【講師】株式会社 船井総合研究所
ライン統括本部 第三経営支援本部 ECグループ 細井 錦平
今回は、「テレワーク導入(実践編)」として、いかに生産性を上げるテレワークを実施するかについて紹介します。
テレワークをいかに生産性を落とさないで導入していくか?
いろいろな要素が必要になります。
環境やルール、風土づくりなどポイントとなるものを一つ一つご紹介します。
テレワークの導入はハードルを上げないこと!
テレワーク導入に足踏みしてしまう経営者の方は
・全員で
・週5日で
・すべての業務を
という考えで、実施しようと考えている人が多いです。
テレワークを導入している企業で「週5で」されている方はごく一部です。
コロナ禍で緊急事態宣言が出ている中で一番多かったのが週2日、3日です。
「週5で」は、かなりハードルが高く、全ての業務をオンライン完結されている環境でないと難しいです。
テレワークを導入するにあたっては、ハードルを上げないことが大事です。
まずは最初の一人が重要
テレワークは、まずは「1人から」スタートすることが望ましいです。
複数人数で始めようとすると、色々な方がいます。
反対する方もいますし、無理だと思っている方もいます。
前向きにしてみたいという社員を対象にし、モデル社員を作って横展開していくのが一番早いです。
週1日からスタート
まずは「週1日」からテレワークをスタートすることが大事です。
週1日のテレワークはどの企業も問題無くできると思います。
風邪でお休みするときもあると思いますが、テレワークだと、家で対応ができるので、まずは週1から慣らしていくことが大事です。
一部の業務から取り組み始める
業務も紙ベースや会社のパソコンでしないといけないときもありますので、全部の業務からするのではなく、「一部の業務」をテレワークで取り組むところからスタートします。
そして徐々に日数や対応する業務の幅を増やしていきます。
スタートしないと改善さえできませんので、まずはスタートすることです。
経営者自身も価値観を変える必要あり
そして、経営者の意思改革をすることで、テレワークとは全く新しい働き方だと思っていただければと思います。
テレワークがうまくいかない企業のケースは、経営者の方のマインドによるものが大きいです。
経営者がテレワークという働き方の生産性、採用力アップ、離職防止などのメリットに目を向けて、前向きに興味関心を持つことが大事です。
いわゆる価値観を変えていきましょうという話です。
今までは、同じ空間や時間を全員で共有していくことを良しとする雰囲気があったかと思いますが、逆のことをしていきます。
少なからず、不安、トラブル、問題は出てくると思います。
社内から意見や不満がでたとき難しいのならやめましょうではなく、テレワークを始めることのメリットのほうに目を向けて、課題を一つ一つ乗り越えていく発想をトップの方がすることが重要です。
誰からテレワークをスタートするか?人選が大事
経営者の方のマインドができたあとは、人選がとても大事です。
これを間違えるとうまくいきません。
よくありがちなのは、経営者が「あなた、テレワークをして」と指名しても、本人は嫌な方もいます。
このような方に嫌々させても失敗します。
本人が「家だと集中できず、業務効率がおちます」と言うのは正論で、結局うまくいきません。
育児、介護、何らかの理由ですでに困っている方、テレワークすることができるなら大歓迎という方を指名しましょう。
何らかの課題が出てきたときにも前向きに試行錯誤して考えていくことができるので、そのような方を選ぶと良いです。
テレワークに関する会社の考えを伝えることの重要性
テレワークをする、しないに関わらず、社内にしっかりとした考え方を伝えることが大事です。
会社には様々な価値観の人がいます。
テレワークという新しい働き方に取り組むと、反対意見が出るのは当たり前です。
問題があがったときに経営者の方がしっかりと問題解決に向けて併走することが重要です。
反対の意見の方は多くの場合、環境問題面、風土や考え方の問題があるので、そこはしっかりと伝えていきます。
一番多いのは、「家でサボるんじゃないですか」という話です。
これに対しては、テレワークをしようがしまいがサボる人はサボるし、サボらない人はサボりません。
結局は人次第です。
会社にいるからといって、ずっと監視はできないです。
在宅は会社と比べて管理しづらい状況になるだけです。
在宅は会社に比べて管理しづらく、サボるという極端な考え方になるかもしれませんが、サボる人はサボる、サボらない人はサボらないです。
テレワークの環境整備と運用ルール設定
考え方を伝えるだけでは駄目で、環境や運用ルールで抑止策を取り入れます。
会社の制度としてテレワークを実施するためには、三つのことが必要になります。
・環境、運用ルール
・就業規則
・規定
この三つが整っていないままテレワークをしている企業様が多いです。
「うちはテレワークできている」という企業の多くは、環境だけが整備されて、制度としてなっていないのでかなり危うい状況だと言えます。
それが、業務効率低下や経営リスクにつながってしまうケースもよく見受けられます。
次にそこをご説明していきたいと思います。
テレワークの環境構築
まず、テレワーク環境の構築というのは、家でもオフィスと同じように働くことができる環境を構築します。
イコール、社内ICT環境を整備していくことです。
これができていないと業務効率が落ちることになります。
今テレワークはできているが、会社で業務するほうが生産性が高い、在宅だと業務効率が落ちてしまうという企業様は、テレワークができているといえども環境が甘いのではないでしょうか。
再度振り返りが必要です。
テレワークをきっかけにICT化に取り組むことで、テレワークができるようになるだけではなく、会社の生産性向上に繋がります。
ICT化、デジタル化は一つの企業の課題なので、テレワークを進めることを前提にデジタルを整備していきます。
また、よくある課題は、コミュニケーションです。
オフィスと同じように話せるかです。
そして、労務管理面も従来とは変わってきます。
クラウド化・電子化で、紙は極力無くして電子化することにより在宅でも問題なくできます。
インターネットも不可欠ですので、インフラ面の整備も忘れずに。
どのような業務をテレワークで実施してもらうか
テレワークで実施する業務の決定が必要です。
業務を三つに分類することをお願いしています。
1.絶対にテレワークでできない業務
工場で金属を加工する業務などです。
将来はロボットで遠隔操作できるようになると思いますが、現実的に今はできません。
2.在宅で実施できる業務
3.今はできないけれど、特定の条件、ICTツールなどを追加すればできる業務
この三つに分類していただければと思います。
多くの場合、環境を整備していくことにより、今は実施できない業務が現状より実施できる業務になってきます。
在宅でできる業務が増えると生産性も上がり、テレワークの実数も上がります。
テレワークをする上での運用ルール
次に運用ルールです。
整備を考えていない企業様が多いです。
運用ルールの目的は、円滑にテレワークを行うことです。
これを決めておかないと、生産性が落ちたり、不満を持つ人が出てきます。
例えばテレワーク勤務対象者の条件です。
一部の人だけがはじめにテレワークを行い始めても、始めた人だけがずるいという不満が出ることもあり得ます。
そのため、どのような人が対象になるか決めておくことが大事です。
具体的には、育児・出産、介護などの理由で通常勤務が困難な方というふうに決めておいたほうがいいです。
テレワーク実施場所に関して、気分転換でカフェでの業務は情報漏洩のリスクがあります。
不特定多数の方がいるので、パソコンの画面を見られるかもしれませんし、電話内容から機密情報が漏れることも考えられるので、実施場所を決めておくといいです。
ルールを作っておかないと、のちのち問題になる可能性があります。
セキュリティ面は、会社から支給されるパソコンはいいですが、社員のパソコンだとウイルス対策、情報漏洩といった問題です。
在宅ワークをするときは、必ず会社から支給された機器を使用するとルールを決めておきましょう。
社員もセキュリティリテラシーの低い方だと、悪意なく使ってしまうこともあるので、あらかじめルールを明文化しておくとよいです。
そして、就業規則の規定です。
テレワークを進めるとなると、就業規則の見直しが必要になります。
就業規則自体に盛り込む、もしくはテレワーク規定というものを別途作成する必要があります。
こちらは社労士の方に相談し、労働基準監督署に提出します。
トラブル回避のためにも労働基準監督署には提出をお願いします。
非常時こそ、変革のチャンス
テレワークもコロナ禍になって1年になります。(2021年現在)
テレワークは緊急時対応ではなく、業績アップの手段として活用していくステージにしていただきたいです。
いきなり始めるのではなく、まずはスモールスタートをして改善を繰り返していくという進め方をしていただきたいです。
テレワークは新しい価値観、考え方としてしていく必要があります。
会社の制度としてテレワークを実施することが大事です。
業務効率が落ちているなら、再度環境も見直したり、ルール、就業規則もしっかりできているか、会社の制度としてなっているかというところです。
これから始める、または一部導入していてこれから本格的にしていきたい企業は、今がチャンスです。
新しいワークスタイルなので、反対意見が出たり抵抗があるので、そこに挑戦するには労力がいります。
今は非常時なので、前向きに考えると社員が変化を受け入れてくれやすいという状況でもあるので、是非今やろうと思っている方は進めていくといいです。