M&Aのメリット(譲り受け企業側)
【講師】株式会社船井総合研究所 ライン統括本部 M&A支援室
マネージングディレクター 光田 卓司
はじめに
本動画では、譲り受け企業にとってのM&Aのメリット、デメリットをお伝えさせて頂きます。
まずは譲り受け側、買収側のメリットをお伝えさせて頂きます。
M&Aのメリット(譲り受け企業側)
一気に拠点展開が進められる
一つ目は、既に営業している事業を買うために一気に拠点展開が進められることです。
これは拠点だけでなく、サービスであればサービス展開が進められるということです。
今から新規事業を行う場合、一気に拠点やサービスを拡げることはできません。
当然、人を雇う事やどこに店舗を作るのか、どういうサービスを始めるのかという事も考えて、いろいろな準備をしていかなければならないからです。
しかし、M&Aに関しては、既に営業をしている事業を買っていくという事になるため、一気に展開が進められます。
収益力アップが見込める
二つ目は、管理コストの一元化による収益力アップが見込める事です。
今まで一社で行っていても、人事、経理、総務といったいろいろな管理部門というものがあると思います。
これが、合併することによって一元化ができるため、収益力を上げることも見込めるというメリットになります。
資金調達がしやすくなる
そして三つ目は、外部信用力の向上により、資金調達がしやすくなることです。
これはケースバイケースになりますが、やはりM&Aを通して企業を拡大していくという事をしっかりとPRすることで、外部信用力が高まっていくケースもあります。
ですから、このようなメリットも挙げさせて頂きます。
M&Aのデメリット(譲り受け企業側)
次に、デメリットの面です。
買収した事業が期待以上に伸びない
M&Aで企業を買収するというのは、あくまでも買収した後にその事業が成長するなどの、いろいろなシナジーがあるというようなことでM&Aを行うことになります。
しかし、M&Aが終わった後に、意外に伸びなかった、期待した以上に成長ができなかったという事があります。
そのため、一つのデメリットとして挙げています。
高値での買収により投資回収が遅れる可能性がある
そして二つ目は、高値での買収により投資回収が遅れる可能性があるという事です。
当然M&Aは交渉を行いながら価格が決定していくのですが、高値掴みという事もあり得ます。
ですから、しっかり買収監査という形で、デューデリジェンスというものを通して適正値というものを見極めなければいけません。
このようなリスクもあるという事で認識して頂ければと思います。
買収先の従業員や得意先が離散してしまう
三つ目は、かなりナイーブな話で、皆さん気を付けないといけないのですが、買収後に従業員さんや得意先が離散してしまうという可能性があります。
やはりオーナーが変わるという事は、従業員さんにとってもかなりのストレスであることは間違いありません。
ですから、この辺りを慎重に従業員さんに伝えて、コミュニケーションを取りながら信頼関係を築いていくという事をしっかりしないといけません。
実際、M&Aが終わった後の1ヶ月や2ヶ月で従業員さんが全員辞めてしまいました、といった話になるケースもありますのでお気を付けください。
また、見込んでいた得意先やお客様が離散してしまうという可能性もありますので、しっかりと得意先や取引先も含めて丁寧な説明をしていくという所は心掛けて頂きたいと思います。
M&Aで譲り受けを考えるタイミング
M&Aで譲り受けを考えるタイミングについてお話します。
資金に余裕がある時
一つ目は、手元資金に余裕があって、調達も十分に可能な状態である時です。
そのような時にM&Aを通して事業を展開していこう、更に発展させていこうという事を検討される事が挙げられます。
ロールアップによってより大きく成長が見込める時
二つ目は、同業の囲い込み、これをロールアップというM&Aの用語では言います。
そのロールアップによってより大きく成長が見込めるタイミングになってきたという時にM&Aで買収をしていこうという事を考えられるケースも多くあります。
現状の業種とシナジーが期待できる業種がある時
三つ目は、現状の業種とシナジーが期待できる業種がある場合です。
同じ業種を買うという訳ではなく、シナジーが生めそうだという業種がある場合、そのような所を自社で新規投資をしていく訳ではなく、M&Aという形で買収をする事でシナジーを上げていくという会社も多くあります。
そのシナジーには、いろいろなシナジーがありますので、つぎにご説明いたします。
シナジーの種類
・販売のシナジー
・原価改善のシナジー
・研究開発のシナジー
・マネジメントにおけるシナジー
・財務のシナジー
というようにいろいろと書かせて頂いています。
販売のシナジー
販売のシナジーであれば、クロスセルによって販路が拡大できるといった事も販売のシナジーとして考えられます。
ただし、販売数の将来予測が明確にできないものについては、企業価値に反映するというのは辞めた方が良いということに気を付けなければいけません。。
あくまでも、企業価値に反映する部分は、既に売ることができる確約が取れているもののみ、シナジー効果として検討するという事を皆さん行って頂きたいと思います。
原価改善のシナジー
原価改善シナジーにおいては、仕入れのバイイングメリットが出てくるという事です。
仕入れ手数料が大きくなって、仕入れ単価が値引きされるといった事を、一つ検討材料に置いてください。
あとは、外注にしている部分もM&Aをすることによって、内製ができるといった点でも原価の改善シナジーというのは生まれてきますので、こちらも一つ考慮に入れて頂きたいところです。
研究開発シナジー
研究開発シナジーにおいては、技術やノウハウを共有する事でより研究開発を進めることができるという事を考えて行うものです。
ただし、漠然としたものではなく、明らかにメリットを考えられる場合のみしっかりとシナジーとして見込んだ方がよいかと思います。
マネジメントのシナジー
マネジメントのシナジーにおいては、マネジメント力の高い経営者がM&Aによって参入し、企業成長を促進することが期待できます。
ただし、異業種参入の場合というのは、なかなか結果が出るまでに時間を要しますので、こちらの方がシナジーは出ますが、時間がかかる事を認識しておいてください。
財務シナジー
財務シナジーですが、M&Aにより会社規模が拡大し、資金調達力が向上する事や、調達コストを削減できることという事も、一つのシナジーとして考えて頂ければと思います。
まとめ
このように、様々なシナジーがM&Aにはあります。
ですが、あまりシナジーを見込み過ぎて企業価値を付けると、それが高値掴みという所にもなります。
ですから、あくまでも既存の事業に対して価値を付けながら、更にどういったシナジーを生めるかという所を買い手側は考えて、M&Aの交渉をしていくべきだという事を押さえておいてください。