「それっていくらですか?」この言葉への答え方が明暗を分けるというシーンは、営業・販売の現場ではよくあります。定価がある商品であればまだ良いのですが、要望を聞きながらコスト計算をしてから価格を提示する提案型の商品の場合は、一歩間違えると価格競争という、昨今のインフレの流れと逆行したお客様の要求に巻き込まれてしまうことになりかねません。
ただ、この「いくらですか?」という言葉には実は2種類の意味があります。
一つは、単純に他社比較のためのひとつの判断基準として聞く「いくらですか?」という言葉。もう一つは、「なるほど、これだったら価値があるかもしれない」とお客様が感じた後にお客様が発する「それっていくらですか?」です。
先日、住宅会社のご支援先で、「資材の値上げで競合他社に勝てないんですよね」という話が出ました。さらによく聞くと、お客様から「いくらですか?」と聞かれて「●●●万円です」と答えたあとの雰囲気が怖くて、言いたいことが言えていなかったという話でした。
しかし、ここには顧客心理に対する誤解があります。お客様が本当に聞きたいのは、価格やその安さだけではなく、価格に対して妥当な価値かどうか、今風に言うと「コスパ」があるかどうかです。ところが弱気になった営業は、この「コスパ」の説明を大幅にカットしてしまい、その結果「色々みて検討します」という、営業を最も凍らせるお客様の言葉で締めくくってしまいます。
いまの時代、値上げは必至でその点はお客様も理解しています。そんな中、成果が出づらい会社の特徴は、他社との価格比較に走りすぎて、自社ブランドへの自信を失っているという点だと感じます。
「それなら、価値があるかもしれないな・・・ちなみに、いくらですか?」と思わすお客様が価格を聞くときは、多少予算をオーバーしても買いたいと感じたときです。そんな問いかけをしたくなるように、価格や機能の単純比較ではなく、「コスパ」を自信もって伝えることができているか、この時期に、一度確認してみてはいかがでしょうか。