明日のグレートカンパニーを創る 株式会社 船井総合研究所

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対談集

飲食



二杉:船井財団主催『グレートカンパニーアワード 2016』において働く社員が誇りを感じる会社賞」を受賞された株式会社玉寿司の中野里(なかのり)社長にお話しを伺います。早速ですが、事業承継時に苦労されたことなどお話いただけますでしょうか。


船井財団主催『グレートカンパニーアワード 2016』において「働く社員が誇りを感じる会社賞」を受賞

中野里社長:「事業承継をしたのは、私が32歳の頃でした。苦労したのは、当時、年間の売上高に対して借入が140%くらいあったことです。実は、会社の財務的な状況が非常に危機的な状況でした。ある日、当時社長だった父に呼ばれて、経営責任をとってけじめをつけるから、おまえが継いでくれないか?と言われました。資産を継ぐのは誰でもできますが、負債を継ぐのは身内しかできないということでした。店を立て直すことが自分の今まで頑張ってきた理由だという思いが湧き上がってきて、引き継ぐ決意をしたんです。

二杉:なるほど。

中野里社長:そもそも、僕は店がすごく大好きで、3代目である父のことを心から尊敬していました。だから父親が困っていることを助けられるという喜びもあったし、この店をいよいよ自分が引っ張っていくという武者震いのような思いがしたんです。実際は5カ年計画を立てて、金融機関8行に対して頭を下げて、再建プランを提案する行脚を約1年続けて、なんとか持ちこたえました。

直感を信じて新規出店を決める

二杉:以前にお話を聞かせていただいた時のエピソードで、舞浜への出店時にも金融機関と押し問答があったとお聞きしました。

中野里社長:はい。再建プランを銀行に納得いただいた再出発のタイミングで、なんとディズニーリゾート内にあるイクスピアリから出店依頼がありました。日本一のエンターテインメントパークで唯一の寿司屋としての出店であれば、経営回復のチャンスになると思いました。それで金融機関に新規出店の融資をお願いしたのですが、「成功しないだろうから1円も出せない」と返答されてしまいまして。

二杉:それは困ってしまいますね。

中野里社長:それでも食い下がって、成功する見込みがある証拠を探しに、毎日、出店依頼されたレストランフロアに行きました。炎天下の中、朝から晩まで、どのレストランに何人入ったか、1日定点観測したこともありました。

二杉:そこで何かきっかけを得られたのでしょうか。

中野里社長:何日も観察するうち、例えばベビーカーを引いた家族がディズニーのグッズを買って映画を見た後、食事に1万円を出すかといったら、出さないわけです。お客様のニーズからすれば、もう少しリーズナブルにお寿司を楽しみたいというニーズが見えてきて、そこで180円均一のお寿司を思いつきました。それを金融機関に提案したのですが、結局、融資はしないと結論付けられました。最終的には、知り合いの経営者に快く貸していただけて、お金を工面しました。

二杉:金融機関には、最後まで新規出店に賛成いただけなかったと。

中野里社長:はい。勝手に新規出店の契約を結びましたので、それが金融機関に伝わって、本部へ呼び出されました。今回の新規出店は我々の意向を無視した勝手な契約だから、発生した負債については一切責任を負わないし、その際には、速やかに第三者増資割当に応じるという内容のサインを求められました。それくらいの勇気がないのであれば、今からでも契約を取りやめるべきだという話になりまして。

二杉:金融機関としては、どうしても新規出店させたくなかったんですね。

中野里社長:その要求を受けて、まる一日、悩みました。でも、自分は成功するという直感があったので、絶対に新規出店すると決めたんです。この直感が外れたら、私はそもそも商売に向いていないし、自分自身を見極めるいい機会だとも思いました。翌日もう一人の役員にも事情を話したところ、あっさり同意してくれました。その時「もしダメになったら、また一店舗から頑張ればいいじゃないか」と。それが嬉しくて、こういう社員がいてくれてよかったと、しみじみ感じました。

二杉:その言葉は心強いですね。それで、新規出店に突き進めたわけですね。

中野里社長:もう逃げ道は絶たれたので、あとは店づくりに邁進するしかないと思いましたね。限られた費用の中でリニューアルをして、メニューもわかりやすく表現しました。金融機関の試算では、月商900万もいかず大赤字でダメになるという見解だったんです。実際はオープン初日からすごい行列ができました。結局、初日からの盛況は衰えず、コンスタントに月商2,200万くらい出るお店になりました。

二杉:やはり直感は正しかったわけですね。


築地の玉寿司本店。高い品質と気軽に入れる店づくりが魅力。

寿司屋は敷居が高くて入りにくい?

二杉:ほかにも、都市部の大手のショッピングセンターや百貨店とのやりとりでも苦労されたとお聞きしました。

中野里社長:ちょうど店を引き継いだ13年前のことです。それまでは駅ビル開発が黎明期で、駅ビルが開発されれば黙っていても人が来て、忙しくなりました。しかし13年前くらいから過当競争になってきて、商業施設同士で競争が激化してきたのです。ちょうどその時、店舗がある大手商業施設が、競合他社との差別化のために25~35歳の女性層に特化した施設へ事業転換することが決まりました。長らくお付き合いがあったビジネスパートナーでしたが、「寿司みたいな老人が好みそうなものは必要ないから撤退してくれ」とはっきり言われてしまいまして。

二杉:何か手は打たれたのでしょうか。

中野里社長:冗談じゃない!と思いまして、弁護士を通じて内容証明を送りました。すると相手に「裁判をするのはいいが、負けたら全部から撤退して下さい」と言われまして。当時、その商業施設系統で4店舗展開していて、どれもすごく売り上げていましたから、それを一気に失ったら会社が立ち行かなくなると追いつめられました。どうしたらこの窮地を打破できるかなと何日も寝ずに考え悩みましたね。

二杉:その後、どうなさったのでしょう?

中野里社長:まずは寿司の何がダメなのか、社長や役員、営業の人たちに話を伺いました。その結果、撤退希望の理由は、若い女性がお寿司を食べないからだと言われたんです。本当にそうなのか疑問に思いました。だから、商業施設のターゲットの層の女性たちを10人集めて、試食会を開いたんです。すると皆さん、お寿司は好きだけどお寿司屋さんには行かないということがわかりました。

二杉:好きなのに行かない?不思議ですね。

中野里社長:寿司屋にまつわる悪いイメージを持っている女性が多かったんです。例えば食べ方を間違えたら「素人は食い方を知らない」って言われそうとか、友達同士でおしゃべりをしながらゆっくり食べていたら「喋ってばっかりなら、さっさと帰ってくれ」と言われそうとか。

二杉:悪い先入観があったのですね

中野里社長:そうなんです。でも逆に、そういった寿司屋のイメージを変えれば女性客が集まるお寿司屋さんにできるはずだと確信を持ちました。そこから、女性が行きたいと思えるお寿司屋をコンセプトに、内装や接客、メニューまですべてゼロベースで考えました。そして、うちの強みである握りたてのおいしいお寿司を提供することを売りにしました。商業施設にも、あきらめず何度も交渉してチャンスをもらうことができました。おかげさまでその店は今でもすごく忙しいです。

二杉:金融機関との折衝などタフな交渉を何度もやって、結果を出されてこられましたね。その後、業績を立て直していく上で、特に意識して実行されたことはありますか?

中野里社長:商業施設自体も変化をしていく中で、もう一度、自分たちの強みの中心にあるものは何なのかを問い直しました。それまでは明朗会計でファミリーも比較的来やすいことがポイントでしたが、より低価格な回転寿司がその要件を満たしていて、もう通用しないんです。回転寿司ほど値段を安くはできない我々は、いったいどこに強みがあるかを再定義する必要がありました。

二杉:自社の強みというやつですね

中野里社長:はい。ちょうどその時、「伝統を壊すとか伝統を守るとかじゃなくて、伝統を生かす」という言葉を教えてくれた方がいました。よく事業承継した時に、問題や欠点ばかりを直そうというエネルギーが働いてしまうのですが、伝統を生かすことが大事だと知っていたから、うちの長所をまず発見しようと思えました。最終的に行き着いた強みは、寿司職人です。長らく時間をかけて職人を育ててきた歴史があったので、やっぱり寿司職人の存在がうちの強みだと確信しました。

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中野里陽平氏 中野里 陽平(なかのり・ようへい)氏
株式会社 玉寿司 代表取締役社長

本社所在地:東京都中央区築地2-11-26 築地MKビル3F
設立:1965年
資本金:3,000万円
従業員数:607名(2015年12月現在、パート含む)
業務内容:寿司店の経営
http://www.tamasushi.co.jp/index.html

※ 企業プロフィールは、受賞当時のものです。
二杉 明宏 二杉 明宏(にすぎ・あきひろ)
株式会社 船井総合研究所

1974年生まれ。2000年船井総合研究所入社。入社以来、外食関連10以上の業種でコンサルティング活動に従事。特に、業態開発、新規出店、多店舗展開などのテーマでのコンサルティングを得意とする。ローカルチェーンからナショナルチェーン、中国外食企業に至るまで幅広いクライアントをサポートしている。


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