube、LINE、これ以外にも色々あるのですが、少し並べてみました。
例えば就活・転職での能動性で、〇が付いているTwitterとかYouTubeかLINE、Twitterで言うと、自分たちが興味持っている、受けようかなと思っている企業が
・他の人からどう思われているのか
・その企業名が含まれるニュースがどういうふうに反応されているのか
というのを見ると、「あ、こういう世間の反応なのか」みたいなお話が見えたりします。
職種名も同様で、例えば、ここの領域を担当するエンジニアは世の中的に見るとどういう反応をされているのかなとかがTwitterで見れるので、そこに対して、情報を取りにいく能動性というのが求職者側にはあります。
YouTubeも同じように、YouTubeで説明会などをやっている企業も最近は多いです。
なので、そこに対して能動的にアクションしている求職者は多く、あとこれは新卒に限りますが、ここ数年でLINEのオープンチャットが就活生の間で急激にアクティブユーザーが増えています。
それが、まるで僕らの時代で言うと「みんなの就活」という口コミサイトのようになっています。
チャットで選考状況とか各業界の採用情報とかというのをLINEで匿名性も高いので情報交換するというのをやったりして、そこで能動的に情報を収集したりしています。
こういった能動的にアクションをしている媒体というのは、情報を取りにきているユーザーが結構多いです。
・Twitterでアカウントを運用する
・YouTubeでちゃんと説明コンテンツを置いておく
・YouTubeで媒体が主催している説明会のようなイベントがあるのでそのようなものに出てアーカイブを残しておく
このような使い方が常に重要かなと思っています。
最後、△が上のほうに書いてあったり、あとは×と書いてあったり、能動ではなくてという媒体に関しては、能動的に求職者が取りにきてはいないのだけども、例えば僕もこの中だったらInstagramやTikTokは日常的に一番見ているのですけど、ターゲットによりますけど日常的にすごく見られているのです。
また中途領域で言うとFacebookですが、広告枠として使っていくのが非常に有効です。
例えばInstagramで言うと、最近増えてきたのですけどストーリーズの間に出てくる縦型の広告を採用広報で置くような企業さんが増えていますし、TikTokで動画と動画の間に広告を挟めるので、そのように学生さんにプッシュで情報を発信することもできます。
この能動性が高くないユーザーがいるプラットフォームでも日常的にはすごく見られていますので、ここは新卒、中途それぞれターゲットの年齢が違うので媒体も分かれるのですけど、広告枠として使っていくというのが非常にお勧めだと思います。
宮井:プッシュの広告の場合は、内容もプッシュでいいのですか。
秋山:そこは結構絶妙で、いきなり企業色が強いものとかがこられても「うっ」て引いてしまうので、そこはターゲットが興味を持つ切り口とか、あとはカジュアルな媒体ごとに合わせたテイストや設計はすごく重要かなと思っています。
宮井:気を付けます。
秋山:まとめると、SNSなど今日冒頭で触れたウェブメディアはすごくたくさんあるので、まずはそれをどこでどうやって使おうとしているのか。
あとは一番シンプルなのは採用サイトという受け皿があったときにそれを起点としたらSNSやウェブメディアをどういう領域で補いたいのかということをまず一回整理すること。
その上で狙いたいターゲットに合わせて、「あ、この媒体の広告、自社で運用してみるか」とか、使い分けてみようというかたちで決めていくのが非常にいいかなと思っています。