事業成長を推進するうえでは、既存事業をコツコツと成長させていくというのはもちろん基本かつ王道のアプローチであることは間違いありません。しかしながら、既存事業の市場環境そのものが低成長フェーズに入っていたり、その事業が成熟化しつつある場合には、本業周辺にある事業や業態を新たに付加していくことで成長率を確保することも検討すべきです。
その際、新たな事業や業態を社内から自力で立ち上げる他に、それとは比べ物にならないスピードで成長力を取り込む方法としてM&Aという選択肢があります。
わたしたち船井総研グループも2014年にホールディング体制に移行して以降、3つの新しい事業会社をスピンオフで内部人材によって立ち上げるとともに、新たに3社をM&Aによってグループインさせることで成長力を確保してきました。
私はその過程で、ホールディング化と同時に分社設立された船井総研コーポレートリレーションズ(FCR)というグループの間接機能を集約したシェアード会社の社長を務め、次にM&Aでグループインしたシステム開発会社(SCS)の代表を務めさせていただきました。そして最近では、この2社の経営統合により誕生した船井総研デジタルの社長として活動していました。
こうした経験を通じてあらためて痛感したのは「バックオフィス・間接部門の重要性」です。事業を成長させたるには、とかく真っ先に営業部門に関心が行きがちです。しかしながら、バックオフィスの基盤がしっかりしていない状態で営業部門をきちんとコントロールすることは実際にはかなり困難です。
例えば、営業部門の予算進捗、部門損益推移、生産性、稼働率、ROI、社員定着率、顧客継続率などの重要指標をリアルタイムかつシームレスに把握できていない状態で、適切な判断や組織運営を行うことはできません。そんな状態で営業部門にだけ発破をかけて業績を向上させるのは神業的に難しいのです。ヒト・モノ・カネ・情報という経営資源の状況をつぶさに把握し、それを的確にコントロールするにはバックオフィスが正常に機能していることが大前提となります。つまり、バックオフィスや間接部門が「戦略的に機能していること」が成長力を担保するうえで非常に重要なのです。
しかし、バックオフィスや間接部門がそのように機能しているケースは残念ながらそう多くありません。私が最初に代表に就いたFCRの場合、バックオフィス基盤は元々グループ中核企業群と共通化されていたので、設立当初からシームレスに繋がっていたので大丈夫でした。
一方、途中からM&Aでグループインしてきたシステム開発会社(SCS)の間接部門は、中身も考え方も全く異質でしたので、まず経営の実態を把握するのも一苦労でした。重要指標を可視化するのにも時間を要します。経営や営業上の施策を実行に移すのも、その分だけ時間がかかってしまい、例えば原価コントロールが後手に回ってしまうようなことも時折起こっていました。
そこで最初に手を打ったのは、間接部門の統合です。財務経理機能をグループ中核企業群の同一プラットフォーム上に一本化したうえで管理会計を導入し、必要な経営情報がタイムリー且つ正確に把握できるようになりました。次に、人事機能をFCRと一本化したことで、必要な組織変革を思い切って実行できました。
そうして漸く、業績も成長軌道に乗って徐々に上向いていきました。
こうした経験なども踏まえながら、当社では様々な企業のバックオフィス統合のお手伝いをさせていただいています。とかく硬直化・属人化しがちなバックオフィスや間接部門を、業績や生産性に貢献できる高付加価値な体質に変身させていくのです。私たちはこれを「バックオフィストランスフォーメンション(=BX)」と呼んでいます。最近では特にM&Aで複数のバックオフィスが繋がらずにバラバラに存在している企業の企業様からのご依頼が増えています。例えば、50社を超えるグループ会社を傘下に擁する企業から、グループ全社の間接部門を統合したシェアードサービス会社設立のお手伝いするお仕事などもお引き受けしました。
その過程で蓄積したバックオフィス統合の知見とノウハウを、セミナーを通じて皆様と分かち合う場をこのたび設けさせていたくことになりました。次のような経営者や間接部門担当役員の方におススメです。
・複数の会社があるが、経営情報のシームレス化ができていない ・管理部門の再編や統合を通じて、生産性を上げたい(シェアード化も含めて) ・今後のM&Aの実施や合併などの発生時にも強固なバックオフィスを構築したい
尚、このセミナーのゲスト講師には積極的なM&A戦略で成長を続けておられるマネーフォワードでグループ執行役員経理本部本部長の松岡俊さまをゲスト講師にお迎えしています。同社は、M&Aによるグループジョイン企業を含むグループ子会社16社の管理部門を戦略的統合し持続的成長を実現されています。
ご興味を持たれた方は、是非、参加をご検討ください。 |