【講師】株式会社船井総合研究所 鈴木浩史 大田哲弥
審査部目線で見る決算対策NGパターン
銀行との付き合いの中で以下のような不満はありませんか?
銀行が思うようにお金を貸してくれない
融資条件が良くならない
担当者が良い提案を持ってきてくれない
銀行が何を考えているのかわからない状態を打開するために、自己流の対策を行ったり、決算対策本を読み漁ったり、税理士に相談するなどしていると思います。
その結果以下のような対策をしていませんか?
本業は赤字だったがなんとか黒字にもっていった
税金を抑えたいので、できるだけ利益を圧縮している
決算をすべて税理士に任せている
財務だけはきっちり対策をしている
そもそも決算対策はしていない
このような対策を続けていると、銀行からの評価はどんどん下がっていきます。
結果、ますます借入ができなくなる、徐々に条件が悪くなるという負のスパイラルに陥ってしまいます。
そのため銀行を動かしたいのであればさきほどのような対策は今すぐやめてください。
銀行を動かすための決算対策
決算対策は決算前と決算後にわけて考える
決算対策をしていくにあたり、決算期を基準として前と後にわけて取り組みをしていく必要があります。
〈決算前〉銀行の審査プロセスを理解した銀行目線の決算書の作成、計画の立案、月次管理
〈決算後〉決裁者までに正確に情報が伝わるよう決算資料説明書を作成、銀行が自社をきちんと理解できるようにフォロー
決算対策スケジュール
銀行は決算申告の2カ月以内をめどに格付を行います。
この格付で良い評価が得られないと今後の融資に影響が出てしまうので、そこから逆算してスケジュールを組む必要があります。
〈決算1年前〉
中長期のありたい姿を明確にし、必要なことを洗い出す
・中長期の計画設定
・財務指標ありきで計画を検証
・年間の損益計画の作成→月次計画の作成
〈決算2カ月前まで〉
期末着地を予測して随時軌道修正
・月次で計画と実績を確認
〈決算前後1カ月〉
決算の着地を調整
銀行を動かしたいのであればこのように1年をかけて決算対策をしていく必要があります。
決算対策は企業のステージにより異なる
決算対策については、成長期、安定期、ステップアップ期と分けられる企業のステージですべきことが異なります。
まずは自社がどのステージなのかを確認してください。
成長期…投資意欲旺盛、これから伸ばしたい企業
投資資金の確保
・無駄な支出を抑えた利益の最大化
・キャッシュフローの増加や自己資本の積み上げ
・キャッシュアウトのない方法を選んで節税
安定期…企業成長よりも内部管理、企業価値の向上を求める企業
自社の資産の最大化
・非課税積立による資産形成
・節税対策
ステップアップ期…ホールディングス化などさらなる高みを目指す企業
会計精度の高度化 / 管理体制強化
・上場企業に準じた正確な決算
・決算の早期化…決算日から45日以内の決算確定ができる体制構築
決算対策をやれば銀行評価はあがる
中小企業は上場している訳ではない
→金融機関が大きなステークホルダー
→成長のためには投資は不可欠、金融機関からの投資資金調達が必須
決算対策をすることで金融機関が融資をしたくなる企業になることが重要なポイントになります。
上場企業では当たり前に行っている決算対策ですが、中小企業で実施している企業はごく僅かです。
決算対策を実施しているというだけで実は評価が上がるので、必ず取り組んでいただきたいところです。