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コンサルティング成功事例
農作物のブランド化。1万円で売れる桃をつくる(JA伊達みらい農業協同組合)
伊達の蜜桃
PROFILE JA伊達みらい農業協同組合
東京から北に280km、福島県の県北地方、福島盆地の北部。米、キュウリ、イチゴ、モモ、柿を中心に、とくに桃およびあんぽ柿の全国ブランド化に注力中。
 
本店 福島県伊達市保原町字7-33-3
 
 
INTERVIEW
楠元 武久
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楠元 武久
2007.08.02
サクセスサマリー
 
福島県伊達産の桃は地理的(収穫時期)なハンディから、収穫時期や実の大きさにおいて山梨産に比べ価格が落ち易く、なんとか農家の手取りを挙げたいところであった。
 
そこで、市場で取引価格が高い大玉ではなく、買い叩かれがちな中球サイズの桃を中心にブランド化を図り、出荷額全体の安定化をめざす戦略を策定。糖度15度以上の桃を『伊達の蜜桃』と命名し、流通経路で他産地のものと混同されないようパッケージ化、なおかつ小売希望価格を設定し出荷していった。
 
地元スーパーの協力やテレビ局の協力も手伝い、実際に『伊達の密桃』を口にした消費者らのクチコミが拡がる。ついには東京の高級百貨店において1万円の桐箱入りで販売されるにまで至り、いまや『伊達の蜜桃』は果物界のスーパーブランドとなった。
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■ 船井総合研究所との関わり
 
【ビフォア
福島県伊達産の桃は、収穫時期、大きさを比べると山梨県産に負ける。どうにかしてこの桃を日本一にしたい。
 
【アクション】
特に糖度が高い桃を選別し『伊達の蜜桃』と命名。その上で流通過程において、他地域産の桃と混合されないようなパッケージ施策を行い、そのパッケージ単位に「小売希望価格」を設定し出荷を行った。
 
【アフター】
東京の高級百貨店の果物売り場ではブランド桃として6個1万円で取り扱われるに至る。同時に市場からも「伊達の蜜桃が欲しい」という指名買いが入るようになり、価格決定権の一部を手に入れた。ジュースなどの加工品も順調に立ち上がりつつある。
「量」で勝負する時代はもう終わったのではないでしょうか?     「指名買い」される桃、私たちはそれをめざしています 
斎藤 一郎 参事
JA伊達みらい 参事 斎藤 一郎 氏
■ 小さい玉の桃は市場価値が低いことに悩まれていたそうですね 
果物はサイズごとに仕分けされ、流通するのが市場の慣習です。常に大きいサイズばかりが採れれば良いのですが、その年の天候など、出来不出来に左右されます。さらに市場ではサイズが最優先され、桃の産地や糖度など、味本来にかかる個性は埋もれたまま十把ひとからげに店頭に並んでいることが多いのです。

そんな市場原理に対し「いかにその年の出荷額を安定させるか」は、農協および組合員(農家)の永遠の課題です。大きい玉は黙っていても高値取引されます。出荷額全体を安定させるということは、つまるところ「買い叩かれがちな中玉以下の桃をいかに買い叩かれないようにするか」という課題に行き着くのです。そういうことで、特に山梨産に比べ、全体的に小ぶりな桃を扱う私たちにとって「小さい玉の価格の安定化」は長年の課題だったのです。

私たちは、たとえ小ぶりでも桃の味には自信がありました。ですからその分のプレミアム性を主張すべく、定価販売(小売希望価格)に挑戦することになりました。具体的には、伊達産の中でも特に糖度の高い「特秀品」(編注:糖度は技術的に測定できる)の桃を抽出し、4個パックで398円という定価(小売希望価格)設定を行ったのです。これが『伊達の蜜桃』の始まりです。特別感を表すオリジナルのラベルを付け、流通過程で他地域産と混同されないような工夫を凝らしたのです。幸いなことに、当時はちょうどBSE牛肉問題とともに生鮮品に関する産地表示、トレーサビリティの必要性が指摘され始めた頃でした。何より、伊達の桃が流通過程で他の桃と一緒にされることを避けたかった私たちにとって、これは非常に大きな追い風となりました。

流通過程の画一規格で混ぜられてしまうこと、つまり産地に関係なくL、M、Sなどサイズ重視で仕分けされてしまうことは、最終消費者にとってもどれがいい物でどれが価値ある物かがわからなくなってしまうのです。このようなことは、他の生鮮品でも同様のことが言えるのではないでしょうか?
JA伊達みらい
世界で初めて(?)、農作物に「小売希望価格」を設定したJA伊達みらい
■ 農作物の定価販売(小売希望価格)は、相当珍しいと聞きますが 
同じサイズの桃が、市場では4個298円で取引されている時期も、私たちの『伊達の蜜桃』は398円を主張して卸しました。このように農作物に定価(小売希望価格)をつけるという発想は農業従事者全体になく、私たちの内部でさえも賛否両論ありました。ですから船井総合研究所の楠元さんの支援もいただきながら、まずは組合員(農家)の方々からの賛同をいただくことから始まりました。

通常の出荷は、サイズごとに仕分けしダンボールに詰めておしまいです。しかし私たちの取り組みには、まず糖度の高い桃を抽出し、それを4つ単位のパックに詰め『伊達の蜜桃』という特製ラベルをつける、という面倒な手間が発生します。当初、説明を受けた組合員(農家)からは「そんな面倒なことはやりたくない」という後ろ向きな声が相次ぎました。従来に比べ作業負担が増えるわけですから、パートの人件費などを考えると、ある意味、無理もないのです。

こうした負担増に対するメリット、成果について市場と農協の間における「清算書」を公開し、組合員(農家)のモチベーションを上げるよう鼓舞しました。『伊達の蜜桃』を出荷した組合員(農家)の手取りが昨年よりも上がっていることが徐々に判るにつれ、組合員(農家)のムードや士気もぐんと高まりました。市場の原理に一方的に振り回されるのではなく「良い桃を作り戦略的に出荷することで、自分たちの収入もアップする!」そういうことが実証されたのです。

また、市場で一番高く取引されている山梨県春日井市の桃にいかに挑むかについては、やはり「味」の勝負になります。良い味の桃を作るためには、袋かけの作業や時期も繊細で重要な仕事になってきます。取り組みを続ける中で、こうした職人技やノウハウを組合員(農家)間で共有する流れ、ムードが出来始めました。あわせて地元のスーパーやテレビ局が注目し、応援してくれたことが良いムード作りの促進要因となりました。

良い桃を採った農家にはそれなりの見返りもある、こうしたやりがいを「仕組み化」することが、私たち農協の役目だと思います。良い桃をたくさん作りピラミッドの頂点に立つ農家が出てきたことで、組合員全体が良いムードになっていくことは健全な姿だと思います。
出荷される伊達の蜜桃
他地域産と混せられないよう出荷時のパッケージに工夫を凝らす。
作業に手間がかかるので当初は疑問の声もあったが……
■ たった2年でブランドを創った実績はすごいことですね 
新しいものを生み出すためには、ときには常識を疑うことも必要だと思います。旧い慣習に縛られるあまり消費者が望むものから離れていっていないか?という視点で見直していった先に『伊達の蜜桃』は生まれたのだと思います。ちなみに2004年当初は、4個398円のパッケージでスタートした私たちの『伊達の蜜桃』ですが、2006年には2個498円(ただし少し大きめの玉)のパッケージに変更しました。これは最終消費者からの声を反映してのことです。主な理由は以下の3点です。

 1)「4個単位で買うよりも、2個単位を2回買う方が買いやすい」という消費者の声。
 2)少子高齢化に伴い家族構成も小単位になりつつある。小家族にとっては2個で充分である。
 3)もはや「4個単位で買い置きし、1個づつ大切に食べましょう」という時代ではない。
 
以上のことからも、ひと昔前と今との生活スタイルの変化、常識の変化が伺えます。

こうした試行錯誤と努力の結果、『伊達の蜜桃』の評判やクチコミが高まり、1年後の2005年には東京の三越さんからお引き合いをいただくまでに至りました。現在、山梨県の春日井産の桃と同等に、桐箱入り6個で1万円(大玉品の最高のもの)で並べさせていただいております。これは春日井産に続くブランドとして一定のポジションを確立できた実績といえるでしょう。このように私たちの桃がブランド化したことで加工品の桃ジュースも従来の『桃の恵み』100円に加え、『伊達の蜜桃』160円を投入し、単価アップ、出荷数増の結果を出せました。時代やライフスタイルも変化に合わせ良いものを出荷し、組合員(農家)にもお返ししていくことが、私たちのミッションなのです。

少し前までは「量を出荷する時代」だったかもしれませんが、何でも出荷する(引き取る)時代はもう終わりました。量は減っても売れる商品を作っていかないとダメだということです。そのためには、値切られるだけの商売をやっていてはダメですね。こちらから「買ってほしい」と頼み込む商品でなく、向こうから「売らせてほしい」といわれる商品をこれからも生産、出荷していきたいと考えています。

取材日:2007年3月
伊達の蜜桃 ジュース
ブランドが確立したところでジュースを売る。これからはプレミアム農作物の時代だ。
斎藤参事(左)と船井総研 楠元(右)はすでに次の一手を考えている。
 
 
 
 
 
 
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