今回は、新規事業の正しい選び方の手順についてご紹介・解説したいと思います。
船井総合研究所に新規事業のご相談に来られる方で、過去に失敗されている方には共通点があります。
まずはその点を押さえていただき、正しい新規事業の選び方とその手順を知っていただければと思います。
伝えたいことは自社のビジョン
不動産売買や賃貸の仲介をしている企業のビジョンを例に挙げてみます。
これからもまじめな事業展開を行っていきます。
非常にまじめなビジョンだと思いますが、
これでは若手人材、優秀な人材には刺さりません。
それよりも、例えば下記のような打ち出しの方が良いのです。
仲介という事業は不動産だけではなく、 人材紹介・結婚相談所・老人ホーム紹介ビジネス等
あらゆる「繋ぐビジネス」を展開していきます。
要は、前半の会社のビジョンを掲げる会社と後半のビジョンを掲げる会社の2社があった場合、
どちらに良いイメージを持ちますか?と聞いたとき、票が集まるのは明らかに後者のほうだと思います。
中には、「私は真面目な会社が良い」という方も当然いるかもしれませんが、
伝えたいことはその会社のビジョンです。
単純に仲介や賃貸をやっている会社だということでなく、
「何を成し遂げる会社なのか」ということが分かることが大事ということです。
結局、ここの差がどう出るかというと、
普通の不動産仲介会社と、「繋ぐ」というコンセプトがある仲介会社があった場合、
学生目線になったときに、自分の会社をどう説明することができるかということです。
例えば、「繋ぐ」コンセプトが立てられている会社に就職した場合、
「うちの会社は不動産仲介がメインだけど、不動産には限らない。
だから、色々なマーケットに取り組んでいくから成長できる。
今後色々な事業を広げていく中で自分もマネージャーになっていく姿もイメージできるし、
何よりこの地域に根差して人や人、資源と資源を繋げるようなことはすごくいいと思うんだよね」
と言うように、「なぜこの会社に入ることにしたのか」を説明しやすいわけです。
自分の会社はそのようなビジョンを持っていると誇れるような、人に語れるようなビジョンがあるかどうか、
明確な中長期成長ビジョンがあるかどうかが本当に大事です。
今回の記事のテーマは、新規事業開発についてですが、新規事業を考えるうえで
外してはいけない内容がこの「ビジョン」です。
結局、ビジョンがなければ新規事業の話もついてきません。
例えば成熟業界の中でも特に成熟業種と言われており、
市場環境としても厳しいと言われているパチンコ業界においてでも、
パチンコ屋という会社でもかっこいいビジョンが描けますという一例を挙げていきたいと思います。
例えば
だから私達は、笑顔をこれからも作り続けます。
上記のように「笑顔創出企業」というようなビジョンを立てるとか、または下記のような例もございます。
パチンコは遊戯をしている時間も楽しいものですが、
そういう最高の瞬間を生み出せる会社なのだから、
パチンコ事業以外でも最高に楽しい瞬間を生み出す事業をしていく会社なのだということを
外部へ向けてビジョンで示せるのです。
新規事業案より重要なのは会社としての方向性
新規事業案を考えるときにお伝えしたいのは、いきなり事業案を探してはいけないということです。
新規事業案を成功させるためには、会社としてどういう方向性に進みたいのか、何をしたいのか、成し遂げたいのかをまず定めてください。
そこから、それに紐づく新規事業案を考えていくというプロセスを取って欲しいのです。
このルートを間違えてしまうから、多くの新規事業案は成功せず、なかなか立ち上がらないと言われています。
軸を決めなければどの新規事業にするべきかも判断しようがありません。
船井総研の中でも業種別勉強会が140くらいある中で、○○ビジネス、新規事業参入セミナー、人材ビジネス参入セミナー等、本当にさまざまな事業があります。
その中から何を選ぶのかといえば、やはり、事業の経営ビジョンがないと選べないと思います。
その点を踏まえた上で、新規事業案をどう選んでいくのかというルールを7つの要素にまとめています。
新規事業を選ぶための7つのルール
ルール1:会社の成長ビジョンとつなげて考える
![各社が掲げているビジョンの例](https://www.funaisoken.co.jp/images/original/img-KOnlr1jCLfc-01.jpg)
まず成長ビジョンがなければ新規事業は選びようがありません。
色々なビジョンがありますが、我々も数多くの会社の経営ビジョンをお伺いしてきた中で、結論、ビジョンはこの三つのカテゴリーの内のどれかに絶対に属するということです。
・「安全・安心・信頼」
・「成長」
・「進化」
この三つのうちのどれかのカテゴリーに、ビジョンは入るのです。
10年後、20年後に成し遂げたいビジョンが立てられていない会社であれば、この三つのカテゴリーのどれが自分たちにとって一番しっくりくるのかを考えた上で、ぜひビジョンを明確化してください。
その上で、事業成長ビジョンというものがあり、新たに繋ぐ事業を選んでいただきたいのです。
ルール2:既存事業の周辺ビジネスに対するこだわりをもたない
![新規事業選択の考え方](https://www.funaisoken.co.jp/images/original/img-KOnlr1jCLfc-02.jpg)
既存事業、周辺事業ビジネスに対するこだわりは捨てていきましょう。
今行っている事業がどのような事業かは、企業により様々だと思います。
一般的に新規事業は、基本的に現在の事業の関連業種を選んだほうがいいと言われます。
しかし事業ポートフォリオの考え方からいくと、
むしろ関連業種というのは本業が倒れたときにつられて倒れてしまうので、
リスク分散にならないのです。
新規事業を選ぶ際は、必ず「自分たちが今やっている事業と近いところを選ぶ」という先入観を捨てていただきたいです。
ルール3:時流適応業種に注目する
![新規事業選択の考え方](https://www.funaisoken.co.jp/images/original/img-KOnlr1jCLfc-03.jpg)
上記を踏まえたうえで絶対に外してはいけないのが「時流適応業種」を選ぶことです。
時流に合っているからこそ収益性が担保され、持続的に成長し、人も集まっていくのです。
では具体的に、「時流適応しているビジネス」とは何でしょうか?
コロナウィルスの影響で有望なビジネスは色々と変化し、今後も変わっていくところは当然あります。
例えば
・省人ビジネス
・空間提供ビジネス
・社会的ハイイメージビジネス
・自己実現ビジネス
・単品特化ビジネス
等々がありますが、省人ビジネスは非常に種類が多いです。
カプセルホテルや24時間フィットネスなど、今はコロナ禍で一時的に減っていますが、
間違いなく流行が収束したあと健康意識が高まる中で需要は伸びていくと思います。
![新規事業選択の考え方](https://www.funaisoken.co.jp/images/original/img-KOnlr1jCLfc-04.jpg)
フィットネスの分野での参加人口としては、
・アメリカの場合人口の約11%
・日本の場合人口の約3%〜4%
日本がアメリカと同じような参加率になるかというと、
様々な制度上の違いがあるため10%を超える数字にならないかもしれませんが、
それでも間違いなく現在の倍の人口がフィットネスに携わる時代がくると言われています。
無人型のフィットネスモデルも今非常に伸びていますが、今後も伸びてきます。
また、セルフエステという業態も毎週新しいお店ができています。
これは24時間フィットネスのエステ版です。
特にフランチャイズビジネスの中でも非常に伸びてくるビジネスも出てきます。
例えばコーチング型のビジネスです。
・ライザップ
・英会話
・塾
このようなビジネスが増え、これもフランチャイズとして業績が伸びていくと思われます。
空間提供型ビジネスに関しては、船井総研がご支援をさせていただいている中で温泉道場というおふろカフェという業態があり、これは感染収束後に間違いなく拡大するだろうと言われています。
快活CLUBは、漫画喫茶の中で業績を伸ばしています。
次世代型の漫画喫茶でビジネスラウンジのような個室があり、
テレワーク対応でオンラインの学習ができます。
完全個室でありながらビジネスラウンジのような漫画喫茶業態が、今後激増していくと思います。
これもフランチャイズビジネスでこれから伸びていきますが、
駅前立地等でビジネスを展開していくうえでの
有力なオプションになっていくだろうというところです。
ルール4:一瞬だけ輝く「超・時流ビジネス」には飛びつかない
投資対効果がよさそうでも、一瞬で終わるような超時流ビジネスはやめましょう。
(例:初期投資5,000万円・2年で回収可能。でも3年間の期間限定ビジネスである、等)
新規事業には、一事業で10億円のまとまりが描けるようなビジネスを選んでいただきたいです。
そのような事業を選ばないと、新規事業を始めたとしても困難の連続ですので、
事業案選定をする際にはこの視点は絶対に必要です。
ルール5:「人材採用」を軸に、新規事業を考える
![学生人気が出る新規事業、出ない新規事業](https://www.funaisoken.co.jp/images/original/img-KOnlr1jCLfc-07.jpg)
また、ブランドイメージという話もしましたが、人材採用ができるかどうかも重要です。
この軸もぜひ考えていただきたいです。
学生に人気がある会社になれるような事業を手掛けてほしいと思います。
ルール6:ノウハウ支援が得られるか?が最大の肝
そもそも我々は、ゼロイチの新規事業の立ち上げというのをお勧めしていません。
まだ新規事業にチャレンジしたことのない方は、
とにかくフランチャイズもしくはノウハウ支援が受けられる事業を始めてください。
これは、鉄則だと思います。
そこから経験を積んで、ある程度まで大きくなったタイミングでゼロイチの事業を展開する、
自分たちがまた新しい業種に対する事業案を構築していくことも視野に入れる。
この手順を間違えないでいただきたいということです。
ルール7:成長立地を押さえられるビジネスを選ぶ
駅チカ、駅ナカ、繁華街、商業集積地というところは、
少子高齢化が進む中でも生き残るだろうと言われています。
要は、今後、成長立地はよりピンポイント化していきます。
このピンポイント化された当たる成長立地を押さえて、
成長立地に成長ビジネスを充てていってほしいです。
そうするからこそ伸びるのです。
今はコロナ禍で観光立地は壊滅的状況ですが、必ず顧客は戻ってくると思います。
それを踏まえた上で繁華街や観光地、ロードサイドや駅チカなどの成長立地を押さえて、
そのなかに新規事業案をまとめて面で展開していきます。
こういったかたちで、あと何拠点作れば売上がどれくらい上がるかといった設計をしていただければと思います。
以上が、新規事業を進める上での手順でした。
上記の7つのポイントを意識して新規事業をご検討いただければと思います。