売上予測

1.大型店の売上予測

●地域一番の大型商業施設の場合
大型商業施設を開発する場合の売上予測手法には、いくつかのアプローチがあります。
重要なことは、マクロに考えマクロに判断することです。
まず、ある程度ビジネスモデルの出来上がった大手流通の開発する大型モールですと、自動車30分走行圏内が土日商圏になります。その人口をカウントし、それに一人当たり消費と想定されるシェアを掛け算しますと、大体この程度だろうという数値になります。
地方によっては商圏が40分程度まで伸びる場合もありますし、競合となる同等クラスの施設が商圏内にある場合は、商圏は切り取られることになります。
一方、一人当たり消費は地域格差はあまり大きくなく、シェアも変わりません。
ですので、地域一番店の巨大SCは、商圏人口から予測可能となります。
大手チェーンのモールはきちんと研究された店づくりになっていますので、スペックを見るだけで「売上をいくらと予測して開発されたか」が分かります。たとえば駐車場の台数やフードコートの席数などが分かりやすい目安ですが、飲食店の店数を見ても想像がつきやすいです。
しかし、あまりノウハウのないデベロッパーの開発したSCでは怪しく、スペックがかなり狂っている場合もよく見かけるので注意が必要です。あるいは全体としてはまあまあいいのだけれど不振部門がある施設というのは、要するにその部門が供給過剰になっている、ということがほとんどです。

●複合型大型商業施設の場合
地域一番店でない場合は、前述のアプローチにはなりません。
複合の核となるいくつかの業態別大型店の売上を予測し、積算します。
そこから期待される集客力を予測し、専門店の売上を予測します。それらを積算します。
小さな施設になればなるほど、マクロな予測が困難であり、個別に判断してゆくことになります。
全体の面積でおおよその予測を出したのちには、この店でいくら、この店でいくら、と一つずつ足し上げて検証します。
こういう施設で怖いことは、開発している当事者たちですら正確な売上予測ができていなくて、スペックがチグハグになっている場合が多いことです。ですので入居専門店の大きなところをまず予測するしかないといえます。

●なぜ大型店の売上予測が必要か
新築案件の場合、大型店自身にとっても、その不動産に投資する投資家にとっても、その施設に入居する専門店にとっても、そもそもその施設が成功するかどうかの見定めが最重要になります。
さらに、その大型施設に入居する専門店は、施設全体の集客力に依存することになります。
ですので、施設全体の売上が読めないと、専門店の売上も読めません。
多くの業種は全体客数と自店売上に相関関係があります。既存店を調査すれば、その相関関係は明らかになります。
新築物件の場合、出店の意思決定に際しては、その「館」の売上を読むことが非常に重要になります。


2.専門店の売上予測

●売上方程式
これは店舗開発読本で以前ご紹介しました。集めるべきデータはおおよそ以下のようになります。

分類 項目
出店都市に関するデータ 商圏人口、ターゲット人口、流出入影響度、集積力の順位
出店立地に関するデータ (SC出店の場合) SC売上、SC面積、SC集客力、核店舗種別、同一業種群の売上
店内立地 店舗面積、フロア、館内競合の有無、店前通行量、店長スキル

上記は一例であり、フリースタンド店の場合は駐車台数や営業時間などの影響要因も出てまいります。コンビニなどの小商圏業態ですと、近隣人口が最も影響したりします。
これらの影響要因を可能な限り定量化して、そのうえで多変量解析にかけると、「何の要素がどれだけ影響したか」が見えてきます。
多変量解析の結果を見て、さらに仕分けを行います。郊外型フリースタンド、郊外SCテナント、都心路面、都心駅ビル、などなど立地タイプによってパターン分類可能な場合もありますし、さらに昼間人口主体の店(都心店などのように、通勤者主体)や夜間人口主体の店(住宅立地)かによっても異なってきます。
さらに、この異なるタイプの店舗を分類した上で、異常値店舗を抜いてゆきます。これは、たとえばずば抜けて優秀な店長がいるなど、通常の店舗とは基盤が異なる店舗に関しては、ポテンシャルに比べて業績がよい場合があるからです。
具体的な作業に関しましては、まだまだ細かくいろいろあるのですが、しかし多くの企業において「何が売上を決める要素になっているのか」については、おおよそ3つ程度の要素に絞り込めるはずです。極論すると、たった一つの要素の場合もあります。

私どもも理論的にはそのように計算することもあります。
しかし、「データを収集して多変量解析」という手間が実務に即していないことのほうが多いのです。
たとえばビルインの場合、大家さんに聞いてもテナントの売上は分からないということが多々あります。
入館客数、フロア客数、店頭通行客数、そういうものを調べるにも手間とコストがかかります。調査費用の出せる大企業ならともかく、そんな時間もカネもない・・・・という会社も多いものです。要するにデータが不十分な中で推測するしかないようなケースのほうが多いのです。
そういう場合は、私どもでは、様々な過去の経験値から、「見て」「数えて」売上予測をします。このSCは年商億円くらいだ。客単価はこんな程度だろうから、年間来客数はこの程度。そういうロケで自店の来客数は全体の○%だった。
さらに、1Fの店と2Fの店とでは同じ率にならないし、館内に同業者がいる場合といない場合でも結果が異なる。これはおよそこのように設定したらよいだろう・・・・
店頭通行客数は、店前の道路が広く数は多いものの、実質的に顧客になりうる客数は、店頭から3m程度までだろう、その数をカウントしよう・・・・
とまあ、アナログで大雑把につかんでゆき、売上予測の方程式を作り上げることもあります。実際の経験上は、このほうがより正確だったりします。

●意外な成果
出店時、出店者側が非常に慎重に構え、厳しい経済条件で出店したら、意に反してよく売れて収益店になるという事例があります。結果オーライではあるものの、なぜそのようなことが起きるかのパターンを見てみました。結論としては、因数分解で予測値の「母数」を誤っていることが多いのです。
たとえば館の売上の%と予測した。館の売上は60億円程度だから、売れてもこんなものだろう・・・・と思っていましたら、売上は予測の倍になりました。実は、隣には家電量販店の繁盛店があり、デッキでつながっていてお客さんも多く流れてきていたのです。その家電店は年商50~60億円は見込める店で、結果としてポテンシャルは倍になっていたことに気づいていなかった、というケースがありました。
この「母数」の読み間違いが要注意なのです。
売上方程式をルール化するのを手伝ってほしいという相談は多いのですが、骨子はつくれますが、案件ごとでの判断までは時に定量化困難で、迷ったら都度ご相談いただくほうが、より高い精度で結論が出せます。また、現場は刻々と変化しており、近い将来この商圏はこうなるぞというマクロな予測なしに、「計算したらこうだった」で意思決定するのはちょっと怖いです。たいていは、不安に思いつつも、「まあいいか」になっています。

●費用効果
コンピューターシステムを開発したいという相談もいただきますが、投資額の割にはあまり効果は期待できないかもしれません。既製品である程度使えるものもあります。1000店舗を超えるような巨大チェーンでしか必要ないと思います。母数の判断を読み違えますと、いかなるシステムも役に立ちません。
売上方程式は、あらゆる業種で同様の結果が起きるわけではないということです。業種によって異なる変数をどう理解するか。それが最重要だといえます。
私どもは、日々の診断・支援業務で得られた情報をもとに、各業種別にある程度のルール化をいたしております。予測値の作成も、なるべくアナログの感覚を大事にした定量化をおこなうべきだと考えています。

番外編

●最も重要なこと
大事なことは、計算結果そのものではなく、「誰がどう意思決定するか」です。

とりあえず立ち上げさえうまくいけば、後のことは・・・というサラリーマン担当者
成功報酬をもらう開発業者
能力や責任感の乏しい専門家、アドバイザリー
こういった人たちが絡むと、たいてい冷静な意思決定が出来ないことになります。
もちろん、オーナーの過剰な想い(思い込み)が一番怖いです。
どこまでも判断は中長期的に結論付けなくてはいけません。
無駄な出店は絶対にしてはなりません。会社が傾く要因というのも、そこにしかありません。

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