中小企業でも決算対策
上場企業では決算対策を当たり前にしています。
しかし、中小企業では決算対策も、決算説明などの場も設けていない企業がほとんどです。
決算対策のメリットは、銀行から適正な評価を受けられることです。
自社の本当の力を銀行に理解してもらうことができます。
結果、来期にお金を借りて投資がしやすくなります。
しかし、決算対策の正しいやり方を知らない企業も多いです。
むしろ銀行の評価を逆に下げてしまっている例もあります。
本記事では、中小企業向けの正しい決算対策についてご紹介します。
決算対策とは
賃借対照表をどのようにデザインするか、が決算対策です。
貸借対照表には、資産・負債・純資産が計上されます。
決算に合わせて、それぞれをどのような金額にするのかをデザインします。
財務コンサルティングの場では
「貸借対照表(BS)をどのように着地しましょうか」と話をします。
逆に損益計算書は、1年間の成績です。
3月末の決算の場合、昨年4月1日~今年の3月31日までの通期の365日分の売上や損益が載ります。
決算直前になっても動かせません。
賃借対照表は決算の最終日に決まるため準備ができます。
借金の額をコントロールして、銀行から適正な評価が受けられます。
自社が第三者である銀行からどのように評価されるのかを理解した上で、決算を迎えましょう。
間違った決算対策
中小企業に多い間違った2つの決算対策は以下です。
①粉飾決算
②不良性資産の計上
①粉飾決算
まず粉飾決算は絶対にやってはいけません。
損益決算書の売上をかさ増しして利益を上げるなどです。
大きく見れば決算対策かもしれませんが、絶対にやってはいけません。
粉飾決算をした場合、貸借対照表に異常値が出るため、気づかれやすいです。
例えば、昔からよくある粉飾が原価を低く見せる方法です。
普段は1億円の在庫水準の会社が、期末だけ2億円にします。
その1億円分がかさ増しになります。
バレるものと理解し、粉飾は絶対にやめましょう。
比較的やりやすいので、考えがちですが、結局わかってしまいます。
②不良資産の計上
こちらも貸借対照表の話です。
回収する見込みがない、不良資産を計上することです。
例えば売上代金として、A店から200万円をもらう売掛金があります。
A店は200万円を支払う気があれば、A店の売掛金200万円は売上として成り立ちます。
問題はA店が支払う気がない場合です。
支払い見込みのない売掛金を貸借対照表に計上します。
これが「不良資産の計上」です。
このような計上は悪意のある粉飾ではありませんが、削るべきです。
税務上認められるかどうかは別で、費用か引当金か損失として扱います。
その他にも、理由や用途はわかるが回収した方が良いものが経営者への貸付金です。
「役員貸付」と呼ばれることもあります。
後ほどご紹介しますが、経営者への債権も、できれば0にすべきです。
経営者である社長が会社から100万円を貸り、決算期末で返せる場合は絶対返した方が良いです。
こちらも後ほどご紹介しますが、法人と個人の分離をすべきです。
経営者保証に依存しない会社になりたい場合はすべきです。
正しい決算対策
決算前にすべき順番に
①銀行借り入れの調整
②資産の中身の整理
➂経営者と会社間の取引の分離
です。
①銀行借り入れの調整
対象は当座貸越を銀行に開設してもらっている会社です。
手元に現金が余っている場合は、その当座貸越を返済しましょう。
総資産の圧縮につながります。
自己資本比率や借入依存度が良くなります。
決算の期末時点ですべきです。
決算の2週間前から事前に連絡しておきましょう。
銀行も準備がしやすくなり、スムーズに進められます。
②資産の中身の整理
間違った決算対策でご紹介した、「不良資産」を残さないことです。
回収できないが売掛金で残っているものを
・資産から落とす
・引当金や損失として計上する
などして整理します。
決算期末にかけて、すべきことです。
そのために、今ある資産の中身を理解している必要があります。
まずは、資産の整理から始めましょう。
税理士の協力も重要になります。
担当税理士と話し、
・引当金として落とせるか
・税務上認められるか
という2点を含め資産の処遇を必ず確認すべきです。
財務コンサルティングでも税理士と決算の着地前に打ち合わせを密にしています。
税理士とは年に1回、決算時だけのやりとりという会社も多いと思います。
そのあたりも改善して、密にコミュニケーションをとっていくように変えましょう。
決算対策に1~2か月かかりますが、重要です。
経営者と会社間の取引の分離
経営者と会社間の取引を貸借対照表上で分離することが重要です。
・役員貸付金として会社が社長にお金を貸し付けている場合
・会社が社長にお金を借りている場合
など、精算できるものはすべきです。
その理由に経営者保証があります。
経営者と会社間、つまり法人と個人間で連帯保証しているものがあると、経営者保証が会場できないことがよくあります。
経営者保証の観点から、法人と個人は分離すべきです。
これは財務コンサルティングの立場からもお伝えしています。
完全分離がベストです。
ただし、期の途中でどうしても
・社長の資産を会社に賃貸している
・損益計算書上は家賃を会社が社長に払っている
などの取引は出てくるかもしれません。
少なくとも貸借対照表上で、その時点での会社と経営者、役員の取引がない状態にすることが重要です。
決算対策で財務改善
本記事でご紹介した対策をすることで、銀行から適正な評価を受けられます。
来期にお金を借りて投資をしやすくなるための整備、決算対策は非常に重要です。
実際に財務状態が改善している企業も多いです。
ぜひ決算対策をして、財務の改善、融資や新しい投資につなげましょう。
他にも、最新の業績アップ事例を踏まえて、事業に役立つ情報を発信していく予定です。
楽しみにしていてください。