明日のグレートカンパニーを創る 株式会社 船井総合研究所

無料経営相談 0120-958-270 (平日 9:00-18:00)

文字サイズ
標準
拡大

対談集

プラス会員様限定

ロジスティクス



スーパーマルチトラック開発のきっかけ

橋本:松岡社長はイギリスのウェールズ大学に行かれて、御社のビジネスモデルを卒論のテーマにされたとお伺いしました。どのような視点でまとめられたのでしょうか。

松岡社長:何かを研究をして修士論文にするなら、この業界のことを研究して、実務に役立てるのがいいだろうと思いました。いろいろな文献を読みましたが、日本国内では運送業に関する論文や研究は、ほとんどないんですよ。宅急便を開発した当時、ヤマト運輸の小倉昌男社長が参考にされたという神奈川大学の中田教授の話や本も拝読しましたが、やはり今の時代にはマッチしにくいところもありました。

そして、日本の運送業界で一番素晴らしいイノベーションとは何かな?と考えてみると、やっぱりクロネコヤマトなんです。徹底的なマーケティングリサーチがすごい。それと、トヨタ自動車と共同開発したトラックです。クロネコヤマトのトラックは荷物を配達するときは助手席側から側道に降りられるようにしてあるんです。運転席から降りると後続車と事故になる危険性があるからですよね。それと3つ目が業態化です。
家に荷物が届く「宅急便」ですよね。これらが本当に刺激になって、とにかくこれに変わるような何かを考えて、それを修士論文にしようと思いました。

橋本:なるほど。

松岡社長: その当時、マーケティングリサーチデータをいろいろ見たんですけど、あまりニーズが掴めてないなと思いまして。会社の方でちょっとお金をかけて、日本の物流業界やメーカーはどんなトラックが必要なのか、喜ばれるかをマーケティングリサーチしました。それらを全てまとめて、海外の運送会社のいろいろなビジネスモデルを参考にして生まれた車が、日野自動車と共同開発した『スーパーマルチトラック』なんです。

橋本:そこにつながっているんですね。

ITへの投資と活用

橋本:先ほど、物流業界はこれまでイノベーションがなかなか起こっていないという話が出ました。富士運輸の先進的なところは、運送業界の中でも特にITに力を入れていて、しかも自社開発というところではないでしょうか。

松岡社長: 荷物の動きをお客様に見せるというようなIT投資は、やはりヤマト運輸が一番得意だったんです。そういうところも運送業界は全くできていないので、このビジネスモデルは参考になりました。 まずお客様が運送会社に荷物の輸送依頼をした時に、何が知りたいかということですよね。今どこにいて何時に着くのか。どんなトラックで運んでくれているのか。それを全てシステムで明確にお客様に答えられるようにというのを、約10年前にスタートしました。

橋本:たしかに倉庫業界や物流センターなどはITが進んでいましたけど、運送業界はそこまでではなかった印象があります。

松岡社長:10年前にそこまで公開している会社はなかったこともあって、経済産業省からITの推進、推奨企業として表彰されたんですけど、やはり運送会社というのは中小企業が多いので、IT投資にお金をかけづらいんです。市販のソフトを買って導入するといっても、限界がある。だから当社は全て自社開発で、徹底してやってきました。 さらに今年、もっとすごい仕組みができまして、全車輌の位置をお客様がGPSで見られるんです。来年は、どのドライバーさんがこのお客様の荷物を運んでいて…というとこまで見られるようにしようと思っています。最終的には、どのトラックがあいているのか、それを日本地図の上にピンを立てて、その車を使っていただくと。できる限り無駄な走りはしない、そういうことを徹底してIT戦略で差別化を図っていきたいと思っています。

橋本:昔はホテルの空室も全然わからなかったですけど、今では簡単に見えるようになりましたね。ちょっと予約しようかな?みたいなことが物流業界でできるようになるわけですね。

松岡社長:橋本さん、まさにそれなんです。ホテルは今日空室になったら、その空室は二度と埋まらないですよね。トラックも同じです。今日、空車だったら、もうそれで終わりなんです。だからとにかく車を遊ばせない。ではそれが何に効果があるのというと、最終的には働いている人の給料なんですよね。できる限り労働生産性を上げて、働いている人に沢山の給料を払える、それが最終目的です。 ITを導入する前、当社の空車率は33%だったんです。3年前にIT投資をして17%まで下がりました。2年前に16%、今年は15%まで下がりました。

橋本:毎年1%ずつでも下がってきているって、すごいことですね。

松岡社長:この1%って、すごい距離なんですよ。たった1%?と思うかもしれませんが、地球を何週も往復するくらいの相当な距離なんです。これはトラックの台数が増えれば増えるほど、密に走れて、無駄がなくなる。だからトラックを現在の倍まで増やして、もっと空車率を下げて、給料として還元できるようにしようと思ってます。

橋本:お客様も、空車状況を見ながら運送を依頼できるという部分もありますね。

松岡社長:そうです。朝に出すよりも、夕方に出す方が、この空車を使えるとか。半分積めるだけトラックがあいているので急ぎの分だけ出しておこうだとか。今までは急ぎの荷物は電話で交渉していたところが、IT化することでお客様に選んでもらえるようになるわけです。1回あたり大量に運んでもらって、単価あたりの輸送コストを下げてもらう。動かすときは一括で効率よくというのをお客さんに提案しています。

管理職は自薦制度

橋本:では次に、採用と人材育成についてお聞きします。 私が出会った2011年当初、650台くらいの保有台数だったと記憶しています。その後4年で1000台を越えて、拠点も増やしていらっしゃいます。そうなってくると、人材育成が追いつくのかという問題が出てきますよね。所長やドライバー採用の秘密があれば教えてください。

松岡社長:特に秘密はないんですが(笑)管理職になる能力のある人がいないとかよく聞きますけど、それは結局やらせていないからであって、できるんですよ。うちでは、誰か所長やりたい人いませんか?と言うとね、結構いるんですよ。それは学歴とか年齢、性別、全く関係ないです。規模を拡大するときに僕は、やはり理職が不足して困った時期がありました。そこで1人で困っているんじゃなくて、皆に聞いて、やりたい人はいないか?と手を挙げてもらったんです。

橋本:そこがすごいですね。現場系の業種の会社では、管理職になりたくないという人が多いといわれていますから。

松岡社長:違うんですよ。管理職になってほしい人材って、大体、社長がこいつを管理職にしたいとか一方的に思っているものなんです。だから社長がやりたいか?と聞くと、やりたくないと言われるんであって、やりたいやつ!って言ったらね、おるんですよ。

橋本:なるほど。

松岡社長:当社では、管理職になりたい人は立候補しなさいと言うと、どんどん手が挙がります。最近では入社すると1年2年はドライバーで走りますけど、2年経ったら管理職になりたいって、そんな夢をもった人が来てくれています。

橋本:それを狙って入ってくるということですね。

松岡社長:はい。早い人でしたらドライバー入って、半年で内勤になって運行管理、それから2年後に支店長と。そうなっている人も実際いますね。

橋本:そういう意味では手を挙げさせる風土をつくるというか、そういうことが重要ということでしょうか。

松岡社長:そうです。あまり経験がなくて20代前半であれば、もう少し経験してから…ということもありますけど、30歳を超えていればある程度は経験していますし。 実は、僕が31歳で社長になった時、「あいつが社長になったら潰れる」とか、「あいつが社長になったら社員が辞めて誰もついてこない」と散々言われたんです。その時に自分が思ったのは、勉強しながらとにかく一所懸命やっていれば、人もついてきてくれるんだなということです。ですから自分も経験しているというのもあって、30超えたら支店長くらいできるだろうと思ってますし、やってもらっていますね。

橋本:その立候補制は、社内公募するのですか?

松岡社長:はい。毎日全員にメールでニュースのようなものを送っていて、そこで新しい支店ができるよと。運行管理者を募集してるので、立候補したい人は1週間以内に総務の○○さんに立候補してください、あらためて面接します、そんな感じですね。


管理職に立候補するドライバーが育つ環境

<< 前へ 【1】【2】【3】次へ >> 


松岡弘晃(まつおか・ひろあき)氏
富士運輸株式会社 代表取締役

本社所在地:奈良県奈良市北永井町372
設立:1978年
資本金:3,000万円
従業員数:980名(2015年10月現在)
拠点数:28拠点
車両台数:865台(10t車 760台・4t車 95台)
※ トレーラーシャーシ除く (2015年4月現在)
事業内容:運送業、中古トラック及び中古部品の販売
http://www.fujitransport.com/

※ 企業プロフィールは、受賞当時のものです。
橋本直行 橋本直行(はしもと・なおゆき)
株式会社船井総合研究所

1997年船井総合研究所入社。ドライバー業界に精通し、ドライバーの採用・定着力アップの具体策を支援企業、会員企業とともに編み出している。特にトラック業界に強みを持ち、“社員が誇りを持って働くことのできる物流会社を創る” ための経営研究会「ロジスティクスビジネス経営研究会(FUNAI ロジスティックソサエティ)」を主宰するだけではなく、タクシー・バス業界にも社員が誇りを持てる会社を増やすべく、交通ビジネス経営研究会の監督も行う。