【講師】株式会社 船井総研研究所 財務・IPO支援部 谷翔太・赤松正太郎
概要
本記事では「経営者が知っておくべきお金の借り方・金融機関との付き合い方」をお伝えします。こちらには具体的に以下の3ステップがあります。
①お金の借り方
・融資方法にはどのようなものがあるのか?
・自社が借入をする際に選択するべき融資方法は?
②金融機関との付き合い方
・自社の金融担当社員が金融機関に対してどのように自社の情報を伝えていくべきなのか?
・金融機関はどのような指標を軸に融資の判断を下しているのか?
③融資の依頼方法
・金融機関に融資を依頼する際の書類は?
・どのような融資依頼を行うと自社が希望する融資依頼を行えるのか?
投資を行う際の資金が足りない場合、金融機関からの資金調達を始めに思いつくと思いますが、金融機関が思うようにお金を貸してくれない、担当者からいい提案がもらえない、融資方法や融資条件がわからないなどのお悩みをお持ちの方や、思うように投資が進められない方におすすめの記事となっています。
代表的な融資方法の種類
①手形貸付…借入用の手形を銀行に貸いて融資を受ける方法
手続きが簡単→1年間の短期融資として活用されることが多い。
〈具体的な活用方法〉
賞与や工事の繋ぎ資金などの短期のポイント融資
②証書貸付…契約書を交わして融資を受ける方法
一回の融資で高額な投資が必要な場合や、設備投資などの長期間の借入を行う際に活用されることが多い。
③当座貸越…一定の限度額まで自由に借入や返済ができる融資
企業側の任意のタイミングで借入や返済ができる融資方法→運転資金の調達に活用されることが多い。
金融機関との付き合い方
金融機関と面談を行うべき理由
運転資金は当座貸越を活用することがおすすめですが、金融機関の方から運転資金分の当座預金を開設してくれる訳ではありません。
そのため企業側から行動を起こす必要があります。
金融機関のホンネと会社側の思い込み
自社の情報を開示しないことによって、うまく連携が取れず、金融機関から見た自社の評価が悪化してしまうケースがあるので、決算書や試算書以外の資料も提出し、金融機関と良好なパートナー関係を築く必要があります。
決算書や試算書以外の資料をしっかりと作成して、銀行の中でどのように書類が回るのかを知っておくことが重要です。銀行内では書類が一番上の決裁権限者に至るまで多くの方を経由していく言わば伝言ゲームのような状態になっております。
そのため、口頭のみで伝えるのではなく、書面に自社の情報を落とし込んで決裁権限者に伝えることで自社の情報が有効的に活用されることが多いです。
補足事項:金融機関が重視している3つの重要指標
金融機関は ①債務償還年数 ②自己資本比率 ③借入依存度 から融資をした際の返済力をはかっています。それぞれの計算方法は以下のようになります。
①債務償還年数 借入金額÷CF(キャッシュフロー) ※CF=経常利益+減価償却費
②自己資本比率 純資産÷総資産
③借入依存度 借入金額÷純資産
融資の依頼方法
金融機関に融資を依頼する際には口頭の説明だけではなく、数値的な根拠を持った計画を策定し、書面に落とし込んで提出することで決裁権限者まで情報をしっかりと伝えることができます。
成功事例①―将来的な運転資金の確保
金融機関が融資を実行する際に重視していることは
①明確な資金使途があるか否か
②借入を行うことによる財務状況への影響 になります。
金融機関は、債務償還年数、自己資本比率、借入依存度の指標が借入を行うことによってどのように変化するのか、返済力はしっかりしているのかを重視しております。
成功事例②―よりレベルの高い貸し入れ方法を実現
それぞれの店舗ごとの売上や在庫状況などの決算書などからでは伝わらない情報の説明資料を別途作成し、金融機関の方がご来社された際に決算説明を実施していただきました。
金融機関側から自社評価を見直してもらうことで、よりレベルの高い融資提案を受けるきっかけとなりました。
成功事例③―設備資金の調達
設備資金の場合は運転資金とは違ってすぐに利益が発生することは稀なので、返済計画を示し、投資対象に収益計画を作成することが重要になります。投資を行うことによって、いつどれほどの利益が生まれるのかを示した上でどのような画で返済するのかを書面に落として説明することで、設備資金の調達に成功しています。
成功事例④―当座貸越枠の限度額を維持
期中の運転資金の流れと、現在の融資取引状況とともに短期融資で借りるべき金額を示すことが重要です。決算書の業績数字である売上や運転資金の低下から当座貸越枠の減少の提案をされないために期中の運転資金の動きを示し、自社には現在の当座貸越枠が必要であることを金融機関に説明する必要があります。
まとめ
①代表的な融資方法の種類
・手形貸付、証書貸付、当座貸越それぞれの特徴
・当座貸越を活用すべき場面は運転資金を調達する際に活用することが有効的
②金融機関との付き合い方
・自社の担当者との付き合い方やどのように情報を開示すればよいのか?
→数値的な根拠を書面に落とし込む
・金融機関が重視していることは債務償還年数、自己資本比率、借入依存度の三点
③融資の依頼方法
・融資の使途、返済方法を書面で説明し、どのような目的で融資を受けたいのか