明日のグレートカンパニーを創る 株式会社 船井総合研究所

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飲食



二杉:自社の強みとして寿司職人を挙げられましたが、職人さんというと頑固だったり気難しいイメージを持つ方が多いと思います。そのような従業員の方へは、どのように伝えられたのでしょうか。

中野里社長:気難しそうな板前さんはお客様のニーズに反します。ただ握るだけの腕自慢の板前のままではいけないので、接客も対応も含めた定義意識をまず変えていく必要がありました。そこで大事にしたのが一対一のコミュニケーションです。全社員と面談をするようになりました。すると、気難しいなと思っていた職人さんも、実は積極的に話しかけることが苦手なだけなんだということがわかってきました。自分から心を開いて話しかけていくことで、彼らも心をひらいてくれて、ものすごくいい関係が築けていけたのです。

二杉:向き合うということを選択されたわけですね。

中野里社長:そうですね。

二杉:先ほど自分たちの長所や強みをもう一度見つめ直したというお話がありましたが、他の寿司屋との住み分けや立地といった人的資源以外の部分を詳しくお話いただけますか?

中野里社長:はい。かつては郊外エリアの商業施設などにもお店がありました。市川市だったのですが、そこは家族連れが多く、小さなお子さんには回転寿司の方がニーズに合うんです。職人がいる寿司屋のニーズがとても少ないので、都心の駅前の商業施設へと移転しました。郊外店舗と都心店舗では広さも職人数もほぼ同じでしたが、売り上げは3倍近く上がりました。そういうスクラップアンドビルドのような、よりニーズの高い場所へ移転していく作業を、この10年間やってきました。

二杉:自分たちの長所とか、自分たちが生きる場所を再定義して、選択と集中を図ったということですね。

中野里社長:そうですね。


人材育成には特に力を入れている。職人として成長実感が得られれば、離職率は自然と低くなる。

リーマンショックで売上2割減

二杉:社長とお付き合いが始まったのは、ちょうどリーマンショックがあって日本全体の消費が冷え込んだ頃でしたね。

中野里社長:はい。リーマンショックでは売り上げが2割下がりました。この2割のお客様はどこへ消えてしまったのかと、いろいろと偵察に行っていました。そしたら、寿司屋がやるようなきれいなお刺身ではなく、ざっくりとブツ切りでドカッと盛って、みんなが刺身を自由に突きながら食べられるお店にお客様が溢れかえっていたんです。いつの間にか、寿司屋が時代のニーズからズレていたんだとわかりました。そこで方向転換を思いついたのですが、寿司屋らしさを残しながら、どういう方向性でいったらいいか悩んでいた時に、二杉さんと出会いまして。

二杉:社長が色々な店舗を分析されていたのが印象的でした。

中野里社長:二杉さんと出会って一番よかったのは、寿司職人がいる強みである握りたてのおいしいお寿司と、お刺身がきれいに盛れる技術を残したうえで、リーズナブルに楽しみたいというニーズに応えられるメニューができあがったことです。今、寿司屋の一品メニューが40種類くらいあります。

二杉:あらためてお聞きしていますと、社長の事業承継されてからの取り組みは自分たちの強みを生かす長所伸展につきますね。また、時代から少しずれてきているところは時流適応させ、立地、利用動機、客層などを再定義しなおすこと。この2つをしっかりとされてきたんだなと思います。

100年企業に向けて

二杉:これからの向こう10年、どんな玉寿司になるのでしょうか。

中野里社長:あと6年で100年企業になるのですが、過去10年を振り返ると、やはり財務の立て直しを一番にやってきました。財務も健全化した今、僕は、社員が生き生きと働く、成長する会社にしたいと考えています。「日本一生き生きとした寿司屋」を100周年スローガンに掲げています。

二杉:それは楽しみです。何か取り組まれていることはありますか?

中野里社長:何をもって生き生きなのかということを、ここ何年か考えてきました。ヒントを知るために、まず社員が生き生きしていると感じる会社を訪問したり、社長とお会いして話を聞いたり、あるいはセミナーに行ったりしました。共通してわかったのは、生き生きしている会社は、例外なく社員が主体的だということです。自分の仕事の使命感や目的というものをわかっていて、自分の強みを生かしながら働いていている。この主体的に働ける環境を整えることがものすごく大事だなと思いました。

二杉:なるほど。

中野里社長:それから、社員が成長できる場があること。オン・ザ・ジョブもオフ・ザ・ジョブもそうですけども、スキルの勉強、あるいは人間的な心の勉強、リーダーシップや管理の勉強、いろいろな勉強をされていて、そこに時間とお金を投資している。もう一つは、社員が大事にされているなと感じられるような、承認の場があることでした。

二杉:やると決めたことを長く続けられる継続力が、玉寿司の長所ですね。社内での寿司コンクールを40年近く継続されていたり、半年に一度の全店臨店であったり、一週間に1回、全店舗を電話回線でつないで活力朝礼をしていたり。

中野里社長:すべてよいと思って信念を持ってやっているので、やり続けようと思います。何の効果も感じなかったら、やらなくなりますよね。活力朝礼もすぐに成果が出るわけではありませんが、職場のリズムや、前向きな「気」みたいなものが生まれてきます。
それから、清掃にはその店の心が表れると思っているので、清掃を徹底しています。細かいところを私自身が見ます。店を回ることで小さな変化をキャッチできますし、店に行かなければわからないお店の状況も把握できます。信頼関係ができるというのも大きいですね。訪問すれば、社員はもちろんアルバイトの状況も知れるんです。全店どこへ行ってもそういうアットホームな関係ができたのは、続けてきたおかげです。

二杉:なるほど。

中野里社長:コンクールを続ける理由は、時間はかかっても調理師が育つからです。今、やっとゼロから18歳で入社した子たちの3分の2が、店長として前線に立って頑張ってくれています。

二杉:新卒から店長になって…すごいですね。
たしか以前、社員が元気に生き生き働いている会社を見学された時に、EHというキーワードでエンプロイーハピネスということをお話しされたと思うんですが。

中野里社長:よくES(エンプロイーサティスファクション)って言われますよね。満足っていうことと幸福感というのは、何が違うのかなって。もちろん社員にとってみれば給与はできるだけ高い方がいいでしょうし、できるだけ休みも多い方がいいとは思うんですけど。実際は、中小企業ではなかなかそうはいかないですよね。

二杉:そうですね。

中野里社長:玉寿司では、ほかのお寿司屋さんからうちへ来たら、条件や給与が若干下がるにもかかわらず、働きたいと言ってもらえることがあります。理由を聞くと、残念ながら今いる職場では、自分は大事にされていると感じられないと。長く働くのであれば、自分がいいなと思える仲間や職場がある環境で働きたいと言ってくれるんです。 これは、サティスファクションじゃなくて、エンプロイーハピネスのハピネスを追求してきた一つの結果だと思っているんです。だからうちは普通の雇用条件ですが、ただ一つずば抜けていることは、みんなの仲がいいし、社員を大事にしてるということだと思います。


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中野里陽平氏 中野里 陽平(なかのり・ようへい)氏
株式会社 玉寿司 代表取締役社長

本社所在地:東京都中央区築地2-11-26 築地MKビル3F
設立:1965年
資本金:3,000万円
従業員数:607名(2015年12月現在、パート含む)
業務内容:寿司店の経営
http://www.tamasushi.co.jp/index.html

※ 企業プロフィールは、受賞当時のものです。
二杉 明宏 二杉 明宏(にすぎ・あきひろ)
株式会社 船井総合研究所

1974年生まれ。2000年船井総合研究所入社。入社以来、外食関連10以上の業種でコンサルティング活動に従事。特に、業態開発、新規出店、多店舗展開などのテーマでのコンサルティングを得意とする。ローカルチェーンからナショナルチェーン、中国外食企業に至るまで幅広いクライアントをサポートしている。